こんな企画、やるつもりはありませんでした。そもそも平成とか令和とかはどうでもいいし、改元おめでとう!のムードも嫌いではないけど乗るのはかっこ悪いと思ってた。でもtwitterの友だちが何かやり始めたらハッシュタグが生まれ、「それなら俺が集計するよ?」と言ってしまったのです。そこが運の尽きでした。GW前の話です。GWは忙殺。その後も集計に追われ、体調を崩し、ようやく公開にこぎ着けました。もう二度とこんなことはしない。毎回思っているけど毎回忘れてる。今回も楽しかった思い出ばかりになると思います。いつもありがとうございます。
このランキングは無効になった19人を除いた362人が選んだ平成ベストソング100曲です。集計で登録された楽曲は2084曲あり、集計に用いたソフトの動作は重くなりました。そんな空気を読まない猛者たちから選ばれた楽曲たちから導き出された僕らの100曲は、世間のベスト平成ソング像からはかけ離れた「ネットの音楽オタク」そのものになりました。「これでいいのか?」と思いました。でもまあこうなったからには仕方ない。あくまで「ネットの音楽狂が平成31年最後の10日間に選んだベスト平成ソング」として意義あるものになったと思います。「あれが入ってない!」とか文句をつけながら楽しんでいただけたら幸いです。2日間ですがよろしくお願いします!(ぴっち)
100. きのこ帝国「海と花束」(2013)
自分の気持ちに見切りをつけるという行為は果てしない労力を使う。次に進むための必要な決断かもしれないし、ただの諦めかもしれない。現状に耐えられなくなってしまった逃げなのかもしれない。そして、私達は人生でそんな決断にばかり迫られる。《僕たちはいつも叶わないものから順番に愛してしまう》からなんだろう。
割愛するが、令和という言葉には「それぞれの花を大きく咲かせることができるように」という意味が込められているらしい。時代が変わったって何も変わりはしないのかもしれない。と同時に、何か変わるんじゃないかなとも思ってしまう。この曲を聴いて平成を過ごした人達。それぞれが抱えたままの花束が次の時代に咲き誇るといいね。
さこれた(@quit_love_)
99. RADWIMPS「有心論」(2006)
君がどれだけ好きか、をあらゆる語彙を総動員して少々狂気的にラブというラブを分け隔てなく歌い連ねる彼ら、その真骨頂のような1曲。誰かのおかげで生きなきゃいけないセカイが生まれる、人が太古より紡いできた営みを巧みに構築した純度の高いリリックの没入度が凄い。そして、耳をそばだてないと取りこぼしちゃいそうな独白から、君に触れて思想も何もかもが吹っ飛び、そしてそれは生きることそのものへの祈りへ……という一連のストーリーと連動するようにうねりまくる伸縮自在なグルーヴへの興奮度も非常に高い。
月の人(@ShapeMoon)
98. 大瀧詠一「幸せな結末」(1997)
私が子供の頃、大瀧詠一の印象は「変な歌い方をする人」であり、そのイメージはまさに「幸せの結末」で植え付けられたものであった。まだ小室哲哉の全盛期で、槇原敬之や広瀬香美ばかり聴いていた自分にとって、ムード歌謡も、ナイアガラ・サウンドも知らない自分には理解が出来なかったのだと思う。しかし、大人になって、はっぴいえんどを聴いて、『A LONG VACATION』を聴い、その他のナイアガラレーベルの作品を聴いてから、この曲を改めて聴くと「随分、聴きやすい大瀧詠一だな」と感じてしまう。
『A LONG VACATION』の頃に持つナイアガラ・サウンドでありながら、大瀧詠一のメロウな歌声、井上鑑の華麗なストリングスは、瑞瑞しさよりも円熟を感じさせるもので、まさに大人のラヴソングそのものであった。ドラマのタイアップや12年ぶりのCD発売など話題もありミリオン・セラーになったのだが、たぶんタイアップがなくてもそれくらい売れていたように思う。いま生きていれば、どんな音楽を残したのか。
ゴリさん(@toyoki123)
97. Dragon Ash「Grateful Days」(1999)
平成、いい時代だったよね。ちなみに俺は新潟生まれ田園育ち。悪そうなやつはいなかったし思春期に渋谷六本木なんてものは知らなかった。けど毎日がGrateful daysだったことは間違いない。史上最高に伝説的なリリックは今聴いてもニヤッとしてしまう。まぁ仲違いもほどほどにしてさ、笑い話にでもしながらまたコラボしてくれよな。
かんぞう(@canzou)
96. 毛皮のマリーズ「ビューティフル」(2008)
毛皮のマリーズは美学に貫かれたバンドだ。彼らには、イギーポップの肉体の使い方も、T-REXのグラムロック・サウンドも、さらにはデヴィッド・ボウイの役者性すらあった。つまり先人たちの「美学」を抽出し、日本という地でやったのが彼等であった、と私は考える。そんな彼らの代表曲「ビューティフル」もまた、美学の塊であった。
男のひとり語りから始まる本作だが、キーポイントは「ビリー・シアーズ」であろう。The Beatlesの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』でリンゴ・スターが演じた架空のビリーは、ワン&オンリーの歌手として「With a Little Help from My Friends」を歌う。「ビューティフル」に置き換えると、志磨遼平がやろうとしたことは「在りし日のロックスター」を自分に憑依させようとしたのではないか。だからこそ、終盤で「最後は必ず正義が勝つ」と何の衒いなく私たちに宣言できるのではないか。そしてこれは全てのロックスターがあるべき姿であり、精神である。ロックスターを目指すなら毛皮のマリーズの「ビューティフル」を聴こう。この曲にはロックスターの美学が詰まっている。
ゴリさん(@toyoki123)
95. スピッツ「空も飛べるはず」(1994)
デモ版の「めざめ」というバージョンでは、サビの《君と出会った奇跡がこの胸に溢れてる》の《奇跡》が《痛み》であるというのは、そこそこ知られた話だけど、初めてそれを知った時とても納得した。天まで昇っちゃうくらい最高な気分、というニュアンスもあるはずの「空も飛べるはず」なのに底抜けの明るさは微塵も感じず、ヒリヒリとした感触が強く印象に残る。奇跡の奥底には、決して忘れられない痛みが。出会った事実そのものが傷跡だったのだ、という劇的なワンフレーズである。
月の人(@ShapeMoon)
94. フィッシュマンズ「ナイトクルージング」(1996)
93. キリンジ「Drifter」(2001)
この曲を教えてくれた友人にはとても感謝している。初めて一緒に聴いた時のこと、今でもよく覚えてるよ。似つかわしくないクリスマスパーティ、文字通り浴びるように飲みまくったお酒、悪口を言いながら見たテレビ、そんで夜中に「キリンジの中で一番好きな曲なんだよね」ってこの曲を教えてくれたの。その子は《いろんな人がいて いろんなことを言うよ》という部分の歌詞が「ほんとにたまらないんだよ」なんて事を話してくれた。その時、俺は「そっかぁ、そういうの、なんかいいねぇ」なんてぼかして答えちゃってたな。それから月日が経って今なら少しわかる気がするよ。俺は君と違う部分だけどここの歌詞が好きなんだよね。《欲望が渦を巻く海原さえ ムーンリヴァーを渡るようなステップで 踏み越えてゆこうあなたと》これからもずっと大切な曲です。
うめもと(@takkaaaan)
92. MY LITTLE LOVER「Hello,Again〜昔からある場所〜」(1995)
91. サカナクション「ネイティブダンサー」(2009)
当時この歌を聴いた時、邦楽ロックという枠組みの中で「ギターの音がない」時点で衝撃だったことを覚えています。あの当時「踊れるロック」は一定数あれど、この曲は完全にダンスミュージックでした。それはロックバンドがリリースする曲のイメージとはかけ離れていたのも事実で、良い悪いではなく「こんな世界があるのか!」と感じました。ロックバンドとしてはこんな異彩な曲にゴーサインを出し、挙句素晴らしすぎるMVを作った当時の関係者、本当にあっぱれです。
はっちゅ(@Hat_chyu)
90. 宇多田ヒカル「traveling」(2001)
最先端の技術の枠を集めて作られたものというのは得てして風化も早くて、ちょっと時間経てばすぐ過去の時代の遺物となったりするものですがこの曲、特にMVはいまだに新鮮に感じます。Bメロからサビにかけて、3文字のリズムが言葉の響きとして心地よすぎて、これからもう5・7・5と同じ流れで3・3・3・3とかでも歌が平気で成立するとか思うのですが、これを実践的にやってるのがこの歌とチーモンチョーチュウの漫才くらいしか思いつかないのでやっぱすごかったんだなと。
はっちゅ(@Hat_chyu)
89. スチャダラパー「サマージャム'95」(1995)
88. cero「Contemporary Tokyo Cruise」(2012)
2011年の東日本大震災以、震災についての音楽が増えた。このような楽曲で自分が一番好きなのはceroの「Contemporary Tokyo Cruise」になる。「水没した東京をクルーズしたら幽霊と出会う」という震災のメタファー的な状況設定だが、幽霊は私たちにこんな事を訴える。《行かないで光よ 私たちはここにいます 巻き戻しして》と。それは「生きていた頃に戻してくれ」という悲痛なる叫びでもあるし、現実では叶えられない願いでもある。しかしその声がリフレインのように曲の高まりと呼応し、波の音や子供たちの声が聞こえ、人々の生活を海が呑みこんでいった瞬間、逆再生が始まり楽曲の最初のメロディーが高らかと鳴り響く。
ceroがこの楽曲で言いたかったこと。それは多分「現実世界において現実を巻き戻すことはできないが、曲の中なら出来る」ということであり、震災で亡くなった魂を音楽の形で昇華させるceroなりの鎮魂歌であるのだ。重い内容になってもおかしくない曲を、ポップでありながら誠意と希望をもって我々の耳へ届けてくれるた本作は2011年以降、最も重要な一曲であるのではないか。
ゴリさん(@toyoki123)
87. ももいろクローバー「走れ!」(2010)
君がいるから眩しく輝く世界の中で、君がいるからこんなに苦しい気持ちになる。大好きな人のための何かでありたい、と思い続ける日々ってこんなにも美しくて残酷で!そんな青春のフリーズドライ。解凍すれば流れ出すキラキラのメロディは、いつまでたっても踏み出せない僕らのハートの柔らかいところをくすぐってやまない。
世界を変えられるかもしれない、だけども壊してしまうかもしれない。運命を左右する一言を、放つ寸前で逡巡する。奇跡は果たして起こったのか、それともダメだったのか。この続きを描くのは君たちだよ、って言われているようで。ももクロはこの後、確かな革命を巻き起こし、世界を変えてしまった。じゃあ僕らは?それを考えると少し切なくなっちゃうけれど、やっぱり何かが起こる一歩手前のワクワク感ってポップミュージックの全てな気がする。
月の人(@ShapeMoon)
もしこの歌がメジャーデビューシングルになっていたら。もっと細かい話をすると、もし仮に2010年5月30日放送の「MUSIC JAPAN アイドル大集合SP」で披露された曲が「行くぜ!怪盗少女」ではなくこの「走れ!」だったら、今のももクロの力関係、立ち位置、そういったものは変わってたのか。この曲の作曲・編曲のmichitomoさん、このころ福田沙紀さんや弓木英梨乃さん(!?)に曲を作っててそれがどえらいすばらしいし、2011年ごろからぱすぽ☆やアプガにも曲を提供するわけですが、うっかりこっちに「走れ」を提供していたら。
この曲自体のパワーは当時からモノノフの皆さんにはしっかり共有されていたし、しばらくして「モテキ」でフィーチャーされるのですが、どうしてもそういうIFを想像してしまいました。
はっちゅ(@Hat_chyu)
86. 松任谷由実「春よ、来い」(1994)
松任谷由実と荒井由実は同じだが、松任谷由実とユーミンは別人である。ユーミンと松任谷由実の違いは何か。結論を言えば、それはポップアイコンか、シンガーソングライターかの違いだ。荒井由実は繊細に心の機微を歌うシンガーソングライターだが、ユーミンは80年代以降、リゾートやシティへの憧れを歌い、ボップソングのカリスマ的存在として君臨したポップアイコンであった。そんなユーミンの頂点が「真夏の夜の夢」だとしたら、その次に出た「Hello,my friend」はユーミンからシンガーソングライターである松任谷へ戻る分岐点の曲だったように感じる。そして「春よ、来い」は完全にシンガーソングライター松任谷由実を取り戻した楽曲であった。
ピアノ伴奏から始まるシンプルな編成、《君に預けし我が心は今でも返事を待っています》といった言葉のチョイス、ストップモーションからのドラマチックな展開はユーミンではやれないことであったし、荒井由実/松任谷由実でしかできない楽曲であった。この後に松任谷は荒井由実として「まちぶせ」をリリースするが、それもシンガーソングライターとしての自分を取り戻せたからこそできたのかもしれない。
ゴリさん(@toyoki123)
85. ASIAN KUNG-FU GENERATION「ソラニン」(2010)
テスト期間というのは特別で、何がかっていうと合法的に部活を休むことが出来た。もう一つ特別なのが昼過ぎにはもう学校は終わってしまうので「テスト勉強しようぜ!」なんて向かったのはサイゼリヤ・アトレ新浦安店。13時前から閉店の22時前まで勉強をした。というのは建前で中身なんてない話ばかりを繰り返した。お互いの好きな音楽を聴かせあったりもした。居座ってごめんなさい。
「疲れた〜」なんて言って鈴木くんがリピートし続けていたのがこの曲。今年結婚するなんて聴いたから思い出してしまった。今「ソラニン」を聞き返しているけど、あの時間を抜けてあなたたちの幸せを喜べる今が嬉しい。あの頃の僕らには戻れないけど、でも今はさよならだけの人生なんて思わなくなったよ。本当におめでとうね。
84. Perfume「コンピューターシティ」(2006)
83. NUMBER GIRL「NUM-AMI-DABUTZ」(2002)
82. Flipper's Guitar「恋とマシンガン」(1990)
90年代の音楽は引用の時代であった。渋谷系、ヒップ・ホップなど0から1ではなく1から10を作るという時代で、それはレンタルCD店が生まれて、それまでのアーカイヴが比較的に手に入りやすくなったこととか、DJ文化が成熟しはじめたことから生まれたと言ってもいいのかもしれない。そういう90年代の「引用」の申し子てきな立ち位置にいたのがフリッパーズ・ギターであった。
今では様々なCMとかでも使われている「恋とマシンガン」の元ネタは映画『黄金の7人』のオープニングテーマであった。パーフリの女の子がこの『黄金の7人』のサントラを買いに走り、国内CDとして再発された逸話もあるが、彼らの場合はそういう引用も扱い方だけでなく自身のファッションや、シニカルなスタンスの取り方など、それまでの既存のバンドのカウンターであった事がわかる。そしてフリッパーズがいたからこそ、その後に渋谷系が反映することや、創作から編集スタンスの音楽が増えたことを考えると、フリッパーズの功績は計り知れない。
ゴリさん(@toyoki123)
81. the pillows「ストレンジカメレオン」(1996)
《I wanna be your gentleman》という歌い出しなのだから、甘くロマンティックなラブソングだとしてもおかしくないのだけど、その後は内省的な心情吐露がドバドバとなされる。慰めや救いを求めず、悲しみや寂しさをアピールすることなく、ただ自分が今こうである、ということを諦めたように書き連ねてある。物憂げな曲調もそのやりきれなさを具現化していて妙な穏やかさがある。
山中さわおはこれ以降も様々な楽曲で、比喩を多用しながら寓話のようにはみ出し者な自分についての言及を行っていくわけだが、その原点。重たい暗闇の中で唯一の光として描かれる「君」の存在はあまりにも眩しい。初めて聴いた時、間違いなくこの曲とこのバンドに出会えた自分に向けて歌っていると確信できた。そんな思いはゆっくりと伝播し、「君」の数は着実に増え、何人分もの「君」の拍手を浴びることになるピロウズの物語。「ストレンジカメレオン」は孤独で歪なラブソングの姿で、何万人もの「君」を抱きしめることになったのだ。こちらこそ、君と出会えて良かったな、と言わせてほしい。
月の人(@ShapeMoon)
80. ピチカート・ファイヴ「東京は夜の七時」(1993)
ピチカート・ファイヴは明るく、悲しみを歌う。「悲しいうた」ではホーン・セクションが入りながら、明るく失恋した二人を歌い、「陽の当たる大通り」ではポップな曲調ながら、願望が叶えずに楽曲が終わる。つまり彼らの音楽は"ハッピー・サッド"をテーマにしており、それは映画を愛する小西康陽の対位法の的な演出かもしれないし、90年代のファジーなムードへの批評なのかもしれない。もちろん「東京は夜の七時」もこの例に当てはまる。
四つ打ちのビートで歌われる本作は《早くあなたに逢いたい》と言いながら、二人が巡り合ったか判らずに終わる。明るい曲調のためハッピーエンドを提示しているようにも思えるが、曲中に《待ち合わせたレストランはもう潰れてなかった》と不穏さを入れることで、バットエンドの可能性も伏線のように張り巡らせている。ちなみにこれはシングル盤での話で『Overdose』では後半の歌詞や、アレンジ変更も手伝い、バットエンド要素が強まる内容になっている。なんにせよピチカート・ファイヴの面白さは、一見軽薄そうに感じる音楽でも、深追いすると違う物語が見えてくるところ。それこそが彼らの神髄なのだ。
ゴリさん(@toyoki123)
ゴリさんのレビューを読んでいて思い出したけど、昨年リリースされた野宮真貴の『渋谷系ソングブック』には小西康陽編曲、プロデュースの新録版が収録された。ロックバンド・少林兄弟を迎え、ロックンロールにアレンジされたものだったのだけど、その新録版について野宮真貴は「今回のアレンジは、ハッピーエンドになったような気がして……。2人は会えたんじゃないかって、私は思ってます」と話していた*1。
ぴっち(@pitti2210)
79. Mr.Children「名もなき詩」(1996)
イントロ、第一音で"ジャーン"とギターを鳴らす曲は良い曲説。有名どころではビートルズの「A Hard Day's Night」しかり、個人的にはLUNA SEAの「I for you」もイントロのギター一発で耳が弾きこまれる。もちろんコードやギターの音作りによっては音の印象は全く違うもので、高揚するようなものもあれば、哀愁感を感じさせるものと様々。そんななか、高揚でも哀愁でもなく、何もかもを切り裂くような衝撃を感じさせてくれたのが「名もなき詩」のギターイントロだった。
1996年1月。冬休みを利用して親戚の家にお邪魔していた中学2年の頃。コタツに入りながらのんびりテレビを見ていたら始まったとあるドラマの初回放送。その最後に突然鳴った、あの"ジャガジャーン"と掻き鳴らされるギターから受けた衝撃は今でも鮮明に覚えてる。Cメロの早口言葉しかり、曲構成や内省的な歌詞が取り上げられることの多いように感じる曲だけど、たった数秒で視界が開くような、見てる世界が変わるような感覚にさせてくれるイントロのギターが何よりも「名もなき詩」が名曲たる所以なんじゃないか。そんなことをかれこれ20年以上思ってる。
のすペン(@nosupen)
78. syrup16g「生活」(2001)
応援ソングと真逆のようなフリをして、ナードな気持ち全開な歌詞を爽快なギターロックサウンドに乗せることで最低を最高に変えてしまう。こんな開き直ったような叫びでも、とても大事で立派な主張。救いがないことをパワーに変えて、肯定しようとする行為はとても前向きなことだと思う。みんな平然と生活しているけど、それがなんとも難しい。誰しも生きる糧がないとやってられない。五十嵐隆というフロントマンは、実に堂々とネガティブな文章を吐き出してしまう。それがどうにもカッコいい。ソリッドで緊迫した生々しい質感にポツリと佇む影を照らすスポットライト。“心なんて一生不安さ”と言い切るのは、救いが無い辛い現実がまた今日も訪れる絶望感と、人生みんなそんなもんだからどうにでもなる投げやりな希望のどちらも浮かび上がる。苦しみも背負って、今日こそはよりマシな生活が出来ますように…そんな風に祈りつつ聴くこの曲は、やけによく響く。
77. GRAPEVINE「光について」(1995)
理想に向かって進むたびに、ひとつずつゴールをクリアしていく。その過程で得ることになってしまった余計なもの、不要と判断されてしまい捨てなければいけなかったもの。それらは理想の外に確かに存在する現実であり、目標をクリアするごとに嫌でもひとつずつ知り続けることになる。だれも現状維持なんて認めてくれない。求められることは、問題なく淡々とゴールをクリアし続けること。そこでうまれる、葛藤という感情。
変わってゆく周囲の環境に戸惑う自分の心について、「心はただここにあった」と、さらりと描くことができるのが田中和将という作家だ。葛藤を感じる心の移り変わりを、至って客観的に冷静に、問題ないと自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。それがたとえ強がりなのだとしても、僕らは進み続けなければいけない。きょうを、あすを、生き続けるために、私にはこの曲が必要なのだ。
やや(@mewmewl7)
自分は平成七年生まれですが、この曲のリリース時期、つまりバインがMステとかポップジャムに出ていた頃は見ていませんし、正直バインが地上波のメジャーな歌番組に出ているところをイメージできません(申し訳ありません)。今だとあいみょんとかみたいに当時は受け入れていたのかなと想像するわけです。妙にダウナーな感じとか、ただの歌ものではなく洋楽、それもブルースとかソウルとかいろんな匂いを感じるところとか。
はっちゅ(@Hat_chyu)
76. スピッツ「愛のことば」(1995)
『ハチミツ』という魔法のかかった架空の世界を旅するようなアルバムの中でも懐かしさと異国の風景が混ざり合うような感じの曲。歌詞の中にもあるけど映画の中に入ってしまったと錯覚してしまう。そして何といってもこの珠玉のメロディー。とてつもなく美しいメロディーがアルバム曲としてそっと収まってまるで回想シーンのよう。この前後の「空も飛べるはず」「ロビンソン」「チェリー」と比較してもメロディーだけでいえば「愛のことば」が一番優れている気がする。とにかく魔法のような映画のようなどこか懐かしく美しいメロディーを放つ大名曲。
75. たま「さよなら人類」(1990)
とある音楽評論家は言う。90年代、日本初のオルタナティブ・ロックはスピッツだったと。しかし、それは真実であろうか。もしオルタナティブが「型にはまらない」という意味ならば、間違いなく、たまこそが90年代唯一のオルタナティブの始祖ではなかろうか。いかすバンド天国出身でありながら、スタイルの奇抜さや楽曲の異常な展開、さらには全員ボーカルができるという点は、それまでのロックバンドのスタイルを壊しにかかっていたし、「型にはまらない」オルタナティブの体現をしていたように感じる。
イカ天の2週目に披露された「さよなら人類」も、中盤のプログレッシブな展開や、哲学さえ感じさせる詞など、それまでのロックバンド、J-POPにも当てはまらないオルタナティブさを見せつけた。そしてこの曲がオリコンチャートで1位をとり、ポップソングへのカウンターとして機能していたことは、Nirvanaの『Nevermind』的であったと断言できる。ちなみにたまの系譜は今も脈々と受け継がれており、例えばSEKAI NO OWARIひとつを取ってみても、その断片は感じられる。一発屋という見解もあるが、今こそ、たまは再評価されるバンドではないか。
ゴリさん(@toyoki123)
74. チャットモンチー「シャングリラ」(2007)
どこかの雑誌みたいにロック/ロックじゃないと気にするのはナンセンスだなと思うけど、かつての僕たちもそうだった。バンドをやっていたからだ。ロックバンドというにはおこがましいけれど、自分たちがやっている音楽が一番かっこいいと思ってた(コピバンだったけど)。かっこいい=ロック、だったのだ。彼女たちはふわふわとした感じで出てきたが、何にも媚びていなくて、尖っていて、せめぎ合っていて、ひりひりしていて、一番かっこよかった。女の子たちだということは何にも関係ないけど、男の子の僕たちにはそのことも凄くかっこよく思えた。ガールズバンドについて考えた時、一番にチャットモンチーのことが思い浮かぶ。最高のロックバンドだと思った。
平成最後の日、バンドをやっていた友達とご飯しながら、今の音楽はすごいって話してた。若い人たちが、今までの私たちの発想にない音楽を生み出していて、豊かな時代にいることを喜んだ。オススメをシェアしあったら、殆どがソロアーティストで、もうみんなバンドやらないのかな、なんて話した。少しだけ寂しい気持ちになった。その時僕たちの頭には「シャングリラ」が流れていた。今でも一番にかっこいいと思う。
73. 星野源「化物」(2013)
「化物(ばけもの)」という言葉には、狐や狸などが違う生き物や物体に化けたもの、というのがその語源にあり、「おばけ」も死んだ人の魂が化けて出たものという捉え方がその根幹にあったようだ。暗闇に蠢く"ナニカ"、常識や理解の範疇には当てはめられないような出来事に遭遇した際に用いられる言葉である。
しかしながら、大人になった私たちは、狐や狸が変化の術を使ったり、死んだはずの人間が墓から這い出て生者を襲ったりすることはないということを知ってしまっている。そして、現代のこの世で一番恐ろしいのは生きている人間であり、どん底の暗闇を経験した人間こそが大きく化ける可能性があることも、既に知ってしまっている。
佐藤直也(@satonaoya)
キュレーションされない人生だった。「大概の人がそうだよ」と言われればそれまでだし、粛々と生きることこそが何よりも尊いと頭ではわかっている。だけど、スポットライトの下に立つ日を諦められない自分も確かにいて。
《誰かこの声を聞いてよ》という歌に確かに頷いてしまうのは、心の底から誰かに届けたかったものやそれでいて届かなかったものが、自分にもあったからだと思う。宇宙飛行士にも漫画家にもなれなかった。誰かに見出されることもなかったし、そもそも見出される前にやめてしまったものばかりだった。だからこそ《思い描くものになりたいと願えば》の一節に奮い立つ。やりたいことがあるなら、少しずつでも続けてみようと思う。「キュレーションされない人生だった」なんて、過去形で終わらせてる場合じゃない。
まっつ(@HugAllMyF0128)
72. ASIAN KUNG-FU GENERATION「君という花」(2003)
イントロの「ドッチータッチー」こそが全て、と言ってしまっても良いと思うのだけど(それくらいこの拍のキャッチーさが後世にもたらした影響は計り知れない)、そこに乗っかるオリエンタルなギターフレーズ、ぶつぶつ呟くようなABメロ、一転してメロディアスなサビ、各セクションが混然一体となって高揚感を生む。ダンスビートを大々的に導入した飛び跳ねたくなる曲であることは間違いないのだけど、“一緒に歌いたい箇所“が隅なく配置されていて、アンセミックなスケールも持っている。ラストの、クセがすごすぎるスキャットも聴いてるうちに1フレーズ違わず覚えちゃうし。
この当時のアジカンの楽曲は、あらゆる衝動的な欲望を歪んだサウンドに託したような楽曲が多かったけれど、「君という花」はその中では異端な温かさを持つ。わかってたまるか、で満ちた青き日々から徐々に脱し始め、誰かと繋がり痛みを分ける意味を知る。そんな優しいフィーリングがこの曲の懐の深さにも及んでいるのではないか。メンバーの珍妙な舞踊が炸裂するMVも、魂の解放を感じざるを得ない。あのステップ、最高なんだよ。
月の人(@ShapeMoon)
71. BUDDHA BRAND「人間発電所」(1996)
平成と共に歴史を紡いだジャンルである、日本語ラップ・日本のヒップホップとはどういうものなのか。クラシックと名高いこの名曲は、数ある日本語ラップのひとつのスタイルでしかないけれど、圧倒的に多くの人々の首を振らせ頂点まで届いた完成形のひとつである。多様化したこのジャンルの中でも、代名詞となり得る説得力がある。それがBUDDHA BRANDという存在であり、この曲だ。サンプリングにより構築されたシンプルかつ隙のないビート。語感も奇天烈っぷりも完璧で、どこを切り取ってもパンチラインとなるインパクト大なフレーズの雨嵐。平成が終わっても朽ちることのない鮮度を、いつまでも保ち続けるであろう。そしてなんといっても、コアなヘッズも納得のドープでアングラなムードと、ポップミュージックに限りなく接近した聴きやすさがある。96年発表のこの曲で、既にもうお手本として完成されたクオリティ。故にオリジナル。ラップミュージックの入り口に最適で、ひとたび好きになったら嫌いになることはないでしょう。そしてハマってしまった貴方はディグりだすであろう。ラッパーになるもよし。イルな伝導者のバトンは回り回る。時代が終わっても、この世が終わるまで。
70. フジファブリック「赤黄色の金木犀」(2004)
聴きながら浮かび上がってくる匂い。感覚を飛び越えて伝わるというのが凄い曲だ、と決めつけるわけではないけれど、それでもやはりこの曲を特別な存在にしている一因としては嗅覚の伝達回路とがっちりと結びつき、毎年のように秋口に思い出すことになるからではなかろうか。郷愁を誘うギターワークが、夕間暮れに溶けだしていくようであまりにも綺麗だ。
特定の香りで思い出の場面や出来事を思い出すプルースト現象をモチーフにし、《過ぎ去りしあなた》へと思いを馳せる。しかし《期待はずれなほど感傷的にはなりきれず》ともある。もしかしたらここで描かれている《あなた》との別離は、すぐさま当時の気持ちを想起できる1,2年前の出来事ではなく、もっとずっと昔のこと、悠久の時間を経た朧気な記憶なのかもしれない。どれほど時を重ねても、あの匂いとともにそっと訪れる後悔とセンチメンタル。《無駄に胸が騒いでしまう》理由を忘れてしまってもなお、消せない切なさが愛おしい。
月の人(@ShapeMoon)
69. サカナクション「ミュージック」(2013)
仕事を始めて5年目ぐらいに、少しだけ壁にぶち当たっていました。 そんな時、通勤中にこの曲をよく聴いていました。 カーブも多い岩だらけの海岸線を少し大きめの音量でサカナクションを聴きながら、車を走らせる日々。 リアルに海鳥が飛んでいるのを眺めながら、自分の中の強さと弱さについて考え続けていました。
《いつだって僕らを待ってる 疲れた痛みや傷だって 変わらないままの夜だって 歌い続けるよ》少々辛い現実であろうとも、弱いままの自分であっても淡々と続けていくことで何か見えてくるかもしれない。そんな希望を感じさせてくれた歌です。
かえで(@kaede_lily)
68. 椎名林檎「ギブス」(2000)
「気持ちが冷めれば、絶対と言う言葉は嘘になるから、今この瞬間を何もかも吹っ飛ぶぐらい味わいたい」という感情を経験した少女が成長していくような過程を感じる歌詞とギターをかき鳴らす椎名林檎が印象的な「ギブス」。歪んだギターの音と青い春が爆発するような歌詞なのだけど。平成が終わった今聞いても、不思議と心地よさが耳に残り、名曲とはこういうことなんだろうな。と沸々と長年味わえるような曲だと感じる。なんというか不思議と古くならない。圧倒的な憂鬱さや狂気を出す天才的感覚。個人的にはMVでの椎名林檎のギターの低い位置がたまらない。
21歳の乙女が《だってカートみたいだから あたしがコートニーじゃない》っていう愛の表現とっても素敵じゃないですか。
𝕐 (@y_3588)
67. 小沢健二「天使たちのシーン」(1993)
12月/友人と食事/大人になったね/街を歩く/例えば/我々は生まれた/なぜ?/街が光る/恋人は腕を組む/音楽家は演奏する/電球が光る/りんごが落ちる/なぜ?/空を飛ぶ/なぜ?/今では科学で説明できる/でもなぜ?/言葉を発する/ひどい言葉を発する/それは彼の傷となる/重荷になる/彼は飛行機をつくる/ダイナマイトをつくる/核兵器をつくる/オートミールをつくる/畑をたがやす/街になる/りんごは万有引力で落ちる/という法則/右に曲がると左に曲がれない/選択には対価がある/というシステム/りんごが落ちるのは万有引力のせい/ではなぜ万有引力は存在する?/神話/不完全な神話/アダムとイヴ/昔の人の知恵/システムがわからない時の知恵/同じものか?/知恵の更新/神の更新/法則と発展/最新のダイエット法/アスリートの食事/旅のお土産/うれしい/かなしい/なぜ?/右手/私は右手を宙にあげる/何かに名前をつける/誰かに名前をつけられた街/私の住む街/私の名前/あの人の名前/自我/文字/右手/スマートフォン/ナタリー・ポートマン/公園の木/公園の緑と鳥/鳴き声/車の音/は音楽/朝日/恋/これはそんな音楽(なのか?)
66. スピッツ「夜を駆ける」(2002)
鍵盤の印象的なイントロに続き、荒廃した世界を思わせる歌詞。 不思議で危うい二人の関係。転がるように疾走していくサウンド。 気がつくと、小説を1冊読んだかのような気分になる。 未だに二人の関係の納得できる解釈は思いつかない。 《遠くの灯りの方へ 駆けていく》歌詞の最後がほんの少しだけでも未来があることを感じさせるのは、草野マサムネの 透き通った歌声の中に隠された芯の強さだと私は思う。
かえで(@kaede_lily)
65. ORIGINAL LOVE「接吻」(1993)
たしか中学生だった頃。ラジオから聞こえたこの曲。《長く甘い口づけを交わす》から始まる歌詞に、子供ながらに「これはドエロい曲だな」と興奮したことを覚えています。「接吻」を国語辞典で引いた気もします。音楽は時間を一気に巻き戻してくれるツールだと昔から言われていますが、まさに当時、レンタルショップで借りたCDをテープにダビングして、お気に入りのソニーのダブルデッキのミニコンポで何度も聞いていたことを思い出しました。
きっと洒落た薄暗いバーで、ロングヘアの女性としてるんだろうなと想像していましたが、大人になった今でもこんな大人の「口づけ」はできてない気がします。それにしてもタイトルが「接吻」で歌詞は「口づけ」なんですよね。大人っていつなれるんだろう。
ヴィキ(@yukky428)
64. フィッシュマンズ「いかれたbaby」(1993)
自分の場合、酩酊したようなトリップ感を味わいたい時には、お酒を飲むよりこの曲を聴いた方が手っ取り早い。イントロからあまりにノスタルジーが溢れて感情を掻き乱される。佐藤伸治の歌声が人間のあやふやな輪郭をなぞる。至ってシンプルなようでいて、どうしようもなく吐き出したような剥き出しの言葉で構築された複雑な世界。突っついたら壊れそうなほどナイーブで儚いようだけど、確固たる強度を持つFishmansの曲の強さがわかりやすく表れていると思います。空気を吸って吐くだけじゃ生きてる気がしないから、見えないことに動いて動かされていくのですね。これだけ普遍性のあるような想いを、味がしなくなるまで噛み続ける。この曲と共に。
63. 宇多田ヒカル「桜流し」(2012)
難しい言葉は何も使っていない。メロディだって穏やかで優しさすら湛えている。それなのに私がこの曲を聴きたくなるのは決まって「死にたい」すら通り越した時だ。自分ひとりでずっと何かと闘って、でもそれすらどうでもよくなって布団から動けなくなった時、繰り返しこの曲だけを聴き続けた。《まだ何も伝えてない》のリフレインには喜びも悲しみも詰まっていて、きっとこの曲は誕生の瞬間にも今際の際にも鳴り響くんだろうな、と思った。覚めながら見る夢。彼岸にして此岸。シンプルなピアノは始まりながら終わっていく。あらゆるものの間に立って、そのすべてに壁を作りながら同時に融かしてもゆく4分41秒。
わかってる。このレヴューが何も言っていないってことくらい。でもこれだけは言わせてほしい。今まさに上滑りしているこの言葉たちを目にして、見限ることも共感したフリをかますこともできないあなたのために、きっとこの音楽はあるってことを。
まっつ(@HugAllMyF0128)
62. くるり「HOW TO GO」(2003)
61. Mr.Children「Tomorrow never knows」(1994)
ある意味つまらない物の見方だけど、今の感覚からすると「わかり合えた友の愛した女」を欲しがったらそれはただのヤバいやつだし、「償うことさえ出来ずに今日も傷みを抱き夢中で駆け抜ける」くらいならさっさと謝りなよと思う。「果てしない闇の向こうに手を伸ばそう」と歌われても「果てしない闇って何?」とツッコんでしまう自分もいるし、大体2004年に桜井本人が《果てしない闇も永遠の光もないって近頃は思う》と歌っていた。
1994年のリリースから早25年。社会は変わった。好景気が終わり長い不況や災害を経て我々は少しずつ前に進んだ。明日のことは大体わかるし、終わらない旅なんてうんざりだし、すべてが許される世界もなかった。だけど相変わらず音楽は僕らに寄り添い、明日を生きるための力を与えてくれる。「Tomorrow never knows」には25年前の彼らの闘争の痕跡が刻み込まれている。*2
ぴっち(@pitti2210)
60. サカナクション「ナイトフィッシングイズグッド」(2008)
2008年にWeezerの来日公演があり、アジカン、GOING UNDER GROUNDとの対バン企画として開催された。大阪公演で前座を務めたのがサカナクションだった。短い出番の最後に「ナイトフィッシングイズグッド」が演奏された。当時は知名度の高くなかったバンドが繰り出す、大胆な展開を盛り込んだ破格のスケールの楽曲の力で、多くの観客の頭の中で「??」が「!!」に変わったことが空気感からビンビン伝わってきた。合唱パートを経て踊れるビートに雪崩れ込み、歌い出しのメロディに回帰した時には、始めは棒立ちで腕組んで眺めたりケータイばかり見てたりした人達も踊り出していた。会場バイトのスタッフだった僕はアリーナ後方でその現象を目撃した。
2年後、サカナクションは大阪のフェス・RUSH BALLのトリを務めるまでに大きく育っていた。The HIATUS、BOOM BOOM SATELLITESからバトンを受け継いで舞台に立った山口一郎は、最後の曲が始まる前には大舞台に立てた感慨に感極まっていて、涙を堪えるように天を仰いでから、震える声で《いつか、さよなら僕は》と歌い出した。彼らの青くて鮮やかな序章にこの曲があった。
59. くるり「ハイウェイ」(2003)
こういうのがレビューというより個人の思い出話になってしまうのはしょうがないんだけど邪道かなって思ったりしつつ、でも映画音楽に関してはそれが特権的に許されているような気もします。僕が旅に出る理由はだいたい百個位あって、ひとつめは「ハイウェイ」に憧れているから。ふたつめは「ジョゼと虎と魚たち」にも憧れているからです。曲を知ったあとに映画を観たのですが、聴いて浮かべていた風景はこういうことだったのかと妙に納得した覚えがあります。なんとなく心の指針になるようなものがあって、この曲とエンドロールの空気が私にとってのそういうもの。なんだかかっこいいじゃん。みっつめは車の免許とってもいいかななんて思っていることです。そう思うためにとらないままにしている(言い訳)。
58. X JAPAN「紅」(1989)
57. 宇多田ヒカル「First Love」(1999)
56. SUPER BUTTER DOG「サヨナラCOLOR」(2001)
55. NUMBER GIRL「OMOIDE IN MY HEAD」(1997)
平成とは、NUMBER GIRLが出てきた時代である。くるり、スーパーカー、NUMBER GIRL、中村一義。そんな名詞の並びをよくSNSなどで目にしてきた。MO'SOME TONEBENDERや七尾旅人もここら辺の世代だった。後にアジカンやベボベを筆頭に、ナンバガを連想させるようなバンドがどんどん増えていった。今の10代20代が当たり前に聴いてるような若手バンドやボカロ曲の半数以上がナンバガの影響下にあるといっても過言ではないくらい、衝撃を起こしたバンドだった。活動年数もリリース数も、セールス的においても、さほど数があった訳ではない。私は当時小学生で、リアルタイムでは耳にしたことが無かった。初めて聴いたときも、そこまですぐには受け入れられなかった。ロックの先入観を変えるのに貢献した、偉大なバンドの音楽だと自分の耳だけでは判断が出来ないなと認識した。時を経て令和が訪れた今、NUMBER GIRL再結成の報せに奇声を上げて狂喜乱舞する1人の人間が出来上がってしまいました。This is 発狂和尚。そんな走馬灯のようなダイジェストも、OMOIDEになって曲と共にフラッシュバックする。今日も耳を澄ませば聴こえるのである。"ドラムス、アヒトイナザワ!"
54. 米津玄師「Lemon」(2018)
最初からどうでもいいこと言いますけど、霜降明星のANN0でせいやが真似したLemonの"ウェイ"の部分がバグるモノマネが最高におもしろかった。あと、オードリーのANNで米津玄師はキン肉マンに出てくるバラクーダの髪型を意識しているのでは?という投稿も面白かった。結局何が言いたいかというと、米津玄師というアーティストの存在や曲の1つの音がここまでフィーチャーされて、笑いとして成立するくらい共通認識がされているということ。米津玄師というアーティストが、改めて世間的に超メジャーアーティストになったことを感じずにはいられなかった。
Lemonは上記の"ウェイ"を程よく不自然に配置することで、皆が少し気にしてしまうようにできている。これを調べていく事で、ヒップホップ、そしてまた別の音楽に繋がっていく。リスナーの音楽に対する興味を掻き立てようとする米津玄師の執念を感じた。因みにサビ前のギターのカッティングは、Radioheadの「Creep」のオマージュだと自分は(勝手に)感じている。米津玄師というアーティストに対して今思うことはたった1つ。いいぞ、もっとやってくれ。
ハタショー(@hatasyo5)
53. スピッツ「楓」(1998)
52. サカナクション「目が明く藍色」(2010)
51. 小沢健二「ラブリー」(1994)
ネットの音楽オタクが選んだベスト平成ソング 100→51
51. 小沢健二「ラブリー」
52. サカナクション「目が明く藍色」
53. スピッツ「楓」
54. 米津玄師「Lemon」
55. NUMBER GIRL「OMOIDE IN MY HEAD」
56. SUPER BUTTER DOG「サヨナラCOLOR」
57. 宇多田ヒカル「First Love」
58. X JAPAN「紅」
59. くるり「ハイウェイ」
60. サカナクション「ナイトフィッシングイズグッド」
61. Mr.Children「Tomorrow never knows」
62. くるり「HOW TO GO」
63. 宇多田ヒカル「桜流し」
64. フィッシュマンズ「いかれたbaby」
65. ORIGINAL LOVE「接吻」
66. スピッツ「夜を駆ける」
67. 小沢健二「天使たちのシーン」
68. 椎名林檎「ギブス」
69. サカナクション「ミュージック」
70. フジファブリック「赤黄色の金木犀」
71. BUDDHA BRAND「人間発電所」
72. ASIAN KUNG-FU GENERATION「君という花」
73. 星野源「化物」
74. チャットモンチー「シャングリラ」
75. たま「さよなら人類」
76. スピッツ「愛のことば」
77. GRAPEVINE「光について」
78. syrup16g「生活」
79. Mr.Children「名もなき詩」
80. ピチカート・ファイヴ「東京は夜の七時」
81. the pillows「ストレンジカメレオン」
82. Flipper's Guitar「恋とマシンガン」
83. NUMBER GIRL「NUM-AMI-DABUTZ」
84. Perfume「コンピューターシティ」
85. ASIAN KUNG-FU GENERATION「ソラニン」
86. 松任谷由実「春よ、来い」
87. ももいろクローバー「走れ!」
88. cero「Contemporary Tokyo Cruise」
89. スチャダラパー「サマージャム'95」
90. 宇多田ヒカル「traveling」
91. サカナクション「ネイティブダンサー」
92. MY LITTLE LOVER「Hello,Again〜昔からある場所〜」
93. キリンジ「Drifter」
94. フィッシュマンズ「ナイトクルージング」
95. スピッツ「空も飛べるはず」
96. 毛皮のマリーズ「ビューティフル」
97. Dragon Ash「Grateful Days」
98. 大瀧詠一「幸せな結末」
99. RADWIMPS「有心論」
100. きのこ帝国「海と花束」
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