渋谷系特集 #9「渋谷系向けの日本語ラップ」
渋谷系を好む方々に知られてほしい日本語ラップグループを紹介します。
Small Circle Of Friends
「夕焼けのうた」
「Boys Wonder」
92年結成、ボーカルの武藤サツキと、ラップや作曲などをこなす東里起の2人を中心としたユニット。現在はDJ RIGOを含む3人組です。クラブボンが「波よせて」をカバーした際に知った方が多いのかもしれません。まだ日本語ラップの存在自体が広く認知されていない時代から、女性ボーカル+男性ラップという2000年代以降のJ-POP系のラップソングによくあるスタイルを当時から我が物としている貴重なミュージシャンです。今でも活動を続けていて、楽曲スタイルにブレを感じません。
いわゆる日本語ラップ系のミュージシャンとは離れた活動が多く、ピチカート・ファイヴのトリビュート盤にもHairというユニット名で参加したり、GRAPEVINEの曲をリミックスしたりもしているようですね。東里起の単独活動ではアニメ、サムライチャンプルーへの楽曲提供や、GOMES THE HITMAN、Clammbon、ナイス橋本、小泉今日子、Rie fuといったミュージシャンの作品に参加してます。
渋谷系が盛り上がっていた当時、このグループがどういうポジションだったのかはわかりませんが、TOKYO No.1 SOUL SETやスチャダラパー、かせきさいだぁ といった渋谷系にカテゴライズされる日本語ラップなアーティストに、どこか通じるものがあります。日本語を大事にしたゆるくて滑らかなラップや、ヒップホップにとらわれないジャンルレスなところとか。
WEEKEND
「ワールズエンド」
2007年結成し、2013年解散の自称、世田谷系ノスタルジックヒップホップポッセ。HELLOWORKSという名義で活動していましたが、彼らの尊敬するスチャダラパーらがTHE HELLO WORKSというユニットを組んだのを知り改名したそうです。まさかのモロ被り!
MCはモニカ、泉水マサチェリー、転校生の3人。インディーロックシーンと関わりが深く、MCモニカはVIDEOというバンドもやっていたり、泉水マサチェリーはEQというバンドのギターボーカルで柏原譲(Fishmans、Polaris)のユニットOTOUTAにも参加しています。清純派ヒップホップアイドルグループであるlyrical school/tengal6の作詞、作曲なんかも!
全国流通盤としてリリースしたアルバム2枚はリマスタリングエンジニアを柏原譲が担当。その他に自主制作盤として4枚のアルバムが存在します。
「Fight For Your Night」
こちらはシングル候補だったらしい最後に発表された曲「Fight For Your Night」。試聴はありませんが、tofubeats作の「SKIRT」などもオススメしたいです。自主盤収録の、前野健太やあだち麗三郎といったボーカリストとのコラボもいつか聴いてみたい。
Have a nice day!
「Are You ready?」
「フォーエバーヤング」
チープでジャンクでスカムでPOPでフレッシュで猥雑でナードでぶち上がってリアルで夢で!な集団。いやこれベタ褒めです。こんなの聴いたことないのに、なんか懐かしいし。アホみたいに素敵。希望も絶望も詰まったゴミ箱をひっくり返したような、なんか歪な表現しか出てこないですが…兎に角イイんです。渋谷系で括れるもんでもないのですが…上で紹介した二組の流れで出しておきたかった。
SUIKA
「Juicy Fruits Spicy Funky」
「Music Junkie」
2003年結成。メンバーはSMRYTRPS(Samurai Troops)というグループでメジャーデビューした経験もあるウッドベースの吟遊詩人ことタカツキ、ラップをするヨガのインストラクターのATOM、ポエトリーリーディングを操る女性詩人toto、キーボーディストのタケウチカズタケ(A Hundred Birds)、パーカッショニストの高橋結子(GOMES THE HITMANなど)の五人で活動してきましたが、2010年末にサザンをはじめとする様々なミュージシャンのサポートなどで多忙だった高橋結子が脱退。
ラップとポエトリーを生演奏に絡める唯一無二のヒップホップバンドで、人肌の温もりがある、楽し気な和やかさが魅力です。最近は2013年から2年連続で、年始にフリーダウンロード曲を配信したくらいしか目立った活動はしていませんが、ゆる〜くいつまでも活動し続けていってくれたらなと思います。
野崎りこん
『コンプレックスEP 』
2014年6月23日にYouTubeに投下された、ひとつの動画とフリーダウンロード用のURL。
これを聴かずにして今年の夏は来ない。ニコニコ動画で知名度を上げ、SIMI LABのOMSBの耳に留まり彼とのアルバムを現在制作中のMC、野崎りこん(ex.電波少女)。この人のセンスからはヒップホップ、エレクトロニカ、J-POP、アニソンなど様々な要素を感じるが、シューゲイザーという表現がイチバン似合うと思った。シューゲイザーなヒップホップ。agraph、Seihoといったトラックチョイスからもう見事!リリックの世界観はオタク的なユーモアと異次元、そして青春。それらをMAKKENZのような冷静なフローで描写し、時折メロディを浮遊させるバランスが生む中毒性ときたら…!
下は椎名林檎をサンプリングした曲です。他にも無料でたくさん公開されているので、気になる方は検索の鬼と化してディグってみてください!
「ハッピーエンド。」