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the band apart『謎のオープンワールド』

レビュー

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2012年にリリースした『2012 e.p.』以降、これまでの英詩から日本語詞による曲を作り続けている彼らの7枚目となるフルアルバム。冒頭と結末にインストを、楽曲の間に二つのインタールードを挟んでおり、三つの短編小説が含まれた作品集のようでもある。

楽曲群はこれまで以上にストレートなものが多い。《SFの世界で生きていく》というアルバムタイトルにも即したような歌い出しから疾走感あふれる展開を繰り広げるオープニングナンバー「笑うDJ」や、「バンアパがこんなのやっちゃうの!」と初めて聴いた時は驚いたコテコテの曲「月と暁」などがそうだろう。

しかしこれまでの彼ららしさを突き詰めた楽曲も豊富に揃っている。

上に紹介した「ピルグリム」や「禁断の宮殿」「最終列車」など相変わらずの心地の良い曲が満載。ポカポカの昼下がりに散歩でもしながらずっと聴いていたくなる。

そして特筆すべきはやはり日本語詞である。英語詞のころから抒情的かつ豊かな風景描写が僕の心をぐっと掴んでいたのだが、日本語で歌われることでよりストレートにその特徴を感じることが出来るようになった。とりわけ今作はより洗練された言葉遣いになった。

いつだってそう
最後には 不安や嘘も
背負い また歩き出す(ピルグリム)

最終列車のあかりを
足が止まるまで追いかける
誰もが声を失くした夜なら
もういらないから(最終列車)

対照的に「殺し屋がいっぱい」や「裸足のラストデイ」ではドキッとするようなフレーズが多々ある。メンバーのあの方が作詞したに違いないと思ってニヤリとするのもまた一興。(詳しくはぜひ自分の耳で確かめてもらいたい)

思えば彼らはデビュー以来多くのジャンルを独自に吸収し昇華させた。その音楽は「バンアパ以前、バンアパ以後」なんて言われるほど。2012年に日本語詞に転換してから2枚目のフルアルバムとなる今作品は、前述のその先、つまり『「バンアパ以後」のバンアパ以後』における重要な作品であると思う。これまでの英語詞の楽曲群たちを「バンアパ以後」とするならば、さらにその以後ともいえる今作はストレートながらもどこかひねくれていて、かつこれまでのしゃれたサウンドの進化系を聴かせてくれるという点でまぎれもなく傑作であるといえよう。

彼らは僕たちリスナーの期待を超える作品を毎回リリースしてくれる。これまでにリリースした作品ごとに色があり、深い味わいがある。ふとした時に「バンアパ聴きてぇなぁ」なんて思ってあれこれアルバムを流すうちに日が暮れていることがしばしば。そういった点が僕を彼らのとりこにさせている一つの要因かもしれない。次作では僕たちの期待をどんなふうに(いい意味で)裏切ってくれるのだろうか。その時まで僕はこの『謎のオープンワールド』の世界にどっぷりとつかることになるだろう。

 

 

tacchi(@tacchi0916

和風慶雲

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