アニソン連載#2 Kalafina

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アニメ音楽の作曲者にはいわゆる大家といえる人がいる。その中の一人、梶浦由記。意識的かつ能動的に、自己の音楽とその表現を探求する彼女は、劇伴/サントラ制作にとどまらず、音楽ユニットを多数生み出してきた。

今回は、そのうちの一つ、Kalafinaのお話です。(動画ばかりで重いよ!)

 

アニメ音楽の作曲者にはいわゆる大家と言える人がいる。ジブリアニメでおなじみの久石譲を筆頭に、鷲巣四郎、菅野よう子川井憲次岩崎琢田中公平大谷幸大島ミチルなどなど、実写映画・ドラマでの活躍もある方々ももちろんここに加わってくるであろう。

若手といえる存在として、神前暁、澤野弘之、加藤達也の名も挙げられる。ふと思うが、ここ最近ではアニメ番組専用の作曲を行う方々が増えてきていると思う(この辺の専業作曲家さんへのフューチャーはKVさんに僕は期待している)

こういった作曲家の中で、ひときわ異彩を放つ作曲家がいる。梶浦由記と言う。

NOIR」「.hackシリーズ」「舞-HiME/舞-乙HiME」「ツバサ・クロニクル」と音楽制作/劇伴制作を務めていった2000年代前半から中盤にかけ注目を浴び、昨今では「空の境界」「魔法少女まどか☆マギカ」「Fate/Zero」「ソードアート・オンライン」などの話題作に参加。実力を遺憾なく発揮し、人気を不動のものにした。

同時に自身をプロデューサーにした音楽ユニットをつくり上げた。彼女のソロプロジェクトの総称であり、これまでに7人のボーカリストと手を組んできたFictionJunction。今年1月には、近年4年分の活動を一挙に収めた『elemental』を発売した。

elemental

elemental

 
FictionJunction「stone cold」

FictionJunction YUUKA「暁の車」(機動戦士ガンダムSEED 挿入歌)

より古きを追えば、大学時代に組んだバンドメンバーである石川智晶に声をかけて一旦はデビューするも、その後活動を中止、アニメ「NOIR」のサントラ制作に伴い活動を再開させ、大きなアクションを引き起こしたSee-Saw

SeeSaw「Obsession」(.hack//sign OP)


(有名どころの「機動戦士ガンダムSEED」の2曲が動画に上がってないのくやしいね)

そして同じく2008年に公開されたアニメ「空の境界」の音楽制作にともなって結成されたのが、本稿の主役Kalafinaである。

Kalafina「Oblivious」(空の境界 1章「俯瞰風景」主題歌) 

Kalafina「sprinter」(空の境界 5章「矛盾螺旋」)

若年の頃から声楽を学んできたWakana、ボーカルデュオ「イトクボ」(デュオ相手は平野綾とのグループSpringsにも所属していた伊藤彩華)として活動していたKeiko、以前からFiction Junkctionでの活動だけではなく、梶浦由記の劇伴制作でも共にしていた2人が参加。

その後に活動が本格的に継続することになりメンバーチェンジが行われ、約3万人(今にしても当時にしても大規模すぎるよ!)のボーカルオーディションからHikaruが加入し、現在はWakana、Keiko、Hikaru、この3名によるボーカルユニットとして活動している。

これまでに4枚のアルバムと14枚のシングルを発売。昨年2013年には結成5周年を迎え、さらに今月7月には初めてのベストアルバムが発売となる。おめでとうございます!

THE BEST “Red

THE BEST “Red"

 
THE BEST “Blue

THE BEST “Blue"

 

まずは梶浦由記の音楽について先に話をしなくてはいけないだろう。

彼女の音楽は、教会音楽への深い敬愛から生まれでているであろう荘厳さあふれるオーケストラを軸に展開していく。シタールなどを用いた中近東~アジア音楽の音色、ディストーションのかかったギターサウンド、ダンスフロア向けに仕上がったテクノサウンド、それらとの交配により、俗に言われる「梶浦サウンド」は構築されている。

その濃さに埋もれることなく映える歌声、それがKalafinaなのだ。

彼女ら3人が唄うボーカルラインを書いてるのはもちろん梶浦本人(レコーディング中に色々と手を加えていくのだろうとは思うが)。そのメロディは非常に特徴的だ、中世の芸術音楽の軸にし、その後のルネサンスバロック~ウィーン古典派と連なってクラシックを成り立たせた最古のルーツ、グレゴリオ聖歌を分類する際に用いられる「教会旋法」を用いて、メロディライン/コーラスワークを書かれているという。

難しいヒストリックな話題ではなく、音楽単語としてわかりやすく挙げれば、ドリアンスケールやリディアンスケールなど、ジャズなどでアドリブを入れる際に使われる旋法/音階といえばいいだろうか。殊更に取り上げてフューチャーすることでもない事柄だが、特筆すべきは、そのスケール感を巧みに操りながら「聖歌らしい」メロディを生み出すことにあるのだ。

 Perotin「Viderunt Omnes」

主旋律を真ん中に据え、様々なスケールを用いて組み立てた高音低音で分けたボーカルパートに、喜怒哀楽の色合いを肉付けしていく。歌声を吹きこまれたメロディと言葉からは、クラシック音楽由来の神秘的な響きが漂わせながら、「一つの世界」を幻視しそうになる。

アイドルのユニゾン歌唱やエフェクト処理された人間味の薄いボーカルとは正対するような彼女らの歌声には、「ボーカリズム(Vocal+ism)」ともいえようプロ・ボーカリストとしての魂が確かに鳴動しているように感じる。

Kalafina「In your eyes」 

Kalafinaディスコグラフィ上おおよそ最も「ブラック・ミュージック」らしいファンクさが宿ったこの曲。ファンクにありがちな軽やかさが、西洋音楽の学理に基づいた3人の分厚い歌声によるコーラスワークと少しだけ遠くに聴こえるシタールなどの音色とも合わさり、独特の雰囲気を帯びている。ライブで見れば、そのカオスぶりがよくわかる。

今回はよくライブの動画を挙げさせてもらっているが、聴いての通り、梶浦由記のサウンドを表現するバックミュージシャンは匠の集まりだ。舞台演出も含めて、一つのエンターテイメントを体感しに行くような気持ちで彼女らのライブへと足をはこ……びたいなぁー!まだソロライブには行ったことないんだぁー!行きたい!!(笑)

 

つまるところ、「劇伴家」梶浦由記のコーラス隊のユニット活動、それがKalafinaである。そんな見方をするのも悪くはない。

だが、梶浦由記の音楽を大仰しく言い表すなら、「西洋音楽と中東音楽を越境し生まれたアジア音楽」、そんなテーゼが包隠されているともいえる。その中でも、ゴシック調に仕立てあげられたビジュアルで統一されたKalafinaの存在は、まさにファンタジーの世界に住む歌姫として、全くの異郷をリスナーに幻視させてしまう。アニソンという内閉世界から抜け出し、世界中のポップミュージックとの関わりあいなどを鳥瞰してみれば、確実にオカシイ存在になってきているのだ。

先に行われたフランスでのアニメイベントには、7000人の観客が彼女たちを目当てに集まった。極東の島国で深夜12時を前後してテレビで放映されるアニメーション、どう聞いてもおかしな進化をした聞きなれない音楽を唄う3人組ユニット、海外の人間からすればそれら全てを包括し、東洋の神秘のように見えても不思議ではないだろう。

作曲家・梶浦由記さんが作品との関わり方や作曲方法について語る - GIGAZINE

ちなみに梶浦由記という枠の中だからこそ、おもしろいカバーだって見れることが在る。僕が見に行った数年前のアニソンフェスではこんなカバーを披露していた。

ではでは、また次回。

 

 

草野(@grassrainbow

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アニソン歌手連載#1 eufonius(2014/7/7)