2013/10/2 THE BACK HORN "another world express" at Yokohama BLITZ

開演前に気分が悪くなるなんて久しぶり。そのくらいわくわくしてた。

シングル中心のベストアルバムがあんなに素晴らしいのだから、バックホーンのB面は新たな驚きと発見をもたらしてくれるに違いない。そのことは半月前に発売したばかりのB面集を聴いた時からわかっていたし、ライブでそれを上回るような「何か」が待ち構えていることも知っていた。もうすぐ閉館を迎える横浜BLITZ。派手に散って弾けて、燃え上がった。

最初の曲は、アルバムツアーにふさわしい「異国の空」。ここが横浜というのもあるのだろうか、妖艶なメロディラインは、まるで自分たちがどこか遠くの国にさらわれてしまうよう。続いてこちらも激しいナンバー、「神の悪戯」。現世に居ながら何かを垣間見るような、魂だけ抜き取られるような。誇張などではなく、ボーカル山田さんのどこか取り憑かれたような激しい叫びが心を抉り取る。そして間も置かずに、打ち鳴らされるドラムのイントロ、「ブラックホールバースデイ」で、まだ3曲目とは思えないほど狂喜乱舞する。フロアはもう汗だく。

早くも最高潮に達した会場は、ドラムス松田さんのMCでようやく一息。「都内でやるのは1月以来ですね」と見事なまでの地理感の無さをも発揮し、いい感じに脱力したところでの4曲目は「ハッピーエンドに憧れて」。何が自分にこんなに響いたんだろう。途中から泣けて泣けて、ひたすら涙を流して立ち尽くしていた。生きていくというのは大変なことばかりで、つらいことも多くて、それなのにそんな自分は世界のたった隅っこの存在で。それでも大丈夫、全然大丈夫だったとあらためて気づかされた。何が一番大切かなんてわからないけど、間違いなく大事なものがここにあった。嬉し泣きも混ざってた。

そして続いた曲は「生命線」

《泣いている暇はない》

と震わす声で歌われて、そのとおりだって、力強く拳をかかげた。

で、次の曲のイントロで、ほんとに涙なんて吹き飛んでしまったよ。「赤い靴」。うごめくベースの音に身体の芯から揺さぶられ、艶目かしい声はどこか意識の遠くのほうで。続く「カラビンカ」で、エコーが会場いっぱい響き渡った。

少し間をおいてからの次の曲。まさか「ガーデン」だなんて。サビから始まるメロディラインは、切ない恋愛ソングと言われても納得してしまうほどなのに、その声が紡ぐ歌詞は、余りにも世界を凌駕している。奥底でうねるベースが感情の起伏を増し、ギターの音色が辺りを包み込む。

と思えば、今度は間違いなく二人きりの世界を歌い上げる「未来」、空気の透明感そのものの「クリオネ」と続き、さっきまでの汗だくの自分たちはどこへやら、あっという間の場面転換。

15周年についてのMCが入ったのはこのあたり。「最初は、経験がなんだ、って。何年やってようが、ポッと出だろうが、世界をぶちのめすようなそんな曲作れたら勝ちだろ、って思ってた。でもここまで来てみて、ようやくわかる。年数積み重ねた結果の、今しかできないこと」。それだけではない。ほかに、ずっと一緒にやってきてのメンバーに対しての照れとかそういう話もしていたので、こちらは聞きながらハッとなったり、にやにやしたりととても忙しい。

そしてラストスパート。まずはB面集と同時発売シングルのカップリングから「雨に打たれて風に吹かれて」。たゆたうような激しい激しい地響き。それが次の「真夜中のライオン」で一転からっと。ベースの技巧を見せつけるようなスラップに心から釘付け。さんざん飛び跳ね、熱が上がってきたところでの「戦う君よ」。フロアーはまたしても最高潮。うだる熱気の中、声を枯らして叫び切る。最初からクライマックスだった山田さんの声は、一体どこから湧いてくるのか。

そして、「お前らこれで終わんねえだろ?」と問いかけんばかりの「コバルトブルー」が、会場いっぱい響き渡る。新旧最強のライブ曲に理性なんてとっくにどこかへ飛んでいき、ラストの「バトルイマ」で新たなバックホーンの夜明けにまた盛り上がって、熱気に包まれたまま、ライブは終わった。

鳴り止まない拍手の中、再びステージに現れた4人。山田さんと菅波さんが揃って小声でカウントして始めたのが、「舞い上がれ」。このエールが上っ面の言葉だけじゃないってわかるのは、きっと、さっき言ってた15年の重みがあるからなんだろう。そしてデビュー曲の「サニー」。重苦しいサウンドも悲痛なまでの叫びも、フロアーが熱気に変えて踊り狂う。

息つく間もなく、聞き慣れたセッション。ベースのスラップに聴き惚れる間もなくの、「涙がこぼれたら」。

《胸が震え 涙がこぼれたら 伝えなくちゃいけない お前の言葉で》

そうだよね、全くその通りだ。このライブで味わった思い、全て自分のもの。それをどうか、伝えなくっちゃいけない、ってことだよね。

 

なーんてことを考えながら、このレポートを「音楽だいすきクラブ」に投稿することにしました。今まで誰に伝えるでもなく書き溜めてきた物やら、新しく思いついたことやら、THE BACK HORNPeople In The Boxレミオロメンのあれやこれやを放出していけたらなあと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

かがり(@14banchi