フルで聴かれるべきアニメ音楽

こんにちは、KVです。以前もアニメサントラの記事書いたのに、またアニメ音楽に触れるの?と思った方もいるでしょう。

隠れた財宝~アニメのサウンドトラック~

アニメの劇伴音楽は触れられる機会が少ないので、そこに注目してみるのはどうかと提案しましたが、もう少し考えてみると当たり前ながらも、個人的に目から鱗の事実が頭をふとよぎったんです、「アニメで使われる音源は大抵フルじゃない」と。

劇中のBGMはもちろんのこと、そもそもOP/EDだってTVサイズに編集されている。しかもDVDのメニューでしか流れないだとか、長尺のトラックなのにアイキャッチに10秒未満にカットされていたとか.....。果てには劇中未使用のものもサントラに結構収録されている、なんてこともあるし(サントラじゃなく一つの音楽作品とするためにわざとそうしてるパターンもあります)。放映するアニメを一回限りで見ているのなら、台詞や画面に集中して音楽を素通りしてしまうというのに、こんな風に切られてしまっては素敵な音源にもなかなかたどり着けないというもの。私は別にアニメ業界の回し者でもないけど、そのこともふまえれば積極的にサントラに触れるのはやっぱり価値あることではないでしょうか。

……ということを言いたかっただけなのですが、せっかくなので自分の中で「フルで聴かれるべきアニメ音楽」をいくつか挙げてみました。それって結局全アニメ音楽のことではあると思いますが、なんとなく見落とされている気のするような曲を選んだつもりです。

1. INFANiTy world(Serial Experiments Lain

チボ・マットやLuscious Jacksonの作風を思い出す90'sなトラック。レインのトラックはCHABO氏による通常のものとは別にクラブサイドのものがありますが、こちらは後者に収録されています。内容が内容なだけに90'sのクラブを意識させる音楽が詰まる中で、玲音役の清水香里さんが歌うクールな『INFANiTy world』は劇中では未使用でした(カッコイイ曲だけど使いどころが難しかった?)。

2. Delirious(ブギーポップは笑わない

ラノベ初期のヒット作「ブギーポップ」シリーズを軸にオリジナル・ストーリーを展開しアニメ化。しかし、画面は異様なほど暗くぼかされ、レインの雰囲気にも似た、もはやサイコホラーの様相すら呈することになるなんて誰が想像したろう。サントラ参加アーティストが本当に豪華で、Ken Ishii、レイハラカミ、Sadesper Record、サワサキヨシヒロ、ススム・ヨコタ、Audio Activeなど日本のテクノ・アーティストが揃い踏みです。アンビエントデトロイト・テクノドラムンベースが流れる中で固有表現の台詞が飛び交うSF的サイコドラマ・ラノベアニメ(しかもニュルンベルクのマイスタージンガー付き)。さすがに良曲ばかりですが、アイキャッチ用にまさかの3秒にカットされたこの曲をセレクト。

3. Now or Never(ASTROBOY 鉄腕アトム

ケミストリーmeets m-floによる平成アニメのアトムの後期OPです。この公式PVのカットアップには衝撃を受けた人も多いのでは。ロボットと人間の共存という、壮大でシリアスなアニメの主題に相応しい楽曲。Kendrick Lamarの同名曲も素晴らしいけど、こちらも改めて注目されるべきでしょう。

4. 初恋(東のエデン

アニメ屈指の名曲だと個人的に思っていますが、テーマ音楽とも言えるはずなのにあまり劇中で聴かなかった覚えがあります(私の勘違いかもしれません)。DVDのメニュー画面で流れるのはこの旋律でした。作曲は川井憲次氏で、『東のエデン』のサントラでは攻殻機動隊などで耳にする攻撃的・土着的な響きは息をひそめ、かわりに軽やかなエレベーターミュージックが多いです。

5. Beautiful DreamerUN-GO

坂口安吾の作品を大胆に解釈し、近未来の探偵物語へ転換した『UN-GO』の音楽を手がけるのはNARASAKI氏。Coaltar Of The Deepersでも聴かれる、彼の和を感じさせる側面が現代歌謡へと繋がった一曲。情感たっぷりに吐き出される歌声が絶妙なスペースを感じるトラックに揺蕩ういい曲なんですが、アニメを見た人からは「夜長はヤバいだろ」と突っ込まれそう。

6. Marx Syndrome(C)

ノイタミナ枠が連続しますが、鬼才中村健二監督による名作『C』より、『刀語』や『R.O.D』を手がけた、熱い音楽に定評のある岩崎琢氏のトラックをチョイス。曲名が経済的(アカデミックな意味で)なのは、お金についてのアニメだから。静かながらも一貫して緊迫した空気が支配するこの曲は劇中で使われず、CMや公式サイトでしか流れなかった。他にも粒ぞろいな曲が多く、「Invisible Hand」はエレガントでマーシャルな雰囲気がたまらない。

Invisible Hand(C)

OPEN DEAL!

7. ヴィーナスと小さな神様(NieA_7

OPのSIONや劇中でニアのラジオから流れるブルースのインパクトが大きくて、EDの印象が薄い方もいるのかも、と思いセレクト。山本麻里安が歌うこの小麦色トロピカルポップを手がけたのはまさかのティポグラフィカのコンビ(作詞:菊地成孔/作曲:今堀恒雄)。ノスタルジアを強く感じる劇中の青空ともシンクロ。音の構築も素晴らしい名曲です。好きなアニメの好きな曲。

8. sail away (vocal)(スカイ・クロラ

押井守監督が「今まで培った手法を禁じ手」にして取りかかった、森博嗣原作の劇場版作品。冒頭のテーマがライトモチーフとして繰り返される中、残酷で雲の様に掴めない世界でふと流れるこの曲もやはり川井憲次氏作曲。どこか疲れていて達観したような、厭世的な雰囲気がこの物語の青空と重なります。

 

 

KV