ONE OK ROCK『35xxxv』
最近いろいろ問題を起こしている彼らだけど、デビュー当初に比べたらかわいいものだよ。
2月に発売されたニューアルバムだけど、意外に僕の周りでは賛否両論だった。amazonや各メディアのレビューでは軒並み好意的だったが、知り合いの中では評判が悪かった。むしろ彼らが好んでワンオクを聴いていたことに驚いたのだが、その口ぶりが気になって逆に興味が湧いた。僕自身は前作『人生x僕=』のタイミングで聴きはじめ、アルバムは好意的に聴いていた。ただ、昨年観たライジングサンでのライブが凄すぎて、むしろレコーディング音源がその質に追い付いていないと思っていた。
そして前作から約2年で届けられたアルバムは、今までよりも格段にアメリカナイズされた音になっていた。
以前からエモ、オルタナ、ポップ・パンクあたりの音を自分たちなりに鳴らしていた彼らだが、今回のアルバムでスケール感が格段に増した。アメリカでのレコーディングは彼らが聴いていたであろう先人たちの音により一層近づけた。「それなら洋楽を聴けばいい」という人もいるだろうが、2015年の今の音を鳴らしているのでこのアルバムを聴いたほうが早い。
それよりもむしろ、アメリカナイズすることで彼らの音楽がとても洗練されたのではないだろうか。
ワンオクの音楽の中で特徴的なのはその言葉選びだったと思う。前作のタイトル『人生×僕=』、それ以前の「完全感覚Dreamer」といった、名前の時点で眉をひそめられかねないものだった。しかし前作から日本語の割合が減り、そして今作では英詞においても言葉選びが格段に厳しくなった。海外進出を意図した戦略とも言えるが、むしろ彼らは元々英語的な感覚を持ち、英語的な言葉選びをし、そして英語的な楽曲を作っていたのではないのだろうか。
「Heartache」で時折歌われる日本語はとても美しい。
固く結んだその結び目は
強く引けば引くほどに
解けなくなって離れれなくなった
今は辛いよ それが辛いよ すぐ忘れたいよ 君を
彼らの音楽そのものが高いレベルに到達し、また海外の助けを得ることでとても洋楽的なアルバムに仕上がったのだと思う。
そして何よりも素晴らしいのは、そのような洋楽の衣を纏いながら、ワンオク本来のメロディが少しも損なわれていないことだ。このアルバムは洋楽的だが、同時に彼らの文脈にも矛盾していない。粗がなくなり、より遠くの人へ届く音楽になった。彼らに興味がなかった人や、彼らのことを知らなかった人、日本語がわからない人、そして英語さえもわからない人にまで届くはず。
かつてアメリカでレコーディングを敢行し、自分たちのサウンドをブラッシュアップしようと試みた日本のアーティストは数多いたが、これほど幸福な出会いはない。アメリカン・ロックの系譜とワンオク自身の方向性が一致した奇跡的なアルバムだと思う。
ぴっち(@pitti2210)