Music Unlimited、好きだったよ

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あまりに唐突でお粗末な一報だった。

スウェーデン発祥の無料音楽ストリーミングサービス「Spotify」がソニーと手を組む代償として、ソニーの素敵な定額音楽ストリーミングサービス「Music Unlimited」が完全撤退とのニュースのことである。(Spotifyと合併することになったMusic Unlimitedの曲は今後PS4などで「PlayStation Music」として41カ国で利用可能。ただし日本は未定。詳しくはプレスリリース

私は20ヶ月ほどMusic Unlimited(以下、MU)に対してお金を支払ってきた。批評や見通しなどは詳しい方にお任せすることにして、私は「音楽だいすき」ないちユーザーとして、何故このサービスを利用してきたかは語ることができる。今後この感想が生かされることがあるかはわからないけれど、最後の機会かもしれないのでひそやかに記録しておきたいと思う。 

 

Music Unlimitedを利用したきっかけ

いつでもどこでも聴ける!

ネット環境があり、PCやスマホソニー製品の再生環境があれば、それだけで瞬時にネット上の音楽に繋がる未来感。(当時2013年早春。現在は更に当たり前になった感覚ですね) 

驚異の2500万曲!

US、UKを始めとしたソニー系列から過去に世にリリースされた楽曲(洋楽、ジャズ、クラシックがメインだったが徐々にJ-POPも増えた)を始め、サービスを開始すればすぐに2500万曲にアクセスできるという高揚感。私が利用し始めた頃は1300万曲という触れ込みだったので、2年弱の間にほぼ倍増したようだ。

月額980円って安くない?

毎月シングルCDを1枚買うのと同じ値段。シングル数曲に1000円支払うことはもはや高いと感じる昨今、それを月々続ければいつでもどこでも2500万曲聴けるって、なんだそれすごい!お徳感!

スマホにオフライン保存!

ストリーミングサービス=ネットに常時接続しなければいけないという先入観があったが、MUはスマホに最大4000曲もの曲を保存できるツワモノ。オフライン保存した曲は電波の入れられないときでもアプリから聴けるという、他のストリーミングサービスとは一味違った所有欲の満足感。

リリース日に聴ける!

主に洋楽でしか体感はしていないが、大抵のメジャーな新譜はリリース日に即日配信される。iTMSなどで30秒ずつ視聴してから購入を判断しなくたって、そのまますんなりとボーナストラックまで聴ける充実感とスピード感。

 

Music Unlimitedを重宝していた理由

アルバムと音質

私は今なおオリジナルアルバムを1つの作品と捉えている。だからアルバムごとに聴けるMUのようなサービスはとても貴重だし、それが音楽関連サービスにおいてYouTubeだけでは満足できない理由の1つでもある。ちなみにシングルもシングル単位で配信しているので、アルバム未収録のカップリング曲もたくさん聴くことができた。

音質はなんの不満もなかった。もし更に音質にこだわりたい音源に出会ったら、CDかハイレゾ音源を購入すればいいだけのこと。そのように出会えた私的名盤に対してはお金を払う人がこのサービスを利用していた印象とともに、音質に関しては外野のほうがうるさかったような印象がある。

大いなるきっかけ

月額引き落としさえなされてしまえばあとは自在に利用できるので、好きなアーティストの作品だけでなく、片っ端からいろいろ視聴することができた。個人的にはそもそも洋楽には疎く、とりわけポップスターの作品には殆ど触れてこなかった。だけどブラウザの別タブで「洋楽 名盤」とでも検索しヒットしたキーワードを打ち込むだけで、全世界で何千万枚売れたアーティストや何百万枚売れたアルバムに容易くアクセスすることができるのだ。なるほどなあ。今まで聴いてこなかった作品にいとも簡単に魅了され、何度も感嘆の息を吐いた。そして時間の有限を憂いた。

また、月日が経つにつれ居場所の分からなくなってしまった、青春を共にした海外の音楽。それらも並列して聴くことができる。Hot Hot HeatやAmerican Hi-Fiの名を久しぶりに見つけたときのテンションの高揚ったらなかった。

レンタルと比較したときの優位

MUで利用可能な音楽なら、リリース日から1年近くレンタル解禁を待つような聴けるまでのタイムラグのないことは言うまでもなく優位性の1つ。

また、例えば40代ミュージシャンのルーツを辿ろうと思ったときに、彼らがフェイバリットだと挙げる70〜80年代のラインナップをフィジカルで見つけることはなかなか難しい。また、それらが稀少なCDと化した場合、新たに購入すると値が張る可能性が非常に高い。東京のSHIBUYA TSUTAYAや神田・ジャニス、大阪の難波日本橋・K2レコードあたりならばレンタルCDで多数見つかるかも知れないけれど、中には取り扱い不可能なものもある。もちろんMUにも版権の問題などで取り扱いしていないものはたくさんある。だけど初めから全てをAmazonや日本中のブックオフで探したり或いは上記のレンタル店に行くよりも、MUを利用するほうが、ずっと手軽に大好きなミュージシャンのルーツにアクセスできたことは大きな利点だった。MUに存在しないものだけをフィジカルで探せばいいのだから、経済的かつスマートであると感じられた。(アナログ手法で知らないCDを掘るのも大好きだけどそれは別の話)

ヘビーな洋楽ファンでない私の洋楽の知見を広める大きなきっかけになってくれたMU。「この人有名だけどどんな歌を歌っているんだろう?」「あの人こういう音楽が好きなんだ」「これ聴きたいと思ってたけど聴いてなかったんだよね」に気軽に触れるきっかけとなってくれたMUは、私にとって揺るぎない正義である。

 

Music Unlimitedに期待していたこと

世界音楽史の便覧となりうる

本気でなれると思った。2500万曲という「限られた」音楽だけでもいいから、あらゆる年代・国・ジャンルを横断しながら「このアーティストに影響を受けた/与えた」「このアーティストと交友」「この頃はこのジャンルに傾倒」。そういう横つなぎを見せてくれたら、もっとお金を払ってもいいと思った。本気で。

 

Music Unlimitedに言いたいこと

お金なら払うから、やめないで?

PlayStation Music」が「Spotify」と同じように、基本的なストリーミングサービスが広告付き無料になったとしても、私は有料会員になることを選ぶだろう。個々の小さな出費でこの小さな宇宙が守られる約束がなされるなら容易いことである。洋楽を始めとした聴ききれない量の音楽を、アルバム単位で再生できる貴重なサービス。心の中ではどうにか守りたいと思うMU愛の芽生えすら感じている。知ってしまったこのサービスを、どうか、どのような形であれ日本に残して欲しい。

 

手元に置いておきたくなればどのような形であれお金を払う。無料でも有料でもそんなことは大きな問題じゃないから、何らかのきっかけを与えてくれるサービスを残して欲しいというのが「音楽だいすき」ないちユーザーの本音である。というのも、知らないなら知らないで何とかなるのが、普通のリスナーの生活だ。今の自分が知らない音楽を知ってしまうから、欲しくなるし手元に置いておきたくなるのだ。知らなければ、この世に存在しないことと同じである。機会損失。きっかけが減る。MU完全撤退・今後未定のニュースは、街一番のCD屋が潰れるのと同じような喪失感を覚えた。

また、手元にあることが心配で、クラウドに音楽を置いておける安心感に対してもお金を払う。震災以降のヘビーな洋楽ファンには、こちらの方がMUを利用するメインの理由だったと推察できる。安心を預けたサービスが終了するなんて、私の場合よりもよほど切実な問題だと思うのだけど、一体どうするつもりなんだろうか。

 

もし「PlayStation Music」が日本で実施されないと決定されてしまったら、MUユーザーだった私は、音楽を知るきっかけがひとつ奪われたと感じてしまうだろう。部屋に居ながらにして、移動中の隙間時間にして、2500万曲もの世界の遺産に瞬時にアクセスできる、日本に唯一であり革新的なサービス。どのような価値観や主義が業界内でまかり通っているとしても、MUを核にしてライフスタイルを整えようとしていた少なくない数のユーザーを無下にしないで欲しい。「PlayStation Music」が日本でも実施されることを強く願うとともに、最後にそれだけは、強く主張したい。

 

この記事を書くにあたって、以下の記事を読みました。

Music Unlimitedが3/29でサービス終了|小野島 大|note(ノート)

いまだタイトル決めれず: PLAYSTATION MUSIC発表! 〜”凋落”ソニーの”賢明”な選択!?



やや( @mewmewl7

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