2/20 St. Vincent @ 渋谷QUATTRO

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(出典:https://twitter.com/lo_mink/status/568759008963665920

今の彼女らにしか出来ない、妖艶で官能的なロックンロールショー。一言で言い切れるとしたなら、それに尽きる。

先日のグラミー賞ではめでたくベスト・オルタナティブ・アルバム賞を受賞を果たしたSt.Vincent、昨年のフジロック以来となる来日ライブに足を運んだ。

会場は渋谷QUATTRO。早めに入場し、少し時間を置いたあとに何度となく場内を見渡してみれば、男女・年齢・国籍を問わず、非常に多様な方々が見に来ていたことに気づく。60代、ヘタすれば70代とも見受けられる頑固そうな親父様、20代の男女カップル、まさにインディーキッズといった理系/文系メガネ男子、スマートかつシックに着込んだファッショナブルな30代男女など。

そんな会場に流れるのが、Tim Heckerのノイズミュージックというのがまたおもしろい。終始場内BGMとして渦巻くなか、楽しげに会話をするグループ、固唾を呑んで待つ人たち、いたって普通に過ごしてはいるものの、心のどこかに異様な歪さを生み出していた。

定刻から5分遅れ。19:05。渋谷QUATTROでのSt.Vincentのショーが幕を開いた。ライブではないのか?否、この夜の渋谷QUATTROで繰り広げられたのは、まさしくショーであった。

 

St.Vincentと日本人のサポートメンバーであるToko Yasudaはボンテージ風のドレスを着こみ、一昔も二昔も前のマネキンのようなメイクを施して、振り付けでコントロールされた奇怪なロボットダンスを披露する。照明が赤から紫に、そして青へと照らしていけば、渋谷QUATTROという舞台ははまるでセクシャリティダンスホールへと変わっていった。

 

このステージ演出の向こう側に、ポップミュージックとしてセクシャリティを真っ当に成立させたアクト、例えばマドンナなどのステージを思い浮かべるのは造作も無い。振付師のAnnie-B Parsonと一緒に作り上げた演出によって、ある種の混沌を招き入れることに成功し、「現実離れした世界」は強烈な歪さとなって観る者に迫ってきた。

 

この歪さは、ステージ演出に留まらず、David Byneとの共作を経て生まれた『St.Vincent』にも通じるし、無論今宵のパフォーマンスにもアリアリと感じられた。強く打突されるデジタルなビートと生ドラム、Toko Yasudaによるシンセサイザーやギターによるサポートを受けながら、St.Vincentの手による爆音のギターサウンドが会場に強烈な衝撃を与えていく。「さぁ、見てみろ!」と言わんばかりのショーマンシップ、インディミュージシャンとしてみれば「らしからぬ」程に、観るものに強烈に刻みつける。

昨今のロックミュージックにはギターソロはほとんど組み込まれない。ポップソングとしてみた時にも不要と思われることが多いが、この日披露された18曲ほぼ全てにギターソロが組み込まれている、そこに彼女の歪さが集約されていると言ってもイイ。

序盤一曲目の「Rattlesnake」は観客を飛び起こし、終盤における「Chloe In The Afternoon」「Regret」「Birth In Reverse」の流れ、そしてアンコール時にはクラウドサーフしながら、6本の鉄弦を熱狂的にかきむしった。サウンドの中で緊縛されながら、時に自由に、そして狂気の声をあげるギターソロから滲み出ていたのは、彼女のセクシャリティとほとばしる才覚、彼女の姿はまるで、70年代のデヴィッド・ボウイのように官能的であった。このライブ演出だから、よりありありと浮かび上がったそれは、まさに今しか見られない貴重な一夜であった。

 

St.VincentによるMC

「レディース・アンド・ジェントルマン、あとそれに含まれない人たち、あなたたちと私たちにはちょっとした共通点があると思う。例えばそれは、空を飛びたくて、両腕を広げて、そこにピザの空箱をたくさんつけて、ベランダから何度も何度も飛び出すような、そんな希望を貴方達と私達は持っている気がする」(Toko Yasudaさんが通訳した内容も踏まえると大体こんな感じ)

セットリスト

Rattlesnake
Digital Witness
Cruel
Marrow
Every Tear Disappears
Laughing With A Mouth Of Blood
Jesus Saves, I Spend
Year Of The Tiger
Actor Out Of Work
Surgeon
Cheerleader
Prince Johnny
Bring Me Your Loves
Regret
Chloe In The Afternoon(正確な曲順を失念!確かここだった覚えが)
Birth In Reverse
(encore)
Severed Cross Fingers
Your Lips Are Red

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(出典:https://twitter.com/synzie/status/568747333225050112

 

 

草野(@grassrainbow

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