the chef cooks me『RGBとその真ん中』

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the chef cooks meが今年2月にリリースしたニューシングルのレビューです。かなり時間が経ってしまいましたが、今からでも聴くきっかけになれば。これからものんびりやっていこうと思います。

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例えば「東京にあって新潟にないものは何か」と言われたら、大きなビル、人、仕事、モノ、機会。僕はきっとこう答えると思う。

「視野が狭い」とよく言われます。「この場所にいてまた難儀なことを」と僕は思うのだけれど、ありとあらゆるモノやコトが溢れかえっているここ東京で、目移りしてしまって「視野を広く持て」というのは中々どうして出来そうでできないものだ。

新潟にいた時、僕は日々車で通学をしていた。片道30分の簡単な道のり。田圃道から大きな道路を走り、大学まで。GWを迎える頃には田植えも真っ盛りで一面緑の絨毯だし、秋の収穫時期には、見渡す限りの黄金色だ。最近その類の風景をとんと見ていない。今思えば、そこにあった景色というのは、やはりここ東京にそうそうあるものではないことに気付かされる。

息づく天然色は美しい(キャンバスに幻を)

ふと空を見上げる。真っ青な青空に映える白い雲。東京は空が狭いと誰かが言ったけれど、なんだここでも見えるじゃないか。大きなビルが立ち並ぶこの街で、シルバーに塗られたそれらとフレッシュなブルーが入り混じるハイコントラストな色あい。これもまた息づく天然色のひとつ、かな。

この曲を聴ききながら街を歩いていると、どうも都会は殺伐としている、やっぱり自然豊かな田舎がいいとか思いがち。だけど、ふと自分のまわりを見てみると、なんだナチュラルカラーの天然色はこんなとこにもあったじゃないかと、少しほっとする。場所じゃないね、音楽も色も。日常がいかにカラフルか。そのことに気づかせてくれる4曲だ。

 


かんぞう(@canzou

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感情を色で表すとしたら、どんな色を選ぶだろうか。本作のラストを飾る「キャンバスに幻を」には、聴き手にそれを問う歌詞がある。

色で分けた僕らの世界の 悲しみはどんな色?
この目の中飛び込んだ景色 僕だけのコントラスト
色で満ちた僕らの世界の 喜びはどんな色?
その瞼に焼き付いた色は まぼろしじゃない

EPの表題となっている「RGB」とは、光の三原色であるRed、Green、Blueの頭文字であり、その3色を適当な割合で混ぜ合わせると、白になる。『RGBとその真ん中』には、各色をモチーフにした楽曲が収録されている。

雨の街をモチーフにした1曲目の「Paint It Blue」。ここでの青は雨と青春、その人の芯となるもののモチーフとして描かれる。憂鬱な雨の情景を吹き飛ばすアッパーなサウンドになっている。2曲目の「ふぞろいの赤」では、赤をひとの様々なパーツにあてはめられる。プリミティブなリズムの上に、「真っ赤な目」「赤い血の僕ら」「脈打つ」「愛」「ハート」といった赤を連想させるワードがのる。身体にも情動にも、赤はこんなに染みついているのかと気付かされる。3曲目「エメラルド」は、深夜の風景とそこでの回想を描く。本作の中で最も遅いリズムの上に乗せて、真夜中の孤独としんとした静けさの優しさを描く。

そして、4曲目「キャンバスに幻を」の冒頭には以下の様な歌詞がある。

この目のずっと奥にどれだけの色が映った
怖いほどに綺麗だった鮮やか無数のシーン
未だ思いだすような濁り淀んだシーン
可視光線だけで生命の確かさ照らせない

人は記憶があって、初めてその人になる。自分のこの目でみたものはもちろん、誰かの主観を通したものであっても自分だけの記憶とリンクするからだ。そのことを踏まえて、冒頭の問いに答えたい。私が悲しみを表現するならば、青を使う。涙を書く時は青を使う。でも、喜びを表現するにも、青を使う。晴れが好きな私は、幸福な記憶と青空が結びついていることが多い。野外ライブ、海、散歩道。私の大好きなものに青は欠かせない。これは、私独自の回路で色と記憶を結び付けたもの。すなわち、私だけの宝物だ。

 


rinko(@rinkoenjoji

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