音に愛されている異色ロックピアノトリオ、センチメンタル岡田とがんばれ根本くんバンド

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都内だけに限っても、いったい何百のバンドが夜な夜なスタジオで練習に励み、ライブを行い、打ち上げで「売れてぇ……」とぼやきながら酒を飲んでいるのだろうか?僕は安い居酒屋で一人読書しながら酒を飲むのが趣味なのだが、往々にして打ち上げに使われていたりするため楽器に囲まれてくだをまくバンドマンを幾度も見かけている。そんな「何百のバンド」の中でも、ちょっと異色のバンドを紹介したい。

センチメンタル岡田とがんばれ根本くんバンド、こちらが今回紹介したいバンドだ。メンバーは、ボーカル&キーボードのセンチメンタル岡田・ベースの加藤渓・ドラムの伊藤幸祐の3人編成。

バンド名だけ見て「あ〜今ドキありがちな変な名前つけときゃ売れるって思ってそう〜てかイロモノっぽくね〜?」と感じた貴方、半分正解。彼らは基本的にはイロモノバンドだ。ライブを行う際にはフリップを多用する。お笑いのピン芸人がフリップネタでよく譜面台を使用しているが如く。

ボーカル&ピアノのセンチメンタル岡田は「ピアノが上手い変態」と称されバイセクシャルを公言しており、自身の男性経験をテーマにした曲まである。その曲の歌詞は正直酷い(ヤった相手の実名出しまくり&ド直球の下ネタ)。なお彼は既婚者であり、昨年11月に長女が産まれて今は子育てとバンド活動を並行している。ちなみに今彼らのライブで買える自主制作のCDのタイトルは『育児日記』で収録曲は「沐浴ロック」「搾乳エレジー」「搾乳ワルツ」だ。

バイセクシャルで既婚者で新米パパで、これが漫画のキャラクターだったら「要素詰め込みすぎだよ!」と怒られるが、残念ながらセンチメンタル岡田に関しては全て事実なのである。

 

ここまで読んでみて聡明な貴方はこう思ったに違いない。「そんなふざけたバンドが売れるわけねぇだろ!お前の耳腐ってんのかよ!」腐ってないし、僕は至極真面目にこの文章を書いている。彼らが売れるだろうと本気で思っているのは、彼らが非常に「音に愛されているバンド」だからだ。

センチメンタル岡田はMCや歌詞でこそスベり散らかしたりたまに客をドン引きさせたりしているが、ひとたび演奏に入るとまるで夢のように美しいピアノを弾く。何かに取り憑かれたかのように一心不乱に鍵盤を叩く姿は神々しく見える瞬間すらあるのだ。

「見た目は40歳、本当は24歳」と自虐的に彼は自身の見た目を揶揄するが僕は彼が「本当は40歳」でも驚かない。ピアノ演奏に熱量を込めすぎるがあまり外見の若さを失った魔法使いだと言われても、もしかしたら信じてしまうかもしれない。それほどまでに彼のピアノ演奏には魔力のようなものが込められている。

そんなやりたい放題のセンチメンタル岡田を支えるベースの加藤とドラムの伊藤は、ライブ中ほぼ話さない。だが、いつ見ても楽しそうに、暴走する岡田をしっかりとした演奏で後ろから支えている。特にドラムの伊藤は笑顔を絶やさずお父さんのように岡田を見守っている様子がよく見受けられる。

さらに指摘したいのが彼らの楽曲の多彩性だ。直球のロックあり、ラップあり、ファンクあり、かと思えば涙腺を直撃するようなメロウなフレーズを唐突に放り込んできたりする。ただPOPとカテゴライズしてしまうのを躊躇ってしまうほど色とりどりの楽曲たち。どれだけふざけた歌詞を乗せても決して曲が破綻しないのが彼らの凄いところで、強みで、僕が「音に愛されている」と感じる所以である。

そんな彼らが、2月10日にシングルをリリースする。タイトルは『seaside suicide』、自殺をテーマにした曲だ。

自殺×ダンスミュージック! ! ! 死を笑え! センチメンタル岡田の自身の経験(父の自殺)を元にした歌詞をスライ&ザ・ファミリーストーンのようなクールなサウンドに乗せた新しいダンスミュージック「seaside suicide」。末井昭の『自殺』(講談社エッセイ賞)に影響を受け、死すら笑うというコンセプトの元作られました。

Amazonの商品紹介文より抜粋)

自殺とダンスミュージックってそこ一番かけちゃいけないところだろ!不謹慎!とただ言うのは容易い。「死すら笑う」そのテーマそのものを非難する人もいるかもしれない。しかし音に愛された彼らは不謹慎すら素晴らしい音楽に昇華させてしまう。それはもう見事な手腕で多幸感に溢れた楽曲に仕立て上げてしまう。素晴らしい音楽の前で「正論」は邪魔物でしかないのではないだろうか?最後まで読んでくれた貴方には、感謝と共にとにかく一度ライブで彼らを見て欲しいと伝えたい。

音に愛された3人が貴方を正論の向こう側へ連れて行ってくれることを僕が約束する。

seaside suicide

seaside suicide

  • アーティスト: センチメンタル岡田とがんばれ根本くんバンド
  • 出版社/メーカー: Sentimental Disc
  • 発売日: 2016/02/10
  • メディア: CD
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高田真(@takadamakoto030

岡村靖幸『幸福』

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岡村ちゃんの約11年ぶりのオリジナルアルバムを聴いた。

最初に聴いた時は、流れが良くない、と思った。タイトルに合わないムーディなオープニングに困惑したし、3曲目でがらりと変わる展開に違和感を覚えた。他にも細かい部分で2箇所ほど気にかかるところがあった。

でも何度か聴くうちにその意図が少しずつ見えてきた。このアルバムはおそらくオープニングが歪なのだ。『幸福』というタイトルに似つかわしくない。「できるだけ純情でいたい」は前述の通り、ダークでムーディで、どこか『Me-Imi』の頃を彷彿させる。狂おしいまでに愛を歌う岡村ちゃんの健在を示すものではあるのだが、アルバムの1曲目に位置することには違和感がある。

でも岡村ちゃんはこの曲でアルバムをはじめたかったのだろう。それはなぜか。岡村ちゃんが空白を埋めようとしたからだ。なにせオリジナルアルバムのリリースは11年だ。もっともシングルは活動再開後に度々出していたし、リミックスアルバムも出している。だけど岡村ちゃんは一度僕らの前から姿を消した。そのような出来事があった。その詳細はここでは語らないが、僕らは二度と岡村ちゃんに会えないことを覚悟した時期があった。

岡村ちゃんはそのことを、なかったことにはしなかったのだ。たぶん。「できるだけ純情でいたい」で岡村ちゃんはこう歌う。

激しい夜交わした 疚しい気がしだした
でも 逢いたい 逢いたい 逢いたい
まだ 迷路から抜けられず 思わず目を閉じた 

僕らは岡村ちゃんに逢いたかったし、もしかしたら岡村ちゃんもそうだったのではないか。それが復帰後のハイペースなライブ活動に現れているのではないだろうか。

このはじまりの意図がうっすりと見え始めてからは、絶妙な構成のように思えた。そしてひたすら幸せな時間が続く。「ラブメッセージ」ではポップスターの岡村ちゃんが、そして「愛はおしゃれじゃない」ではみんなに届いたアンセムで僕らをひたすら幸せにしてくれる岡村ちゃんがそこにいた。どファンクな「ヘアー」はひたすらかっこいい。「ビバナミダ」「彼氏になって優しくなって」のシングル2連発はウイニングランのように僕の耳を通り過ぎ、最後はもはや言葉にならない「ぶーしゃかLOOP」に突入する。幸福そのものだった。

このアルバムは岡村ちゃんを熱心に追いかけていた人に冷水を浴びせる側面がある。すでに僕らが幸福の最中にいるにもかかわらず、あの頃の岡村ちゃんを思い返さなければいけないからだ。でも岡村ちゃんは敢えてそこからはじめ、ここにたどり着いた。本当に長い12年間だった。でもここにたどり着いてくれて本当に良かった。4月からのライブ楽しみ!

ぴっち(@pitti2210

ドキュメンタリー好きですね。ここ数年凄く好きですね。

いつぞやかのラジオ番組での事であったか、岡村靖幸がこんなことを喋っていたのは。映画よりもドキュメンタリーを見る方が気楽である、そんな内容をその日は語っていた気がするのだが、本作を聴くと、「なるほど、そういう意味だったのか」と腑に落ちた。結論から先に言う。『幸福』という作品は岡村靖幸という人間が2011年に復帰をしてから現在まで、そして未来すらも描いたドキュメンタリーである。

雨の中で雷鳴が轟く音から始まるミディアム・テンポなファンク・ナンバー「できるだけ純情でいたい」から『幸福』という名のドキュメンタリーはスタートする。岡村靖幸という男からにじみ出るオトナのエロさと歌詞から感じられる「女子からモテたい。」「女子とSEXしたい。」という欲望に悶々としている、いわゆる“童貞さ”が絶妙なバランスで堪能できる楽曲ではあるのが、よくよく歌を聴くと

迷路から抜けられず 思わず目を閉じた
負けているが めげなくデートしたい もうメッチャむこうみず

と、いつになくネガティブな歌詞が目立つ。3度の逮捕後、2011年に復帰をした岡村靖幸の心情もこれに近かっただろうし、この曲の冒頭のように雷鳴とどろく大雨みたいな状況であったのではないだろうか。しかし、この雨は負の印象だけではなく、彼にとってはスタートの意味もある。それは彼が復帰後初めて立った2011年のSLSSWEET LOVE SHOWERの天気も雨であったからだ。心の空模様でありながらスタートでもある雨から始まる「できるだけ純情でいたい」には2011年の彼の姿が投影されているように僕は感じる。

また本作の特徴として9曲中6曲と既発曲が多いという点が挙げられる。2011年以降の岡村靖幸西寺郷太小出祐介といった自分より若いミュージシャンたちと手を組み「ビバナミダ」「愛はおしゃれじゃない」を制作し、その後「彼氏になって優しくなって」「ラブメッセージ」「ヘアー」とタッグを組まず個人で楽曲作りを行ってきた、という復帰からの4年半の歩みとしても捉える事ができる。そして、このドキュメンタリーの最後に「ぶーしゃかLOOP」を置くことで彼は私たちに1つのメッセージを送ろうとしたのではと考える。

「ぶーしゃかLOOP」というのは、元々ホームページを作成にあたりループ物のトラックを作って欲しいというリクエストで制作された楽曲であるのだが、この曲の歌詞は「家庭教師」「ア・チ・チ・チ」「聖書」「ターザンボーイ」と言った年代もアルバムもバラバラな楽曲の歌詞を集合して出来ている。さらにネットでアップされた物と比べると、本作では子供が歌う部分があり(これも個人的には「だいすき」のセルフ・オマージュだと思ってしまうのだが)サウンドがリミックスされて、ループ物のトラックが「ぶーしゃかLOOP」というダンス・ミュージックとして一つの楽曲として成立している。つまりは、この曲で岡村靖幸は“過去の自分を振り返りながらも、ループしていく日常の中で新しい一歩を踏みだしていく”という決意を私たちに表明してくれたのではないだろうか。

一人のアーティストの今までと現在、そして未来すらも捉えた『幸福』という名のドキュメンタリー。岡村靖幸が活動していく以上、この『幸福』は彼自身だけでなく、彼を取り巻くすべての人間に続いていく。

ゴリさん (@toyoki123

ki-ft ダラダラ人間の生活

アニソン好きと元アイドルオタがアニソンについて話したようですpart5 <水樹奈々というキメラ/あるいはその後の流れ>

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アニソンが好きすぎてアニソンシンガーにインタビューまでしてしまった草野、バンドとアイドルを長年追いかけ続けてきたかめ。とある事情でアニソン関係の記事を書いていた草野が、休憩がてらにかめ君へ後先考えずに絡み、何気ない会話から発展した。そしてかめくんは「どうしてアニソンはこういう音になったのか?」と草野に尋ねる。そして草野はゆっくりとアニソンの変容について話し始めた。

水樹奈々Elements Gardenは素晴らしい、そしてその後の世界線をどう生きるかなんだ!」

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