KOHH『UNTITLED』

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御徒町周辺はおもしろい。特にアメ横のカバン屋が。その店は閉店セールと称して定価数万円(らしい)カバンを3000円均一で売っている。そして実際に店を畳むのだが、しばらくすると何100メートルか離れた別のスペースで同じことをやり、それを幾度も繰り返す。実質同一店舗であることは呼び込みのおっちゃんでわかる。そのグレーな感じ。本物とパチモンが、大通りと風俗街が、蔦屋書店とCASTLE RECORDSが、さほど距離もない空間に併存しているあの感じがとても好きだ。

様々なものが並列であるこの状況は何もオフラインに限らず、むしろオンラインの方が加速している。ストリーミングサービスが顕著な例だろう。場はあらかじめ用意されていて、その中から情報や物品を自由に選べる。フィルタリングやエコーチェンバーなどの問題はあるが、そんなのはオフラインでも同じだ。そう考えると、この数十年で私たちは(見かけ上は)フラットにモノを見られるようになったと言えるのではないか。

KOHHの新作は《みんなでひとつ》に始まり《全然見た目は違うけど同じ》で終わる。そう本来、誰も彼も大した差はない。気分が良いときも悪いときもあるし、生まれれば終わるし、もっと言えば死んでようが心に生き続ける人はいるし、逆もまた然りの存在だ。そんな私たちが存在すること自体に大それた意味などなくすべてはフラット。対義語をあえてリリックにいくつも並べることで、そのメッセージ性がより強まる。

加えてKOHHが繰り返し唱えるのは、あらゆる物に価値を与えるのは人だということ。そして、そのレッテル貼りこそが心地よく生きていくためには重要だということだ。彼はたまたま御徒町で純金のチェーンを買いマルセル・デュシャン『泉』に放尿する夢を見ているが、各々が価値観を見出せさえすればメッキのチェーンを誇らしく見せつけても『泉』を傑作として崇めても問題はないのだ。そうしたポジティヴなレッテル貼りはヒップホップにおいて幾度も行われるが、レッテル貼りによるネガティヴな側面も描いたリリックや一貫して不穏なビートは、2019年の今だからこそ切実に、半ば狂気じみた色合いをもって響いてくる。 

昨年末から今年の始めにかけて「俺たちは現実の存在か?それとも虚構か?」というテーマのヒーロー映画がいくつか公開された。そうした価値判断を巡る問題への回答はいずれも「そんなの関係ねえ」というもの。それらの作品と同様、価値は勝手に見出せ、気に入らねえ価値観は蹴散らせとアジテートする本作が、「平らかに成る」時代としての「平成」の終わりに生み出されたのは偶然ではない。

 

 

まっつ(@HugAllMyF0128

Black Boboi『Agate』

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多分これは新しいタイプのバンドなのだと思う。

小林うてな、Julia Shortreed、ermhoi=Black Boboiは全員が曲を書き、トラックを作り、なおかつ歌うソロアーティストのグループだ。そういう意味では昨年発表されたJulien Baker、Phoebe Bridgers、Lucy Ducusのバンド=boygeniusに似ている。ただ、エレクトロニカアンビエント、アシッドフォークなどのジャンルから「バンドとは?」と思われそうだが、それでもこれはきっとバンドだ。音の取捨選択がシビアで、発想がソロの時よりもランダムだが、何より共同で音楽を作る喜びに満ちている。

ところで小林うてなはD.A.N.や蓮沼執太フィル参加時のスティールパン奏者としての側面が強く知られているが、ソロで活動する時はそれを大きく取り上げたりしない。というか使っていない。Balck Boboiの今作では「I'm just into」でスティールパンが使われているが、すべての楽曲で用いるといったルールはない。同様にJulia Shortreedのギターが必ず使われるわけでもない。大まかなクレジットしか確認できていないので詳細はわからないが、おそらく曲を作る上で全員がプロデューサーとして関わること以外にルールはなかったはず。

結果、自身のアイデンティティを強く主張することなく3人それぞれの要素が落ち着いた。逆説的ではあるのだが、3人がそれぞれ自らの持ち味を強く投影しようとはしなかった結果、よりそれぞれの個性がうまく共存できたのだ。実際にソロの楽曲を聴いた上で本作を聴くとそれぞれの持ち味が驚くほどうまく同居している。

妥協点を探ったというわけではなく、曲ごとにエッジが立ち、それでいてソロとは違う場所に到達する。コラボとはまた違った形の、全員がプロデューサーとしてのバンド、これが2019年の新たな水準になると思う。

 

 

ぴっち(@pitti2210

 

OTO TO TABIにおいでよ!

自分、今回はじめてOTO TO TABIに参加するんだけど、出演者が大変なことになってます!

なんじゃこりゃ!良すぎない?実は例年出演者が良くて気になっていてタイムラインの友だちの反応も良くてずっと参加したいと思ってたのね。で、第一弾の発表でiri、カネコアヤノ、小山田壮平、STUTS、Predawnでズドーンと来て、即チケットを買っちゃいました。

わからない人に説明すると、これ札幌のイベントです。3月2日というまだまだ寒さが厳しい時期に、しかも札幌芸術の森アートホールという札幌駅から地下鉄で15分の真駒内駅からさらにバスで18分というなかなかの場所でやります。いい場所だけど遠いです。ライジングよりは近いけど遠い。おまけに寒い。だから北海道在住の人以外にはなかなか勧めにくい(とはいえ気になった人は行ったほうがいいです。ラインナップがラインナップだから!)。

ところが今、北海道ふっこう割がやっているじゃないですか。道内在住だからいまいちわかってないのですが、3月31日まで延長したみたいだし、OTO TO TABIを観に来て翌日まで遊んでから帰るとかどうでしょう?交通付き宿泊なら一泊5000円から20000円まで補助金が出るみたいです。

というわけで、公式アカウントの方もそう言ってるし、ふっこう割を使ってOTO TO TABIにおいでよ!

ぴっち(@pitti2210