アニソン連載#1 eufonius

序盤の書き出しで書くことではないが、渋谷系特集、書き手の皆さんお疲れ様でした!読み手の皆さん、お付き合い下さりありがとうございました。

まず特集を終えて思ったのは、毀誉褒貶の激しい特集になったな、ということ。見知らぬ人にとっては、穏やかな海にいきなり石を投げ入れられたような行為にも見えるわけで、「そりゃある程度の波は起きるだろう」と思ってましたが、これほど大きな良い波悪い波を同時に引き起こすとは!非常に驚きました。ええ本当に。

個人的にも、僕の書いたあの花澤さんの記事が「いや、こんなん違うよー!」っていうツッコミを空中で投げられまくったわけです。まあ、「今まで読んでなかった人がたまたま読んでキレてるんだろー?」、そんな格好でゆるく見てました。3分のエゴサーチで、色々覗けるものもあるのです。

あと一応言っておきますけど「ここで重要なのは、花澤香菜の音楽に渋谷系がどれだけ影響を与えたか」(本文ママ)の話をしたのであって、「アニソンと渋谷系のユーフォリックな関係」の話なんて、オレは一切してない。そこのところだけは読み違えてほしくない。

そう、そこだけは読み違えてほしくなかった。

でも近しい人、あるいは近しい人を経由して知らされたのは、「いや、これじゃアニソンの良さが伝わらない!」って話。「いやだから……」と突っ返す前に、「ん?……ということはやはり、そういえばそうか」と思ったんです。

アニソンというと声優ばかりが持ち上げられて、そうではないミュージシャン/シンガー系統の方々、所謂「アニソン歌手」が持ち上げられていない。というか、キャラクター/アニメ声優/アニソン歌手によってそれぞれが生み出す音楽は毛色が異なるのに、一緒くたになって「アニソン」と括られる現実。

そして「水樹奈々田村ゆかり坂本真綾花澤香菜」などなど……アニソンにまつわる会話をすると、声優と付随するキャラソンは出ても、アニソン歌手にまつわる会話、そこまで多くはなかったという記憶。

そこで草野、考えました。続くかどうかは定かではない、もちろん濃度も花澤香菜の記事ほどではない。でもこれは、やってもいいんじゃないか。やってみたらおもしろいのではないか?

ということで、アニソン歌手連載、始めます!

(動画が10個以上出てくるのでページめちゃ重いと思います、お気をつけて)

 

さて前置きが長くなってしまい、申し訳ございません

早速第一弾は、eufoniusになります。

結成は2004年、今年で10周年を迎える彼ら。同人音楽即売会で有名な「M3」、言わずと知れた「コミックマーケット」など同人として作品を発表していたriyaと、ゲーム・アニメ音楽を手がけていた菊地創が、偶然ネット上で知り合ったことをきっかけで結成されたコンビ。

その後、上記即売会などでのインディーズ活動を経て、同人として「ぐるぐる」をシングル発売、「はばたく未来」をスターチャイルドより発表、自主販売元も大手同人ショップに移ったのち、テレビアニメ/美少女ゲーム(所謂エロゲへのタイアップは無し)へのタイアップを強め、数々のOP/EDを飾ってきた。

その作品群も、職人のように研鑽を重ねてどんどんと研ぎ澄まされた世界観を露わにしていると言えよう。

eufonius「Idea」(ノエイン ~もうひとりの君へ~)

eufoniusメグメル cuckool mix 2007」 (CLANNAD オープニング) 
eufonius「リフレクティア」(true tears オープニング)

eufonius「比翼の羽根」(ヨスガノソラ オープニング)

eufonius「turning world」

 

eufoniusナルキッソス

eufonius「白い箱庭」

eufonius「メトロクローム

彼らの音楽を強烈に物語るのは、メロディをバイオリンなどの室内楽楽器で扇情していく手法、アンビエント色の強いシンセサイザーの落ち着いた音色、そしてriyaの透明すぎるほどに澄んだ歌声だ。

それがゆえだろうか、Aメロ/Bメロサビという定型句とそれなりに抑揚あるメロディラインを備えているものの、かれらの楽曲からはどことなく「広大な音の広がり」と「冷ややかさ」を感じずにはいられない。少し突っ込んでいえば、媚なく素っ気なく、清々しさを一緒に連れ込んできてくれる、素っ気ない優しい涼風、riyaの歌声を聞いていると特にそう思わされる。

一つの指針を立ててみるとすれば、とある騒動で菊地創が活動を停止していた時期に発売された「S/N」だろうか。bermei.inazawa氏をサウンドプデューサーに迎え入れた今作のエレクトロニカ色の強さは、eufoniusの持つ世界に新たな光を当て、サウンド的近似から彼らのルーツを開陳した一曲であるとも思う。 

eufonius「S/N」

所謂、北欧ポストロック~エレクトロニカ/フォークトロニカ~IDMに近しいだろうか。riyaが歌う独特の歌詞(通称:riya語))は、おおよそ大部分の日本人には何を言っているかニュアンスすらつかめないアイルランド語フィンランド語にその礎を見出してもいいのかもしれない。 

Royksopp「Eple」

Sigur Rós「Hoppipolla」

Bjorn (Bjorn) Torske「Slitte Sko」

では、オルゴールの音色を中枢に据え、時計のねじ巻き、鳥の声、海波の音など、様々な音色を持ち寄ってよセルフプロデュースを施すこの作品はどうだろう。こんな面白い遊び心をフィジカル販売する彼らの手にかかれば、定型的なポップスの形のなかに素っ気なくアンビエントを入れ込もうとしても、おかしくはないのかもしれない。 

eufonius「ねじまきむじか3」

eufonius「ちいさなうた -nejimaki musica -」

eufonius「journey song - nejimaki musica -」

 

eufoniusの活動遍歴をより注意深く眺めてみると、その「同人ユニット(≒インディーズ」らしい振る舞いと志向性に驚かされる。

まず「Animelo Summer Live」「リスアニ!LIVE」「ANIMAX MUSIX」「ランティス祭り」など、多くのアニソン歌手が集結する大型フェスティバルのイベントに、彼らは一切出演していない。加えて彼らにとって「アニメタイアップ」が、例えば1年4クールで毎回の如くOPを生み出すようなアニソン歌手とは違い、1年に1曲つく程度のもの。メジャーレーベルと同人レーベルとで発売元を臨機応変に変えていくことも踏まええれば、その活動は決して商業主義なものではない。

その他ゲームなどへの楽曲提供も行なってはいるが、アニメ作品のタイアップ有無など関係なく、彼らは自らをアイデンティファイしている音色を捨てることなく音楽を生み出すタイプ、また2人各々のソロ活動も多く行われている。

それらは、一種の自己コンテンツ化に一役買い、職人めいたイメージすらをも浮き出させている。

アニメ作品が多彩に富めば、アニソン歌手に求められる表現や楽曲の要望と期待も幅広くなる。だが、わざと限定的に表現の幅を区切りながら、同人活動の延長線のように、流行り廃りの潮流に流されることもなく、ゆっくりと表現を研鑽していく彼らeufoniusの姿は、「J-POP界のアウトサイダー:アニソン」中においてもかなりアウトサイダーであり、同時にアーティスティックな姿勢も持ち合わせていよう。

 

ってな感じで。

不定期的に、できれば隔週で、更新したいなと思います。

ではでは、またの機会に。

 

 

草野(@grassrainbow