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渋谷系特集 #4「渋谷系以降を聴く」

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ジャンル名じゃないし、もともと揶揄だったって聞くし、バズワードにしてははっきりしていて、しかしいざ音楽性を見てみると大抵お洒落なもののちょっと掴みづらい。不思議な言葉、渋谷系。私はリアルタイムでは触れていないし、しかも物心ついた頃にはあったというポスト(もしくはネオ)渋谷系なるタームすら知らなかった。渋谷系の指す範囲が、ピチカート・ファイブ、BRIDGE、シトラス、ニール・アンド・イライザ、Luminous OrangeBuffalo Daughteradvantage LucyCymbals、テイトウワ、スチャダラパー、etc……と、あまりにもとりとめないことに驚いたのを覚えている。

過去、または当時の「リアルタイムの洋楽への参照性が強い」とか、「イカ天ホコ天へのアンチテーゼ」の部分もあったとか、そういうことを聞いたときに今の音楽で「渋谷系」っぽいと呼ばれるものの多くにはカウンターとしての意味合いや、過去のアーカイブへの強い好奇心はあまり感じられないことに気がついた。「お洒落でポップで親しみやすいけどちょっぴりマイノリティ」みたいな部分だけ抽出しているのでは?と。渋谷系を参照して渋谷系的な音楽になったみたいな。

しかしながら、ゼロ年代以降においてもその精神を受け継いでいると感じるミュージシャンはもちろんたくさんいる。そういう人たちの音楽はすこし時をおいて聴いても淘汰されない。そんなポスト渋谷系時代の音楽の中からいくつかセレクトしてみた。

1. capsule「プラスチック・ガール」

ピチカートを意識したのかは知らないけど、『FRUITS CLiPPER』以前の初期capsuleは60'sテイストのフワフワ・キュート・カラフルな路線だった。個人的には2ndと3rdが好み。カラフルなお菓子のお店ばかり並んだショッピングモールにいるような気分。お砂糖かけ過ぎなくらいに甘くラウンジーで、レトロフューチャーでインテリアなこのポップネスにはたまーに浸かりたくなる。StereolabやGentle People以降だからこそ生まれたようにも思える。

2. SYLVIA 55「Road Movie」

先述のcapsuleの2nd『CUTIE CINEMA REPLAY』には一曲ごとにその手のミュージシャンとコラボしている構成でいわばネオ渋谷系のショーケースだけど、Cymbalsに参加していた、にしのちなみ率いる女性3人組のSYLVIA 55も参加している。今までに出しているアルバムは2枚。特に2nd『Road Movie』は出色の佳作。80'sディスコ〜テクノポップ的な音像で描かれる、時代も場所も不明のどこか切ないロードムービーにトリップ。名曲「Life」は必聴。クールで熱気は押さえ気味だがItalians Do It Betterのファンも一聴の価値ありだろう。

3. 花澤香菜恋する惑星

アニメと渋谷系の蜜月をアキシブ系と呼ばれるが、そのタームを口にする場合ROUND TABLEの手がけた「ちょびっつ」のOP、それからDimitri from Parisによる『ネコミミモード』に触れるべきなんだと思うけど、ここでは省略。その流れが今どこにあるかと問われれば、声優のソロ作品に重心があるような気がする。その代表が花澤香菜だ。去年の『claire』は話題になっていた。実際この曲もROUND TABLEの北川利勝によるもので、カジヒデキも一曲参加の2ndアルバムも既にリリース。ふわりとした雰囲気の音にウィスパーな声との親和性があるなら、まさにという流れか。

4. 真堂圭高垣彩陽MAKO「青空トライアングル」

作曲は鬼才NARASAKI氏なのでネオ渋谷系なんて言えないのは百も承知だけど、80'sUKの空気その他たくさんの音楽性が詰まったこの曲は近い香りがするので選びました。アニメ「はなまる幼稚園」のOPで、疾走するシューゲ風味のギターとシンクロして駆ける幼稚園児の画のマッチングには驚いた。何度も訪れる転調展開に心もドライビング。一般的なアキシブ系とは明らかに一線を画している。

5. LOVE ME TENDER「DIET」

音楽フリークが集って90's以降にポップミュージックを鳴らすことが渋谷系なのだとするのならば、東京インディーシーンとはまさに現在の渋谷系ということではないだろうか。そもそも東京インディーってどこからどこまでを指すのか分からないし、LOVE ME TENDERが含まれるのか知らないし。でもとりあえず言えるのは、彼らの音には過去の音楽に対する愛と敬意とディグを楽しむ気持ちを感じるってこと。ピチカートをはじめとする6、70'sソウルへの焦点も特徴の一つ。

6. sloppy joe「portrait」

渋谷系が継承した一つの大きな潮流はネオアコだけど、そもそもネオアコという言葉自体が日本で作られた造語であることは興味深い。青く透明で、時に力強く跳ねるギターはいつの時代も魅力的であり、シャムキャッツが新譜でオレジューやアズテックを引用していたのは記憶に新しいところ。そしてかねてから純度高くキラキラした音を鳴らしていたのはHotel Mexicoや彼らsloppy joeだった。

7. 空気公団青い花

そしてそのネオアコの感覚はインディーシーンだけにとどまらず、よりメジャーなJ-POPにも綿々と受け継がれてゆく。例えばビーイング系であるGarnet Clowは元々「21世紀型ネオ・ネオアコ」を標榜していたのだが、知る人は思いのほか少ない。こんなにも美しく透き通った空気公団の歌(アニソン)にもその影響は感じられる。ベン・ワットやロディ・フレイムの新作を手に取らずにいられない私たちはネオアコ好きの血が流れる民族なのだろうか。 

8. Lamp「さち子」

結局のところ、「それ」は6,70'sにニューミュージックと呼ばれ、80'sにシティポップスと呼ばれ、90'sは渋谷系で10'sには東京インディーと名前が与えられたということではないか?そして80's末にアノラック讃歌が謳われ、インターネットが普及した結果も含めたら渋谷系以降ということなのでは?とも思えてきた。遊び心ない一部の音楽に耳を支配される人、それとは別に海外だけに目を向け続ける人が溢れる中で、この国の音楽的土壌の豊かな人たちを見逃さないための合言葉、だったのかもしれない。遠くを見渡す灯台は大切だけど、私たちには足下を照らせるランプも必要なんだろう。

 

 

KV