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渋谷系特集 #3「岡崎京子と私」

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「なぜ岡崎京子渋谷系?」と思う人が、もしかしたらいるかもしれないので、後追い世代の僕がわかる程度の解説をします。というか僕の解説でごめんなさい。

岡崎京子は80年代から90年代にかけて、マンガ/サブカル/ファッション誌で絶大な人気を集めました。彼女の活動時期はちょうど渋谷系と同時期にあたり、彼女はフリッパーズ・ギターのファンで、小沢健二岡崎京子のファンでした(小山田圭吾が彼女のファンなのかはわからないけど、「リバーズ・エッジ」の山田のモデルは小山田圭吾と言われている)。2010年のひふみよコンサートの時には、休業中の岡崎京子がライブに訪れ、小沢健二はステージ上で泣きながらそのことを話しことも報じられました。

僕は完全に後追い世代なのですが、岡崎京子はあの時代の空気を緻密に描き、フリッパーズはあの時代に新たな空気を吹き込んだ存在として、互いに呼応する部分があったのだと思います。だからこそどちらの作品も切実に求められたし、今も求められているのだと思います。そんなフリッパーズ大好き人間、ジュリアさんの「岡崎京子ばなし」です。(ぴっち)
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岡崎京子のマンガを読んでいると、皮膚にひやりと冷たい金属があたる、いつかの感触と、皮膚の上を生あたたかい血が流れていく、いつかの感触とが、妙に蘇る。温度を感じるってことは生を、性を感じるってことで。

岡崎京子は東京イチ洗練されたおしゃれなシーンのど真ん中にいた人だけど、綺麗なだけじゃない私たちの本質を、正体を誰よりも見抜いていた。

岡崎京子は親切ぶって潔癖ぶってる私たちに「あれあれ?本当のあなたって、結構愚かで醜くくて、くだらないよ?」と教えてくれる。

生身の私たちは多面体。時に誰かを涙させるほど、優しく美しく親切になれる。清く正しく潔癖でいられる。だけどどんなに綺麗ぶっておしゃれぶっても、汚なくて、薄情で、残酷な、エゴだらけの一面もあるってことは、絶対に否定できない。

岡崎京子のマンガの登場人物たちは、愚かで醜い私をほっとさせてくれる。そのあっけらかんとしたしょーもなさにほっとしたり、泥々な呪いを閉じ込めて生きていく、ってのもアリなんだ、と思えたり。リアルでも、見渡せばおしゃれで素敵で立派な人たちばっかりだけど、この人たちだってしょーもないだめな一面や泥々な怪物を胸の奥深くに抱えて生きているのかもしれないと。

岡崎京子は、多面体の私たちの生を、性を肯定も否定もしていないと思うし、それは読み手の受け取りかたによると思うけど、私は私を肯定されたと感じた。

初めて読む方におすすめは「リバーズ・エッジ」。

リバーズ・エッジ 愛蔵版

リバーズ・エッジ 愛蔵版

 

主人公の高校生ハルナはクラスで目立ってるやんちゃな男子と関係を持ったことを後悔していた。その男子は関係を持ったとたん彼氏ヅラというか、常に身体も心も支配したがり思い通りにならないハルナに苛立った。元々彼はクラスのおとなしい男子、山田くんをいじめのターゲットにしていたけど、山田くんがハルナと仲が良いことに嫉妬し、山田くんへの暴力をエスカレートさせていった。それをやめさせるためハルナは荒れる彼に自分の身体を与える、というくだりがある。

私から見ると、なんていうかしんどいんだけど、「まー仕方ないよね。そうでもしなきゃ、暴力止められないもんね」的にサラッと描かれている。

しんどいことを岡崎京子はサラッと描く。

 

私が一番好きな作品は「ピンク」と「ジオラマボーイ パノラマガール」のどちらかでで迷ったんだけど、僅差で「ジオラマ〜」のほう。

ジオラマボーイ パノラマガール (Mag comics)

ジオラマボーイ パノラマガール (Mag comics)

 

「ジオラマ〜」は巨大な団地のある街が物語の主な舞台。団地ファンタジー。主人公のハルコは、ケンイチくんという、うっかり高校をやめたプータロー男子を好きになるんだけど、ケンイチくんは、ヤンキー女子校に通う女の子に夢中。ケンイチくんは彼女に関係を持ちたいと迫るも「あんたの下手くそなイッパツで妊娠させられちゃたまんない」と冷たくされたりする。他の登場人物も、クセのある不思議な人ばかり。私が一番好きな登場人物は、交際クラブを仕切っている謎の小学生男子。

映像化は難しいだろうけど、ケンイチくんが夢中になる女の子役は、今なら小泉麻耶ちゃんのイメージ。

先週の金曜日、会社で朝から同僚が「あー、世界が終わらないから、今日も会社に来るハメになったよ!世界なんか終わっちゃえばいいのに!」と、私の席のとこまで言いに来た。単に、仕事やりたくなさすぎ、って話なんだけど、この同僚も岡崎京子のマンガに出てきそうな人だよなーと思った。だから私は彼女のことが好きなんだろうね。

 

 

ジュリア(@Julia0721