2015年もっと知られて欲しい「女性ピアノボーカル」バンド2組

最近、TSUTAYAに行くと名前の知らないバンドのアルバムが置かれていることが頻繁にあります。これらのCDによって、僕のような地方に住んでいる人でも東京のインディーズシーンで活動しているバンドの音源を気軽に聴くことができるので、とてもありがたいです。今回は、そんなレンタルCDの中から見つけた、2組の「女性ピアノボーカル」バンドを紹介したいと思います。

 

シキサイパズル 
PRISMATIC TELESCOPE

PRISMATIC TELESCOPE

 

2009年に結成されたayako urano (Vo./pf.)、shuntaro tsukui (Gu./Prog./Syn.)、tasuku shiomi (Ba.)、naoki takakura (Dr.)からなる4人組。活動歴は5年ほどながら完成された音楽性を持っており、今最も推したいバンドです。

楽曲はほとんどミドル~スローテンポで、力強いビートに乗せて煌びやかなギターと鍵盤が織りなす浮遊感のあるサウンドが耳に残ります。その音の波の上を漂うようにして、繊細な歌声が重なっていくのですが、これがたまらなく美しいです。

特にこの「Shikijitsu」のサビの天に昇るようなファルセットは初めて聴いたときに息を飲みました。メロディーは親しみやすく、今はあまりないような王道モノですが、このサウンドにこの歌声で歌われることで劇的な感動を生みだしています。

この曲に限らず、シキサイパズルの楽曲は展開もおもしろいです。グラデーションのように段々と移り変わっていくようなアレンジでその曲の内側へとぐいぐい引き込まれます。歌詞も、そのサウンドを壊さないような閉塞的かつ美麗な風景描写が中心です。あまりに繊細な描写であるため、聴く環境によってはその曲の魅力が引き出しきれないのではないかと思ってしまうほどです。早朝や夜の時間帯に(特に冬)散歩しながら聴くことを推奨します。

これは勝手な見解なのですが、近未来的で儚い世界観を持った深夜アニメの主題歌などに起用されればその界隈でかなりのバズを起こせるのではないかと。メジャーデビューなどはまだ決まってないようですが、どうか上手くチャンスを見つけてこの音楽を広げて行って欲しいです。

 

[Lifter] 
[lifter]

[lifter]

 

2005年に結成された、none* (vocal, keyboard)、Suzuki-man(guitar)、さいとうゆうき(drums)からなる3人組。この[ ]を使用するバンドが[Alexandros]の他にいたとは、というところで興味を持って聴いてみたのですが、上質なポップソングを奏でるバンドでした。

「君の透明」を聴けば分かると思うのですが、強いメロディや派手なアレンジがあるわけではありません。あくまでさり気なく、生活に流れるような音楽を聴かせてくれます。鍵盤とギターがお互いの音の隙間を埋めるようにしなやかに絡み合ったサウンドはさらっとした質感のようでいてかなり緻密です。

そしてこの涼しく晴れやかな歌声が気持ちよい。 [Lifter]の音楽を聴いていると懐かしい気分になり、昔からずっとそばにこの音楽があった気がしてきます。その大きな要因は間違いなくこの歌声です。朗らかで優しく、自由に大空を飛び回っているようなこの声こそバンドの最大の魅力だと思います。

また歌詞は抽象的な表現を数多く用いながらも、かすかに本心が見え隠れするラブソングが多いです。「わかりやすさ」が求められる今の時代に珍しい、丁寧な文学性に満ちています。

こういう、普遍的な歌を追求する姿勢のバンド、とても好きなのですがなかなか前に出てこれない状況が続いていると思います。パワータイプばかりではきっとシーンもそろそろ疲弊してくるはずなので、そこがブレイクの狙い目ではないでしょうか。

 

 

月の人(@ShapeMoon

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