ネットの音楽オタクが選んだ2019年のベストアルバム 100→51

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2019年のベストアルバム2日目です。さあ参りましょう!(ぴっち)

 

このランキングについて
  • ネットの音楽オタクが選んだベストアルバムは音楽だいすきクラブ、及びそのメンバー等の特定の誰かが選んで作ったものではありません。
  • Twitterハッシュタグ、募集記事のコメント欄に寄せられたものを集計しています。
  • 504人分のデータを集計しました。
  • 募集期間は2019年12月1日から31日の間ですです。
  • 同点の場合、乱数を発生させて順位づけしています。
  • そのため順位に深い意味はありません。気にしすぎないでください。
  • 150位以内はすべて5人以上に挙げられたものです。
  • レビューは有志によるものです。500字以内ディス無しでやっています。
  • レビューは随時追加しています。興味がある方は@pitti2210にリプかDMください!

 

100. Slipknot『We Are Not Your Kind』

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99. Lizzo『Cuz I love you』

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体重を絞り、髭脱毛に勤しみ、さて次は歯のホワイトニングかな〜なんて考えている私にとって、彼女と彼女の音楽はあまりに眩しい。人種や性別、体型などの「状態」に近いステータスは時として抑圧の材料になってしまう。だけど彼女は、そんなものが始めから存在しなかったかのような力強さとポジティヴさでパフォーマンスしていて。ブギーのリズムに陽性のヴァイヴスを詰め込んだ「Juice」なんて、あっけらかんとし過ぎて能天気に聴こえるほどなんだよ。歯切れ良いフロウとカッチリしたビート、山盛りのチアフルな言葉。それらを聴いていると、今まで私がしてきた努力は間違いだったのかも?なんて考えて悔しくなるのだ。わかるよ、Lizzoにだって孤独な時期があったなんてことはアルバムを通して聴けば理解できる。だけど私だって80kgオーバーの体型のまま、青髭で覆い尽くされた顔のまま《自分がかわいいって知ってる》なんて言ってみたかった。言ってみたかったんだよ。まあそんなこと言っても仕方ないワケで、今の自分をなんとか愛するしかないんだよね。わかっちゃいるけど、やっぱり羨ましいし悔しいや。

まっつ(@HugAllMyF0128

 

98. KOHH『Untitled』

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誰でも分かりやすいワードチョイスで、圧倒的なスケールの世界を構築してしまう芸術的な表現方法はこれぞリリシスト。下世話なところも曝け出し、彼相応の等身大を武器にしながらも……いつの間にやら人格者とも言える次元で生きる道を歩いてしまった人。痛みたっぷりに刻まれるポジティブとセルフボースティング。これでもかってくらいに人間KOHHを体感できる。日本でトラップを用いたラッパーの代表的な存在でありながら、ありがちなラップやトラップをなぞることはなく、音楽性豊かなアルバム。簡潔に、語彙を消して感情的に書きましょうか。クソ壮大で超絶ヤベえ。マジ音楽。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

97. BABYMETAL『METAL GALAXY』

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96. MONO NO AWARE『かけがいのないもの』

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出来事のディテールや気持ちの動きは時を経て色褪せる。抗いようのない摂理だ。MONO NO AWAREにとって3枚目となる本作は、小1~高3までの12年間を切り取って曖昧な記憶に輪郭を与えるハートフルな思い出のアルバムとなった。無知も恥も忘れてはしゃぐ幼き日を、自意識の怖さにぶつかる思春期を、青春の終わりに向かって激情を、それぞれのテーマに応じた曲調と言葉を用いてありったけの愛で包み込んでいる。

これまでの作品と比べるとストレートな印象だが、ユーモラスなワードセンスとしなやかに展開するアレンジも更に自由で面白いものに。抒情も奇妙も同時進行で成長させ、不思議なノスタルジーを手に入れた。

月の人(@ShapeMoon

 

95. Moonchild『Little Ghost』

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94. SIRUP『FEEL GOOD』

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93. Wilco『Ode to Joy』

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92. kiki vivi lily『vivid』

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91. Kan Sano『Ghost Notes』

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90. 赤い公園『消えない』

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《こんなところで消えない 消さない》表題曲でのパンチラインに文脈を感じてしまいます。アートワークの真ん中に据えられているのは、前Vo. 佐藤千明が参加した最後の作品『熱唱サマー』1曲目のタイトルと同じカメレオン。しかし《あんたをいくらでもくれてやれ》と言い放ったあの頃とは異なり、今作のカメレオンは生まれたばかりのアイデンティティをかき消されてなるものか!という気概を表すかの如く周囲に同化しないまま佇んでいます。

新ボーカル石野理子の丸みを帯びた、しかし輪郭のはっきりしたヴォーカルに引っ張られるかのように、サウンドにも空間の広がりが伺えます。具体的にはリズムやベースを強調する楽曲が増えたような。ファンク色が濃い表題曲をはじめ、規則的な単音の連続が心地良い「Highway Cabriolet」、テン年代前半のエレクトロポップとJ Dilla的なビートが邂逅した「Yo-Ho 」。いずれも以前には見られなかったように思います。今の彼女たちには鋭さでなく大らかさがあって、その大らかな輪が大きくなっていく様を(その輪の外側からでもいいから)見ていたいと思わせる、素晴らしいはじめの一歩でした。

まっつ(@HugAllMyF0128

 

89. BBHF『Family』

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88. 踊ってばかりの国『光の中に』

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なんでこんなに説得力がある強さが滲み出るんだろうな。実態は碌なもんじゃないハリボテでも、綺麗で純粋な思想の上澄みだけ抽出すれば美しい。全部が全部曝け出してはいない、日々の鬱憤の憂さ晴らしのロック。きっと人間、クソみたいな事件起こしたり、ゴミカスみたいな側面が潜在してるんだろうけど、嫌いになれない呪いみたいなもんが燻り続けることがあるんですよ。人の魅力ってそんなもんで。自分に正直になったら鮮明に写る汚いボロボロの感情も、愛せるでしょうか。このアルバムに救われたと錯覚する人生もあるのでしょうか。裏側の複雑な気分を払拭しようとも思わない。向き合って、再認識して、声高らかに宣言する。このバンドが、このアルバムが好きです。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

87. BROCKHAMPTON『GINGER』

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サーモグラフィから抱擁へ。前作『iridescence』と今作のアートワークからは同じく『体温』というテーマを感じさせます。しかしその対象はまるで違うのではないか、と思っています。交際相手や未成年のファンに対する性的虐待疑惑が持ち上がったAmeerを脱退させた後に生まれた前作は、有り体に言えば大衆の熱狂を求めた作品。対して今作で希求しているのはより身近な他者からの承認と言えるでしょう。ロンドンのAbbey Road Studioから地元のBROCKHAMPTON HOUSEへレコーディング環境を戻したこともその証左。他にも随所に前作からの反動が表れていると感じます。

サウンドはこれまでより幾分オーガニックに。想い人からの電話を待つ中で《Do you love me?》と繰り返す「SUGAR」のリリックからも、より直接的に体温を求める様子が痛いほど描写されます。一過性の喧騒ではなく、より確かなものを。今作は、仲間を失った事実から立ち直れず、未だぶり返す痛みが作らせた習作だと思います。

まっつ(@HugAllMyF0128

 

86. THE YELLOW MONKEY『9999』

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19年ぶり9枚目のオリジナルアルバム。初っ端から《さぁ ダメ元で やってみよう》と歌うように、何よりやってみることが目的だったように思える。ガレージ、ハードロック、ブギー、歌謡といった要素が違和感なく散りばめられ、良くも悪くもイエモンそのものがここにはある。解散発表後にメンバーが監修したベスト盤『MOTHER OF ALL THE BEST』を2019年に新曲だけで再構築したかのよう。

だから聴いていると、僕がイエモンに対して何を思っているのかが浮かび上がってくる。吉井和哉イエモンに何物にも代えがたい愛着を持っているようにも見えるし、どうしようもなくそれを破壊したがっていたようにも見える。どんなリズムであろうとイエモンになってしまうこのバンドに対して彼は何を思っているのだろう。再会の喜びは一瞬で過ぎ去り、永遠に思える試行錯誤の季節がそこに待っているからこそ吉井は「I don't know」でアルバムを締めたではないだろうか。

ぴっち(@pitti2210

 

85. 坂本真綾『今日だけの音楽』

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84. Fontaines D.C.『Dogrel』

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83. Weyes Blood『Titanic Rising』

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82. DIIV『Deceiver』

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2019年のシューゲイザーといえばFleeting Joysの『Speeding Away to Someday』が筆頭だろう。だが、衝撃度でいえばDiivの『Deceiver』が上回る。それまでインディオルタナらしい浮遊感とキラキラしたサウンドを鳴らしていたのが嘘のよう。ダークで、メランコリックで、轟音に磨きがかかった。マイブラのエンジニアをプロデューサーに加えただけはある。序盤・中盤・終盤、隙がない。

ここまでの変貌を遂げてしまい、次回作のハードルがとてつもなく上がってしまっている。どの方向に向かって行くだろう。今、個人的に最も次回作が気になるアーティストの一つだ。

ジュン(@h8_wa

 

81. Faye Webster『Atlanta Millionaires Club』

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のびのびとした昼下がりをもっとのびのびとさせる穏やかなBGMにもってこいです。深夜にのびのびしたい時にも、朝食の一品としても、優雅にのびのびできそうですね。のびのびミュージック大賞、受賞。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

80. OGRE YOU ASSHOLE『新しい人』

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幻と現実の境い目と対峙する長期戦の中で、霞を食べて、砂を掴んでは隙間から零れてゆく。ミニマルの極致に近づいては離れ、五感をフル稼働させ、肉体的にも精神的にも彷徨いもがき理解しようとする生きた脳。延々と問いかけては、孤独を振り払おうと少しの恵みを実らせようとする。そんな雰囲気のアルバム。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

79. Yogee New Waves『BLUEHARLEM』

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78. 君島大空『午後の反射光』

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Soundcloudに淡々とアップロードされていた曲に衝撃を受け、demo CDから非の打ち所がない強烈な音楽を作り込んでいたお方の待ち望んだ作品集。静寂と轟音、透明から極彩色まで変幻自在な歌声と旋律。激しく気候変動し、破壊と創造を反芻する目まぐるしく連鎖するサイクル。別次元からの異形の残像とコミュニケーションするようで、ごくごく身近な、本能的に潜在する感情と絡みついて寄り添う。些細な触れ合いが、やたらとドラマチックに聴こえてしまうものだな。と、過ぎた感情を掬い取っては、自分の落とした影に隠れるように重なって同化する。大事にしたいものがある。これは私が望んだ音楽の、表現のひとつの理想形であり、恐ろしく徹底した世界観が、未完成なままどこまでも一人歩きする。感染して中毒になりそうな音色の脳内麻薬。取り憑かれるように、サイケデリックに酩酊してしまう。この稀代の音楽家が必要じゃない自分なんて、いない。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

77. the chef cooks me『Feeling』

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待ち望んだ久々のアルバムは、多くのゲストに彩られた今まで最も自由度の高い、シモリョーのソングライティングが冴え渡る珠玉のポップアルバムとなりました。引き出しの多さに華々しいアレンジが素晴らしい。最終曲がASIAN KUNG-FU GENERATIONのカバーなのも、全く違和感をおぼえない締めくくりです。ドラマティックでシネマティックなthe chef cooks meの最新形ロードショーが、広く末長く愛されますように。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

「風邪でもスルッと聴けるわ」というのが最初の感想。私の場合は体調を崩したとき、好きな音楽ですら聴けなくなります。激しい曲調やメッセージ性の強い歌詞はこうしたとき特に煩わしく感じるので触れないようにするのですが(そうでなくても風邪を早急に治すに越したことはない)、本作にはその類の鬱陶しさがほとんどない。前作から大きく間が空いたにも関わらず、いやむしろそれだからこそ、本作に溢れる隙間や余白からは余裕が感じられます。

曲調自体は、これまでの路線を踏襲したバンド主体のもの。しかしスクエアなリズムや文字通り"Feeling"重視で聴き手の生活を邪魔しないリリックは本作独自の大きな特徴でしょう。ダイナミズムを廃したヒップホップ的なメロディがタイトなドラムとピアノに絡む「CP」が個人的なハイライト。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのカヴァーであるラストのみ若干祝祭ムードが増しますが、それもスパイス程度。何も考えたくないしノイズも入れたくない。そんな時でもメンタルを快方に向かわせてくれる作品。これ、音楽におけるある種の理想型なのでは……?

まっつ(@HugAllMyF0128

 

76. ずっと真夜中でいいのに。『潜潜話』

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動画サイトに慣れ親しんだボカロ世代のJ-POPは、こんなにもハイブリッドなのか。先人たちの切り貼りで既視感あるような仕上がりというにはあまりにも偏見で、聴けば聴くほど今を生きる音楽ならではの仕掛けに耳を奪われる。機械的ではなく、煮え滾る感情がしっかり刻み込まれている。きめ細やかな情報量の泡がメレンゲのように滑らかに耳を通り抜け、何度でも味わって咀嚼していたくなる。平成に充満していたセカイ系の空気とはまた違う。若さ故の悩みですね…って簡単には片付けられない、壊れそうな脆い感情を吐露する新時代のブルース。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

75. Whitney『Forever Turned Around』

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情緒をぶん殴ってくるノスタルジーの塊。暴力的なまでの大いなる愛が反響するスピーカーは、正義の鉄槌を下すヒーローのように勇敢な音のカタチをしている。鼓膜を鷲掴みにするこの大いなる愛に、いつまでも包まれていたい。こんな出会いがあるから、音楽聴くのはやめられません。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

前作よりもホーンに全体を委ねる楽曲が多くなったでしょうか。と言ってもファンファーレよろしく豪快に吹き鳴らすのではなく、他の楽器を引っ込めることでバランスを変化させた感じ。カントリーを基調としたアコースティックギターのフレーズを包み込むようにトランペットなどが展開し、とても心地良いバロック・ポップが形成されています。控えめで品の良いミックスは聞いたことがあるようでない絶妙な響きで、古臭さはナシ。そんな音像からはどことなく、秋の終わりに落葉し始める光景が浮かびます。

10曲32分と、前作に引き続き非常にタイト。バランスこそ違えど、用いられる楽器の構成にもソングライティングにもファルセットを用いた歌唱法にも大きな変化はありません。ただ、それで必要条件も十分条件も満たしているんだろうな、と思わせてくれます。行き過ぎた華やかさも沈痛な面持ちも必要ない。大げさな賛辞も批判もいらない。平熱のまま寄り添うような音のすべてが、「ほとんどの物は変わっていくし終わりだってあるけど、永遠も確かにここにあるよ」と静かに語りかけてくるアルバム。

まっつ(@HugAllMyF0128

 

74. Dos Monos『Dos City』

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フリースタイルブームやヒプノシスマイクやアイドルのラップソングがラップに縁のなかった人々を取り込んだり、敷居を低くしてガチガチなラップミュージックを違和感与えずに溶け込ませる世の中の潤滑油となり得るモノだとすれば、このDos Monosはそこから流れてきた者や、逆にその流れと相反するような、かつて日本語ラップから離れたり別ジャンルに特化した非hiphopリスナーのアンテナに届く電波塔になるグループだと思う。BUDDHA BRANDのような異質な、過去の感覚なら歪といえるポップさを聴きやすく発信する様は、寧ろ今の変容しつつあるポップミュージックの定義からするとKICK THE CAN CREWRIP SLYMEのポジションに定着する可能性すらも感じる。ロックばっか聴いててラップよく分からないけど、コレは好きだよ!みたいな。このアルバムはまだ序章に過ぎないだろう。しかし自己紹介としてはキレキレで完璧だ。閉ざされたカテゴライズから、希望的観測のままで潜んでいた可能性が具現化した。知ったフリしろDos Monos。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

73. Little Simz『GREY Area』

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72. 私立恵比寿中学『MUSiC』

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何よりも先に音楽の良さを魅力として掲げ、実直に駆け抜けてきたディケイド。結成10周年記念アルバムである本作で、改めて堂々と提示し、エビ中を再定義してみせた。「Family Complex」「COLOR」「元気しかない!」、彼女たちの実像をありありと刻んだエモーショナルなナンバーが出揃っている。

メンバーの歌声はそれぞれが個性を磨き続けた結果、どんどんスペシャルなものになっていく。少し力の抜けた発声が心地よい「踊るロクデナシ」や艶っぽい「曇天」など、経年変化を恐れることなく新たな表現を獲得した楽曲も多い。中でも優美なバラード「星の数え方」での声の重なりはひとつの到達点だろう。アイドルが当然のように優れた曲を歌う時代において、その当然を鍛錬させていく矜持を感じる一枚。 

月の人(@ShapeMoon

 

71. FINAL SPANK HAPPY『mint exorcist』

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70. 私立恵比寿中学『Playlist』

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結成10周年イヤー、2枚目のアルバム。ほぼ全楽曲でファンク/ラップ/エレクトロ二カの要素を取り入れ、オントレンドな音像を追求。明確なコンセプトは無いが、サウンド面ではかつてなく均整の取れたスタイリッシュな作品に仕上がっている。

滾る魂をEDM的意匠で爆発させた石崎ひゅーい作詞作曲「ジャンプ」、濃密なグルーヴと温かなメロディが光るマカロニえんぴつからの「愛のレンタル」、色気とソウルで過去最高に大人びたエビ中を演出するiri提供の「I'll be here」、どんな曲にも憑依してしまう彼女たちの凄みは高まる一方。それぞれの声を活かした歌割など、いよいよボーカルグループとして成熟する中で、エビ中自身が歌詞を書いた「HISTOTY」たる楽曲で語り部としての表情も見せ始めた。 

月の人(@ShapeMoon

 

69. Jay Som『Anak Ko』

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ロサンゼルス在住のフィリピン系アメリカ人、Melina Mae Duterteのソロプロジェクト、Jay Somの2ndアルバム。タイトルの「Anak Ko」はタガログ語で「私の子ども」を意味する。今作では自分のドラムに飽きたので仲の良いドラマーに叩いてもらったとのことだが、基本的にほぼすべての楽器を自分で演奏しているので紛れもなく本作は彼女の「子ども」だろう。

そんな簡単に括れる話でもないのだが、Jay Somの音楽は気持ち良いに尽きると思う。「Superbike」「Tenderness」を聴いてみて。ひたすら気持ち良いから。ドリームポップとシューゲイザーが一番好きで製作中にPortisheadを一番聴いたという制作秘話はよくわからないけど(マジでわからない)、彼女の楽曲はある時に突如気持ちよくなる。その理由がよくわからないのね。ああ気持ちいい。でも言語化できない。こんな文章なんか読んでないで散歩でも行きなよ。今日は空がよく見える。それ以上に大事なことってある?ないよね。自転車を漕いでさ。あ、冬か。忘れてた。

ぴっち(@pitti2210

 

68. Flying Lotus『Flamagra』

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67. KAYTRANADA『BUBBA』

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KAYTRANADAは一言で言うならば「バランスの天才」。テンポの取り方、曲の展開、ゲストボーカル……全てが混ざってできるこの心地よさ。ずっと踊ってられる。KAYTRANADAの曲があれば。

Y(@y_3588

 

66. 星野源『Same Thing』

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65. Aurora『A Different Kind Of Human - Step 2』

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64. Foals『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』

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63. AAAMYYY『BODY』

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次世代ポップアイコン的な……いや、そこにすら留まらない計り知れない可能性を感じます。「愛のため」「屍を越えてゆけ」といった歌謡曲/J-POPエッセンス溢れる歌でも圧倒的なバックビートの存在感。ジャンルごった煮の闇鍋サウンドをシンプルにサラッと聴かせています。様々な経験が見事にソロ活動にも還元されている、グローバルで自由の象徴のような魅力を放つアルバムです。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

2019年ベスト女性ソロアーティスト賞をあげたい。ほんのりこのチープな音色が今っぽいクリエイターだなぁと思っていたら、なんとアプリで作っている……だと……?作品とは作り込みたくなるはずなのに、その力の抜き方が素敵。シンプルながらも多彩なハーモニーやウィスパーヴォイスがエッセンスとなり心地よいポップミュージックとなり、この絶妙な軽さだからこそ毎日聴ける。

Y(@y_3588

 

62. NICO Touches the Walls『QUIZMASTER』

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光村龍哉(Vo,G)の書く歌詞は時期によってモードが全く違う。初期はどちらかと言えば語感重視。巻き舌がアクセントになる歌い方と相まって、ほとんど何を伝えようとしているのかわからなかった。4thアルバム『HUMANIA』あたりから風向きが180度変わってきて、自身のドキュメンタリーをストレートに写し出すようになっていく。どんな人でも同じイメージを描けるような言葉選びがキャリアを重ねるにつれて増えていった。

結果としてラストアルバムとなった本作では《未だわかっちゃいないことだらけなのさ》と、数多く存在する謎に平易な言葉で向き合っていく。だけど、わからないことに無理やり答えを出したりしない本作のスタイルは、白黒やオチを明確に付けがちなJ-POPシーンで確実に浮いている。初期の斜に構えた感覚とストレートなフレーズが交わる歌詞は、まさに集大成と呼ぶにふさわしい。ACO Touches the Walls名義で培った、流行に左右されないブルージーな曲調も含めて長く聴けそうな本作。これがラストアルバムだなんて、とんでもない置き土産を残していったモンだ。今度は僕らが、世の中の謎と戦う番。

まっつ(@HugAllMyF0128

 

61. JPEGMAFIA『All My Heroes Are Cornballs』

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ロディアスかつダウンテンポな楽曲が多く、前作『Veteran』までのグリッチやボイスサンプルで隙間を埋め尽くすプロダクションから距離を置いた感のある本作。Devon Hendryx名義作品のLo-Fiヒップホップ的な感覚もあります。「JPEGMAFIA TYPE BEAT」終盤から「Grimy Waifu」にかけての踊りながら階段を駆け上がるようなテンポとシンセのフレーズは特に心地よく、JPEGMAFIA作品史上最も聴きやすいのでは。

しかし本作に「聴きやすい」という一言をただ放つのも躊躇してしまいます。というのも、「Jesus Forgive Me〜」冒頭や先述した「JPEGMAFIA TYPE BEAT」のバックトラックで大半を占めるのが銃声のサンプリングであったりするから。中盤以降、ザラザラに潰れて引きずられたようなギターフレーズに軽快なハンドクラップが同居する「Beta Male Strategies」含め、全体に感じられるのは安易な快楽や狂騒の否定。ブロック単位での気持ち良さはあるのに、快楽や狂騒はもちろんヒップホップの背骨であるはずの反復も否定され簡単に気持ちよくなれない。前作でロックンロールを殺したJPEGMAFIAは本作で(「Rap Grow〜」のタイトルよろしく)ラップを殺しにかかったのかもしれません。

まっつ(@HugAllMyF0128

 

60. CRCK/LCKS『Temporary』

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59. People In The Box『Tabula Rasa』

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抽象的なのに生々しく、語感のマジックを最大限に活かしているような唯一無二の歌詞、緊張感のある音像はそのままに、近年は牧歌的な親しみが増している。恐ろしいほど洗練されている世界観は、時にはVR体験の如く鮮明に景色を現像する。初期には作為的だった静⇔動のスイッチの切り替えが、自然発生を装ったスムーズな移ろいのように感じられました。箱庭サイズとはとても言い切れない人々の新たな旅物語が、ストレンジに心をかき乱す。真にオルタナティブなバンドの熟練した傑作です。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

58. Post Malone『Hollywood's Bleeding』

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どこにいたってちょっとずつ居心地が悪いんだろうな、とPost Maloneの作風や発言を聞くにつけ思います。そのモラトリアムっぷりや思春期性こそが彼が求められる理由なのかもと思うとあまりの救われなさに世知辛さを覚えますが、今作でもそうした所在無さは随所に顔を出していて。

《血を流してるハリウッドのことを俺たちは故郷と呼ぶ》と宣言する「Hollywood's Bleeding」からも、「同じ円の中」というCD的なモチーフを用いて《逃げてみろよ》と唱える「Circles」からも、どうしたって離れられないもの(彼にとってそれは「ヒップホップ」というカルチャーでしょう)への執着が伺えます。と同時にネオアコをぶち込んだりOzzy Osbourneをフィーチャーしたりと、現行ヒップホップシーンからの乖離を推し進めるような組み合わせも加速。今作での彼はどこにも寄りかかれない孤独感と、分断に橋を架けんとする英雄的行為の狭間で揺れている様に映ります。階段を駆け上がるようにリズミカルかつ流麗なメロディの健在ぶりはもはやアイデンティティを保つための祈りにすら感じられ、ポップでありながら恐ろしく不穏。

まっつ(@HugAllMyF0128

 

57. indigo la End『濡れゆく私小説

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毎年のように複数の活動形態で曲を量産している多作家の川谷絵音ですが、安定して原点に立ち返るような曲が集まっているindigo la End。しかし挑戦的な試みは常に絶やさず、彼自身のルーツからや、膨大であろうインプットの結果がナチュラルに表れているようです。今作でいえば「心の実」のような海外のインディーロックバンドと共鳴する優雅なサウンドや、「ラッパーの涙」のようなラップパートも含んだ思い切った視点の曲があったりします。メランコリックと激しさが混在して躍動する曲も目立ちますね。そしてなんといってもこのバンドは、心地よい伸びやかなグッドメロディが大きな魅力です。イノセントでエヴァーグリーンな空気も健在。変わらぬ繊細な魅力を大事にしたまま、惰性や妥協を許さない熱を持ったアルバムです。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

56. Toro Y Moi『Outer Peace』

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2019年フジロック、Toro y Moi「Freelance」、全力でガッツポーズして全力で踊り狂いました。

Y(@y_3588

 

55. Loyle Carner『Not Waving, But Drowning』

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54. Ariana Grande『thank u, next』

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53. iri『Shade』

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神奈川県逗子市在住のシンガーソングライターiriの3rdアルバム。自宅にあったアコースティックギターを独学で学び、アルバイト先のジャズバーで弾き語りのライブを始めた。Alicia Key、七尾旅人向井秀徳の影響を受けた。大沢伸一、Tokyo Recorings、ESME MORI、STUTS、grooveman spot、tofubeats、Kan Sano、ケンモチヒデフミ等の錚々たる面子が参加。

2016年の『Groove it』からiriの音楽が好きでよく聴いているけど、彼女の楽曲はロックやフォーク、もしくはR&Bといった特定のジャンルから眺めるとわかりにくい。ラップと歌の境目がはっきりしないし、新しいか古いのかもわからない。だけど聴き進めるうちに静かに熱を帯びていくのは何物にも代えがたい。個人的なベストは「飛行」。《いつまでも この夢の中の飛行 大人になれない子どもみたいに君が笑うだけで》と歌う彼女はいまだに何かに属していないように見える。かつてはそれがモラトリアムだと言われたわけだけど、人って案外その方が楽なんじゃないかなあ。道なき道を進む彼女は本当にかっこいい。

ぴっち(@pitti2210

 

52. The National『I Am Easy to Find』

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結成20周年を迎えるほどのキャリアのある渋くてカッコ良いインディーロックバンドの新作は、1曲めのイントロからワクワクドキドキが止まらない。渋さもあるんだけど、味わい豊かに胃袋を掴むハイカロリーな力強さがある。延々と美しく、ワクワクドキドキしたまま駆け抜ける高揚感。ファンファーレのように祝祭的で華やかなサウンドが並び、傷口を癒してくれる温かい優しさに包まれる。穏やかにハイになりたい時には、是非。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

51. The Japanese House『Good At Falling』

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ネットの音楽オタクが選んだ2019年のベストアルバム 100→51

51. The Japanese House『Good At Falling』
52. The National『I Am Easy to Find』
53. iri『Shade』
54. Ariana Grande『thank u, next』
55. Loyle Carner『Not Waving, But Drowning』
56. Toro Y Moi『Outer Peace』
57. indigo la End『濡れゆく私小説
58. Post Malone『Hollywood's Bleeding』
59. People In The Box『Tabula Rasa』
60. CRCK/LCKS『Temporary』
61. JPEGMAFIA『All My Heroes Are Cornballs』
62. NICO Touches the Walls『QUIZMASTER』
63. AAAMYYY『BODY』
64. Foals『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』
65. Aurora『A Different Kind Of Human - Step 2』
66. 星野源『Same Thing』
67. KAYTRANADA『BUBBA』
68. Flying Lotus『Flamagra』
69. Jay Som『Anak Ko』
70. 私立恵比寿中学『Playlist』
71. FINAL SPANK HAPPY『mint exorcist』
72. 私立恵比寿中学『MUSiC』
73. Little Simz『GREY Area』
74. Dos Monos『Dos City』
75. Whitney『Forever Turned Around』
76. ずっと真夜中でいいのに。『潜潜話』
77. the chef cooks me『Feeling』
78. 君島大空『午後の反射光』
79. Yogee New Waves『BLUEHARLEM』
80. OGRE YOU ASSHOLE『新しい人』
81. Faye Webster『Atlanta Millionaires Club』
82. DIIV『Deceiver』
83. Weyes Blood『Titanic Rising』
84. Fontaines D.C.『Dogrel』
85. 坂本真綾『今日だけの音楽』
86. THE YELLOW MONKEY『9999』
87. BROCKHAMPTON『GINGER』
88. 踊ってばかりの国『光の中に』
89. BBHF『Family』
90. 赤い公園『消えない』
91. Kan Sano『Ghost Notes』
92. kiki vivi lily『vivid』
93. Wilco『Ode to Joy』
94. SIRUP『FEEL GOOD』
95. Moonchild『Little Ghost』
96. MONO NO AWARE『かけがいのないもの』
97. BABYMETAL『METAL GALAXY』
98. KOHH『Untitled』
99. Lizzo『Cuz I love you』
100. Slipknot『We Are Not Your Kind』

 

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