僕が見た90年代

いきなりですが1990年代の日本の音楽アルバムについて個人的に大好きな50枚を選んでみました。きっかけはレジーさんの記事です。

1990年代というと僕が音楽を聴き始めた年代で、今でも2000年より愛着がある気がします。もちろん00年代の音楽も大好きだけど、僕が音楽を聴き始めた1998年があまりに色濃く、その後のリスナーとしての好みの大部分がこの時決まってしまったように思えます。まだ雑誌を読み漁るような段階ではなく、毎晩ラジオのチャートを聴き、毎週土曜日にCDTVポップジャムを録画するようにして世界を広げていきました。

90年代の日本の音楽が00年代や10年代、もしくはそれ以前の80年代等と比較して優れているかはわからないですし、論じるつもりもありません。ただ、僕は90年代の音楽に育てられ、今でも実家みたいにこの年代の音楽に帰っていく時間があります。

そんなわけで今回は個人的な90年代の日本のアルバムについて選んでみました。実際には50枚の大半は後追いです。当時はフォーマットとしてはシングルが全盛でしたし、僕自身もアルバムを買うお金がありませんでした。ですが「こんな空気感だったな」と思えるリストにできたとは思います。一部ベスト盤も含んでいますし、時系列的に偏りもありますが、個人のリストなのでご容赦ください。そしてよかったらやってみてください。

ちなみにレジーさんの記事を読んで、すぐに「便乗しよう!」と思いリストを作っていたのですが、このブログでもお馴染みのゴリさんに先を越されてしまいました。早すぎ(笑)

 

 

ぴっち(@pitti2210

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CICADA「formula」

昨年ごろからか、バンドマンや音楽好きな人のみならず、普段ジャニーズなどのアイドルソングやアニソンしか聴いていないような友人にもCICADAをオススメしている気がする。そうした友人のなかから、ふっとこういう指摘をされたことがある。

「CICADAってSchool food punishmentみたいっすよね」と。

最初は何を言っているんだこいつ?と訝しんだが、ちょっと考えを巡らせてみると、なるほど、それはたしかにそうだろうと思えてきた。

CICADAはクラブミュージックとブラックミュージックを、School food punishmentはポストロックを、それぞれに汲み取っていたバンドだ。後者はより開かれたポップソングを生み出す道を選んだが、CICADAがメジャーシーンに進出して届けてくれたセカンド・アルバムは、彼らの手によるオルタナティヴ・ポップ、その雛形といえよう彼らなりのformula(式)を届けてくれた。

紅一点のフィメールボーカル城戸によるスウィートかつ艶のある歌声と歌詞世界は、彼らの音楽をR&Bらしいメロウな世界へと誘う魔力がある。だがもしも彼らの音楽をR&Bと一言で言い切ろうものなら、僕は全力で止めに入りたいと思う。彼らの音楽にはそれだけではない魅力がある。

彼らの音楽はいつもビートとの格闘にあった。前作『BED ROOM』ではロバート・グラスパー・エクスペリメント譲りのズレたビート感を取り入れたポップスを奏でていたが、前作の路線を広範なビートミュージックやベースミュージックを取り込み、並列に繋いでみせている。

「daylight」「スタイン」「ポートレート」「dream on」は声・ベース・ドラム・キレイなキーボードの音色による暖かなヒップホップ/R&B色が強い、彼らがインスパイアを受けているというThe Rootsを彼らなりに表現している。

「ゆれる指先」はスローなBPMのトラップ、「INFLUX」「都内」はサブベースやシンセベースと間のとり方からダブステップ、「stilllike」は軽やかな音像による2step/ドラムンベース、それぞれの楽曲にビートミュージック/ベースミュージックのDNAが忍び込んでいる。

もっとも驚くべきは「stand alone (blue)」の櫃田によるドラミングだ、2種類のスネアとバスドラムハイハットだけを基本にしつつも鮮やかなビートでこの曲をダンサンブルに仕上げている。 

だがこうした音々の影響源がおおっぴらに聴こえることがない、彼ら自身の音楽からは彼らがインスパイアを受けた一連の音楽の香りがうまく消えているようでもある(それだけでも非常に驚異的だ)。彼らがフレーズ・リフレインを主にしたミニマルな演奏を心がけていることで、城戸の歌声が自由にとらえるメロディラインやラップ・フロウをより強く押し出してもいるわけで、抑制された演奏とボーカルラインの遊び心、このアンビバレントが彼らの音楽にとっての武器なのかもしれない。 

こうしてみると、彼らの一番の魅力は、彼らが良いと思えるものをしっかりとやりきろうとする気概にあると言ってもいい。今作ラストの曲「dream on」で歌われる「tofubeats PARKGOLF Licaxxx ikkubaru 上質な音楽をドロップするニューフェイス セルアウトから離れた本物を辿る」という信念そのままに、トリップホップを入り口にしたベースミュージック/ビートミュージックへの愛情と城戸の歌声を織り交ぜた、彼らだけのオルタナティヴ・ポップを形にしている。

CICADAとSchool food punishment、両者を同じように捉えた友人は慧眼だろう。とあるジャンルやサウンドから帯びてくるヒストリーやあるべき形を、一足飛びで別の質感へと変換していく、そんな才覚と気概を持つバンドは非常に希有であり、好きな音楽のなかから、シームレスかつタイムレスなポップソングを生み出そうと試みている。その意味でCICADAは、孤高なる個性を持ち合わせる度胸と可能性を示したといえそうだ。 

(上記曲は収録されていませんが、とても良い曲なのでぜひに)

 

 

 草野(@kkkkssssnnnn

パノラマパナマタウン「シェルター」

パノラマパナマタウンは神戸出身の四人組のオルタナティヴロックバンド。RO69JACKでグランプリに輝き、夏のROCK IN JAPAN FESに出演。その後MASH A&Rでもグランプリを獲得し、現在様々なフェスに出演・精力的に活動している。

 

事務的な紹介はここまで。この曲は最近私が毎日一回は聞いている曲。

普段ロックを聴く私にとってオルタナティヴロックは珍しいジャンルであり、あまり手を広げたことがなかった。

しかし「パノラマパナマタウン」という。思わず口に出したくなるバンド名に惹かれ検索。初めて出会ったのがこの曲。

最新のミニアルバム「PROPOSE」に収録されているこの「シェルター」はとにかく歌詞がダーク。メロディにきちんと歌詞を乗せていくのではなく語りのような、つぶやきのようなAメロとクセになる響きが繰り返されるサビが少しむず痒くも心地いい。

歌詞の印象としては世の中の歪さを表現している感じがする。何もかも吐き捨てていく感じがたまらない、と私は思う。

特別汚い言葉を使ってるだとか、そういうわけではない。ただ心の中身を掴んで捨てていくようなサウンドと歌詞は、聞いた後にもう一度聴きたくなる。ゆがんだ楽器の音も魅力的だ。

MVは型にはまって、宗教のように皆同じことをする世の中を否定するような雰囲気。ボーカルの岩淵想太が最前列の柵に登り紙袋を被ったバンドマンと対峙、紙袋を投げ捨ててマネキンを倒すシーンはこの曲の「吐き捨てる」部分をよく表してると感じた。疲れている時とかちょっと何かを吐き出したい時におすすめ。

11月27日に新木場STUDIO COASTで行われるGetting better 20th anniversary Tourの東京公演にはこのパノラマパナマタウンを始め雨のパレード、フレンズなどこのブログで紹介しているバンドも多く出演する。また、DJ陣も相当豪華でチケット代もお得なのでぜひ。

 

 

eve