ひとり上手と呼ばないで

鰻が好きなんですけどね。最近はほら。鰻が高騰してますでしょう。お高く止まってるでしょう。こないだスーパー行ったら蒲焼一枚で2180円だってよ。なんだその値段。馬鹿じゃねぇの。2180円あれば聖水オプション頼めるわ。お高くとまった女王様の聖水がよ。「この豚野郎!」なんて罵られてよ。最高だなオイ。

まぁいいっすわ。庶民は吉野家の鰻丼と相場は決まっております。颯爽と入店。いざ注文。女は頷いて伝票を厨房へと届ける。万を持して待つこと数分。なぜか目の前に豚丼が運ばれてきたので万を持して混乱した。わたし驚いてしまって、叫びもせず、助けもしなかった。ただ怖くて泣きました。わたしの敵はわたしです……。「ごゆっくりどうぞ」とか言われましても。いやいや。縦の意図はあなたで横の意図はわたしっていうか、あの、注文と違うんですが。アイコンタクトで必死に訴える。目と目で通じ合う、そういう仲に……なれるはずもなく、あえなく微笑がえしで返り討ち。罠にかかった……うなぎ食べたい……。おかしくって涙が出そう……。

やがて俺の思考は真理へと辿り着く。「うなどん」。「ぶたどん」。ははぁん。そゆこと。つまりあの女。あいつが俺の完璧な計画を。俺の鰻丼を。眠らない体を。すべて欲しがる欲望を。大げさに言うのならばきっとそういう事。へぇ。やってくれるじゃないの。澄ました顔してよ。それとも何か。俺には豚丼の方がお似合いってか。そういうことか。 なぁ。お高く止まりやがって。澄ました表情の裏では俺のことを「この豚野郎!」なんて罵ってるんだろう?最高だなオイ。

 

 

ぼうず(@bowz0721