ネットの音楽オタクが選んだ2020年のベストアルバム 150→101

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2020年は忘れることのできない年になりました。新型コロナウイルスの流行で様々な行動が制限され、僕らは自粛を余儀なくされました。生活からライブが遠のき、多くのフェスが中止になり、音楽に携わるあらゆる方々が苦境に追いやられました。

そのような状況のせいなのか今回の集計に参加してくれる方々が例年より多かったです。音楽が人々の苦境の支えになったのかはわかりません。でも僕が常に音楽に支えられている事実は変わらず、昨年も例年同様お世話になったことをつくづく実感します。

その恩返しと言うつもりはないですし、むしろ序列化は作り手に対する冒涜のような気がしないでもないのですが、それでも多くの人の協力で得られたこのデータが回り回って新しい出会いとなり、多くの人に作品が聴かれることを願い、性懲りもなくこんな記事を作りました。

過去最高となる675人のデータを用いて作られた2020年のベストアルバム150枚です。ストリーミングへのリンク、プレイリスト、そして有志によるレビューもついています。「2020年のアルバムは2020年のうちに聴いておきたい」なんて言わず、すばらしいものはいつ聴いてもすばらしいので、ぜひ興味を持った作品を聴いてみてください。(ぴっち)

 

このランキングについて
  • ネットの音楽オタクが選んだベストアルバムは音楽だいすきクラブ、及びそのメンバー等の特定の誰かが選んで作ったものではありません。
  • Twitterハッシュタグ、募集記事のコメント欄に寄せられたものを集計しています。
  • 675人分のデータを集計しました。
  • 募集期間は2020年12月1日から31日の間です。
  • 順位は「点数、投票者数、乱数」の順で構成されています。
  • 「点数が同じかつ投票者数も同じ」場合、乱数を発生させて順位づけしています。
  • そのため細かい順位に深い意味はありません。気にしすぎないでください。
  • 150位以内はすべて7人以上に挙げられたものです。
  • レビューは有志によるものです。100字以上500字以内ディス無しでやっています。
  • レビューは随時追加しています。興味がある方は@pitti2210にリプかDMをください

 

150. Yaeji『What We Drew 우리가 그려왔던』

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1993年生まれの韓国系アメリカ人、本名KathyYaeji Lee。ニューヨークで生まれアトランタに越し、小学生の時に韓国に渡った。日本の学校に通う時期もあった。その後アメリカに戻り、カーネギーメロン大学に入る。在学中にDJをはじめ、2017年に2枚のEPをリリースした。それらが僕は大好きだったのだが、その頃と比較してハウス色が薄まった。今作では彼女のボーカルが前面に出ているが、言葉や歌唱、ラップを素材として扱っている印象がある。ダンスミュージックにしてはボーカルが多いのだが、一方でポップミュージックの範疇でもないような不思議な感覚に陥る。

Charli XCXの楽曲に参加したこともあったが、今作のフューチャリングは彼女の身内で固められている。『What We Drew』というタイトル通り「私たちが描いてきたこと」、つまり現在までの彼女とその仲間たちを描いているのだろう。英語、韓国語、日本語が入り乱れ、ハウスともヒップホップともつかない構成は本当に独特としか言いようがない。

ぴっち(@pitti2210

 

149. 香取慎吾『20200101』

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グループではなくひとりでありながら、なぜかゲストがふんだんに参加するところがやはり他とは少し違うというか、音楽だけをやってきた人とは異なる発想に思える。それはやはり彼にとって音楽は楽しいものという意識があるのではないか。いやアイドルを何十年もやってきた人に何をいまさら言ってるんだと自分でも思うが、これほどまでにカッコつけずに、かといって自分を切り売りもしすぎず、作り手と聴き手の最大幸福に近づけるのは、まあそういう気分だったという可能性もあるけど、根っからのスターだなあと思う。

ぴっち(@pitti2210

 

148. Arca『KiCk i』

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147. HONNE『no song without you』

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146. 角銅真実『oar

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145. Terrace Martin, Robert Glasper, 9th Wonder, Kamasi Washington『Dinner Party』

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144. Choir Boy『Gathering Swans』

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2020年リリースのこの2ndアルバムでChoir Boyはより多くのファンを獲得することに成功した。前作の1stでは「明るいシンセポップな新人」という印象だった。今作ではギターが入ったり、音のバラエティが増した。根本的には前作にあった影のような部分が濃くなり、残響感がよく残るドリーミーな仕上がりになった。暗いアルバムにはなってない。絶妙に前回のポップさも引き継いでる。じっと浮遊感に浸ることも、打ち込みの音に体を揺らすこともできる。

コロナが流行る前には所属レーベル(Dais Records)の仲間であるDrab Majestyの来日があった。このアルバムを聴けばレーベルを引っ張るエースクラスまで一気に昇格したと思えるのではないか。

ジュン(@h8_wa

 

143. Bruno Major『To Let A Good Thing Die』

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142. 岡田拓郎『Morning Sun』

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141. Four Tet『Sixteen Oceans』

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140. GoGo Penguin『GoGo Penguin』

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139. Beach Bunny『Honeymoon』

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恋愛至上主義だと受け止められかねないので安易な断言は避けるべきかもしれないが、少なくても音楽においてラブソング以上の題材は存在しない。「アイラブユー」「あなたが好き」たったそれだけのことを説明するためにどれだけの人類はバリエーションを生み出してきたか。やがてその願いは時代とともに「セックスしたい」「愛されたい」とまた別の欲求と結びつき、共に音楽も発展してきたのだが、このシカゴのBeach Bunnyはエモ、パワーポップにど直球の「あなたが好き」を乗せて僕らに届ける。

新しさはない。だけどどうしてこんなにも胸が締め付けられ、多くの人たちを笑顔にするのか。あー負けだ負けだ。みんなもこれを聴いて負けようよ。最高だから(ここで考えるのをやめた)。

ぴっち(@pitti2210) 

 

138. envy『The Fallen Crimson』

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137. Doves『The Universal Want』

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136. THE KEBABS『THE KEBABS』

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UNISON SQUARE GARDENのベーシスト田淵智也a flood of circleのギターボーカル佐々木亮介が中心となって結成されたピカピカでガサガサなロックンロールバンド。元々はピロウズの映画のために結成されたという経緯や、突拍子もないバンド名からも偶発性や衝動性を重視しているのは明らか。「デビュー盤がライブ盤ってサイコーだな」という動機でライブ盤として出されたというのも何だかワクワクするし、実際その荒削りなエネルギーをむしゃむしゃ味わえる。

「すごくやばい」だとか「猿でもできる」だとか、曲タイトル通り伝えたいことは皆無なバンドなのだが声に出してみると何だか楽しいし、大きい声で歌う喜びとかジャンジャカ音を鳴らす気持ち良さを純粋に追求する姿は今とても貴重な存在に思える。頭を空っぽにしながら快楽中枢に流れ込んでくる痛快なアンセムに身を委ねれば、どういうわけだか気持ちがぐぐっと上がっていく。意味を考えない、文脈を考えない、シーンを考えない。考えない音楽ってありがたい。

月の人(@ShapeMoon
 

135. Rodrigo Carazo『Octgono』

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アルゼンチンの音楽シーン注目SSW、ロドリゴ・カラソの3作目。南米だけでなく、イスラエルやフランスなど色んな国からのゲストが多く参加している。穏やかで暖かい雰囲気のフォルクローレなりフォークトロニカ風味の音が、凝ったアプローチで1曲1曲軽快に進んでゆく。多彩なスキャット、コーラスに魅了され楽しげで心が晴れる。日々の生活からかけ離れた、ここではないどこか遠い地へ想いを馳せる気分になってしまう、清涼感のある作品。

ラニワにて、わど。(@wadledy)

 

134. あいみょん『おいしいパスタがあると聞いて』

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3rdアルバム。気持ちは普段着のままスターになった彼女。大躍進を果たしてもなお、のびやかなメロディラインは自然体で歌う事象のスケールが広くなったわけではない。多くのタイアップオーダーにも彼女のファインダー越しの世界だけを描くし、ふとした恋心や暮らしのエピソードにこそ最も描くべきものがあるという書き手としての矜恃を感じる。

《どんな未来がこちらを覗いているかな》と歌う「ハルノヒ」がリリースされた2019年春からは想像もできない不安定な未来に辿り着いた2020年。今あらためて聴く「ハルノヒ」にはより切々とした祈りが宿る。例えばおいしいパスタを食べに行こうとちょこっと約束したことが、その日まで生きる意味になったりすると実感せざるを得ない日々が増えた。このアルバムは、そんな約束の蓄積こそが明日を創り出すという当たり前を冷笑することなく歌に込め続けた記録だ。些細だけどとびっきり大事な魔法が彼女の音楽にはまぶされている。

月の人(@ShapeMoon

 

133. Grimes『Miss Anthropocene』

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132. Hayley Williams『Petals For Armor』

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131. ゲスの極み乙女。『ストリーミング、CD、レコード』

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5thアルバム。ピアノを主体としたスピーディーで情報量の多いポップスが昨今のシーンを賑わせている土壌はゲスの極み乙女。のブレイクがきっかけになった部分も多くあると思うが、そこに再度チューニングを合わせることはなく、独自の先鋭化は続く。テンポを落としたモダンなリズムメイクの中、ストリングスやブラスが飛び交うリッチな音像。各楽器と歌声の絡み合いによって生まれる未知のサウンド、その最新型だ。

「私以外も私」や「キラーボールをもう1度」といった快進撃の渦中にあった2010年代前期のヒット曲をモチーフとした新曲たちも過去を回顧する音作りはされておらず、ドレスチェンジを繰り返すバンドのスタンスをはっきりと提示。時代の顔つきやあらゆる出来事をモチーフにしながら、川谷絵音は聴衆を踊らせ続ける。2020年代の幕開けに忍び寄る、どこか冷徹で毒々しいダンスナンバーたち。

月の人(@ShapeMoon

 

130. Shohei Takagi Parallela Botanica『Triptych

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129. downy『第七作品集無題』

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128. Halsey『Manic』

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127. yonige『健全な社会』

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大阪出身の2人組ロックバンド、2年半ぶりの2ndフルアルバム。2018年のEPから漂っていた平熱な生活感を中核に据え、ナチュラルな方向転換に成功した。初期は苛烈な感情をぶつけることがyonigeのカラーだったが今回は淡々と気持ちの揺れ/機微を描写するのに徹している。中には激しさを感じるものもあるけれど、もうすでにほとぼりが冷めた後のような温度感。

牛丸ありさ(Vo/Gt)の歌声は柔らかさを湛えているのだが、それと同時に真顔で突き放すような怖さも含んであるのが今回の世界観にぴったり合う。ASIAN KUNG-FU GENRATIONのGotchプロデュースによるM1、M2の奥行きあるサウンドや、元LILI LIMITの土器大洋がサポートギターとして参加するなど、音色の面でも繊細に作り込み孤独な気分を表現。どこにいたって聴けばひとりぼっちになれる作品だ。

月の人(@ShapeMoon

 

126. Nothing『The Great Dismal』

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2020年のシューゲイザーのアルバムとしては文句なしのベストアルバムだろう。

2019年の来日ツアーでは、Cloakroomのメンバーを新しくギターとして加えた新体制で周っていたが、今作はその新体制での最初のアルバムとなる。前作に比べるとさらに重苦しくなった。静と動のコントラストはより極まる。アルペジオの響きの揺らぎの美しさが増し、バーストするギターの音は潰れてしまうほど歪む。ある種のノイズミュージックの味さえする。その一方でボーカルは伸びやか感じるような録音がされている。美麗と混沌が同居する、真っ向勝負のアルバム。ただのシューゲイザーで終わらない満足感が味わえるのは、彼らがハードコアやエモにもルーツを持っている独自の美学があるからだ。

2020年はShinerとHumの復活とアルバムリリース、ビーバドゥービーのブレイクがあり、ベテランと新人からも轟音オルタナの波が押し寄せてきた。Nothingとともにますます目が離せない。 

ジュン(@h8_wa

 

125. Jacob Collier『Djesse Vol.3』

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124. くるり『thaw』

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『僕の住んでいた街』以来久しぶりの、アルバム未収録曲を集めた作品。くるりのおもしろいところといえば、例えば「京都の大学生」のような曲だ。シングルのB面の、言ってしまえばオマケ的なものに、自分たちが今表現したいものを詰め込む。いつしか定番になってしまう。そういう自由さをくるりらしさと捉えるなら、まさにこの『thaw』だったり、『僕の住んでいた街』なのだ。未収録曲集こそ、くるりが詰まっているといえる。『thaw』は『僕の住んでいた街2』とも言える。くるりの深すぎて広すぎて自由すぎるアーティスト性を体感する素晴らしいアルバムの再誕だ。

くるりは未曾有の年となった2020年も創作意欲は尽きることなく、『thaw』のほかには「益荒男さん」、「大阪万博」もリリース。ここへきてもなお、進化していく底力には驚嘆するばかりだ。

ジュン(@h8_wa

 

123. Ariana Grande『Positions』

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自身のライヴで起きたテロ行為、恋人との破局や死別、それらを引き起こした原因はお前にあるという謂れのない誹謗中傷。多くのネガティヴな出来事を乗り越えた彼女が《今夜、わたしは淫らになりたい》と新たなパートナーに囁いてるの、なんかすげぇいいなって、よかったなって思うんです。

まっつ(@HugAllMyF0128

 

122. Tigran Hamasyan『The Call Within』

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121. Kllo『Maybe We Could』

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120. AC/DC『POWER UP』

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119. Gotch『Lives By The Sea』

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ASIAN KUNG-FU GENERATIONのフロントマン、3rdアルバム。多くの参加ミュージシャン、フィーチャリングゲストを招き、ソロというよりもその音で結びついたコミュニティから贈られた一作だ。人が生む音、人が放つ言葉を適材適所に配置したトラックの中でGotch自身の歌声もかつてない程に数多くの表情を見せる。話し声とラップとポエトリーリーディングと歌声、その境界を軽やかに行き来しながら、軽やかなステップを踏んでいるよう。

可視化された分断といつの間にか負ってしまった傷を見つめながら諦めと絶望に暮れることが格段に増えた。もはや思考して抗うこと自体を麻痺させられたかのような意識の中でさえ、このアルバムは人肌のように心を温めていく。様々な人々が隣り合って音楽を響かせる光景が目に浮かび、共にこの世界に在るという事実を実感できる。《この世は生きるに値する》という言葉をお守りにだってできる。まだこの世界を信じたいと思えるのだ。

月の人(@ShapeMoon

 

118. 秋山黄色『From DROPOUT』

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栃木県出身の24歳。メジャーデビューアルバム『From DROPOUT』はタイトルの通り、ドロップアウト育ちの青年が初期衝動に乗り、悶々とした感情の爆発にリスナーを巻き込む。違和感への反抗、納得いくまで俺と向き合ってみろよというような、同じ学年にいたら強烈な「こいつやべー」感。だけどクールに飾らずに、泥くさく剥き出しのままロックを奏でる。

正直、彼のことを語れるほどまだ知らない。2019年に放送されたNHK「SONGS」で、尾崎豊トリビュート回の出演を目撃した。原曲と溶けあいながら、いまの感覚で大胆にリアレンジを施した「シェリー」を披露し、YouTubeでの彼を知らない私は、このタイミングで秋山黄色というアーティストを認識した。

腹の据わった咆哮のようなボーカルが、キャッチーなメロディセンスに怒りにキレまくっている歌詞を乗せ、ストレートなロックを歌う。アーバンでおしゃれなアレンジを施したり、要素の少ない音づくりだったり、フェスやライブ、配信受けに特化した音楽が飽和するなか、令和時代のロックは秋山黄色が先頭に立つ。

やや(@mewmewl7

 

117. Awesome City Club『Grow apart』

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「オシャレなシティポップを鳴らす5人組バンド」のイメージをお持ちの方も多いかと思うが、本作リリース前後にリズム隊2人が脱退している。また、今年に入って行われたライブは本作の制作にも関わったサポートメンバーが参加したのだが、フロントメンバーの2人は歌に専念し、一方コーラス担当まで参加した大所帯のバンドと様変わりしていた。

バンドアンサンブルの良さ、打ちこみのサウンドの良さを両方味わえるという意味でこの編成はおもしろいが、1stアルバムから継続視聴しているリスナーとして気になったのは男女ツインボーカルの掛け合いの複雑さ、そしてコーラスを含めた歌の比重である。単に和声が美しくて綺麗とか歌詞が素敵、と言った感想だけではなく、例えば男女2人の心のすれ違いや掛け合いを2人のパート分けと歌詞上の細かい表現によりドラマチックに演じることができている。グループの構造変化により表現がよりリッチになるのはよい傾向であると思う。バンドの内情はリスナーサイドとして知る由もないが、ひとまず続けていくことを選択したオーサムの今後に期待したい。

はちくん(@Hat_chyu

 

116. BTS『BE』

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「Dynamite」はもちろん、Chic「Good Times」のベースラインが未だ輝き続ける証明にもなった「Telepathy」からも感じられる、70〜80年代ディスコミュージックの香り。世界中を飛び回りながら、自分が自分であることの大切さとそれが果たせないやるせなさの両面を伝え続けてきたBTSの歴史は、ディスコのそれとそのまま重なる。つまり、両者の邂逅が必然だったことは火を見るよりも明らか。自分が情けなくなる日をそのままドキュメントとして刻むリリックには胸が痛む。

しかしだからこそ、ラストに配置された「Dynamite」で思いっきり自己肯定してみせる幸福感は何物にも変えがたい。必要なのは、ちょっとしたファンクとソウルだけ。たったそれだけで、誰かが貼るレッテルも自身に課したペルソナも、きっと飛び越えていけるはずなのだ。

まっつ(@HugAllMyF0128

 

思えば2020年はとても厳しい一年だった。世界各地で行われたロックダウンで人々の自由は奪われて経済は停滞、癒しとなるはずのエンターテイメントも大きな制約を受け、かつてない程にメンタルヘルスの問題がフォーカスされることにもなった。

BTSにとってこの一年は“若者に向けられる社会的偏見・抑圧を防ぎ、彼らと自分たちの音楽を守り抜く”という想いを込めたグループ名のように、COVID-19が引き起こすメンタルヘルスの問題に立ち向かい続けた年だったのではないだろうか。そしてリリースされた『BE』。この作品を通じて彼らが伝えてくれたのは「長く続く人生の中でどんなに辛い時期があったとしてもそれを受けて入れて進んでいけば、巡り巡って必ず良いこともまたやってくる。それまでお互い手と手を取り合って共に進んでいこう」というポジティブで優しいメッセージ。

そして最後の最後に届けられる「Dynamite」ではそれまでのメッセージを全部携えたうえで“小粋なファンクとソウルで世界を照らそう!”と呼び掛けて身体だけでなく心まで躍らせてくれる。気が付けば少しはにかみながら身体を揺らす僕たちがいる。この年にこのアルバムが在ってくれて本当によかった。

Ai(@Ai_Tkgk

 

115. Idles『Ultra Mono』

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なにがアイドル楽曲大賞じゃ!!全部コレがアイドル楽曲大賞だ!!!巨大なピンクの玉を喰らえ!!!ほら、投げてやるからさ……。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

114. 宮本浩次『宮本、独歩。』

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エレファントカシマシのフロントマンによるソロ1stアルバム。椎名林檎東京スカパラダイスオーケストラとのコラボレーションを行った2018年以降、自身の歌声と向き合いながらコンスタントにリリースを重ねてきたソロワークのコレクションだ。40年近く続けてきたエレカシの外へと飛び出した宮本浩次の型にはまらないクリエイティビティが炸裂し続ける51分。

ワンジャンルに特化した個性際立つ楽曲が集まった本作をまとめ上げるのはやはり彼の底知れない表現力だ。「冬の花」では歌謡曲に根差した艶っぽい歌い回しを聴かせ、「解き放て、我らが新時代」ではラップやポエトリーリーディングに接近した口調で野性味溢れる声を響かせ、ダンサンブルなファンクナンバー「きみに会いたい -Dance with you-」ではキザでしなやかなボーカルを乗せる。ポップチューだろうとパンクナンバーだろうと、どんなタイプの楽曲であれ縦横無尽に魂を躍動させ、音楽と共にあらんとする。宮本浩次のボーカリストとしてのショーケースとしての側面もあると思う。

月の人(@ShapeMoon

 

113. WONK『EYES』

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112. NNAMDI『BRAT』

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ジャケ写からもうインパクト大の、混沌としたポップさと多少の毒気のような怪しさを纏わせて注目してしまうし、その中身自体もひと口に言えないほどのジャンルを縦横無尽に飛び回る自由な世界だった。エクスペリメンタルなヒップホップ、マスロックあたりをルーツとしているらしくて、そこが綺麗に交わるだけでもおもしろく、ありとあらゆるジャンルをソウルミュージックへと凝縮する手腕の凄さに圧倒される。

一聴しただけでは理解が追いつかない複雑さが苦痛ではなく、音のパーツはどこを切り取っても耳馴染みが良くて適度な甘さが心地よい。まるで居心地悪そうだった遊園地が、慣れてしまうと、先入観とは裏腹に思いの外楽しめる……いや、それどころかリピーターになるような、新しい自分の場所を見つけるきっかけのような音楽体験になる。その感覚は、曲の組み合わせの妙にも大きく委ねられる。アルバムというフォーマット自体も、やはり愛おしく思える良質なバランスだ。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

111. Machine Gun Kelly『Tickets To My Downfall』

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110. Bombay Bicycle Club『Everything Else Has Gone Wrong』

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109. Jhene Aiko『Chilombo』

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108. ストレイテナー『Applause』

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2年半ぶりの11thアルバム。結成22年を迎え、年々ホリエアツシ(Vo/Gt)の歌心は豊かな包容力持つようになり、明瞭なポップソングを次々と作り出すバンドになってきたが、本作でもその方向性は健在。バンドとしてのアティチュードも、誰かを思ってきゅんとなるような気持ちも、分け隔てなくオープンな言葉で歌う姿はすっかり定着しつつある。

中盤には久々にマイナーコード中心の攻撃的な楽曲が並ぶブロックが用意されている。不穏な楽曲も多いが、どれもかつての幻想小説タッチではなく、この時代を生きる上での言葉が書き残されている。クリスマスの世界で『君に会いたい》と歌う「No Cut」と、カーラジオから亡きミュージシャンの歌を聴く「混ぜれば黒になる絵の具」の2曲に収まっていく曲順も胸が締め付けられる。2020年を生きたストレイテナーから、2020年を生きた僕らの日々に贈られた目一杯の喝采

月の人(@ShapeMoon
 

 

107. kZm『DISTORTION

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結論から書くと、もし「日本のバンドやフェスが好きだけど、ヒップホップも開拓していきたい」と言う人が居たならば、初めに聴く作品として本作はかなりおすすめである。

小袋斉彬や野田洋一郎、と言ったわかりやすいネームバリューだけでなく、トラックもブルックリン系のインディーロックの雰囲気がある曲やアコースティックギターを用いた牧歌的でもある曲などあり、ここ数年ヒップホップで多用されていたトラップのリズムやハードコアなビートに耳が慣れていなくても受け止めやすいと感じる。

そしてkZmの楽曲はとてもメロディックだ。それは前作のリード曲「Dream Chaser feat. BIM」からずっと光るkZmの武器である。これは本人だけではなく、トータルプロデュースをしているYENTOWNの盟友Chaki Zulu、そして客演のアーティストの力量も込みでの話なのだが、特に今作はより繊細かつ絶妙な質感のトラックとボーカルが味わえるし、なによりかっこいい。

はちくん(@Hat_chyu

 

106. Jeff Parker『Suite for Max Brown』

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105. a flood of circle『2020』

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フラッドの特徴は、歴史のあるロックと昨今の邦楽ロックの掛け合わせ、言うならば温故知新の楽しさがある部分である。

例えばサウンド面で言えば、爆音のギターとしゃがれたボーカルという、これぞガレージロックというべき要素を持つバンドである。一方でフェスブーム、踊れる四つ打ちの音楽の氾濫などを諸々消化した結果、脳天を貫かれるような初期衝動と衝撃があるのにどこか聴き馴染みがあり楽しい音楽でもある。

歌詞の面でも特徴的で、フラッドはよく読むとどんな困難にも負けない芯の強さを感じる、前向きで元気の出る歌詞である。反体制、カウンターカルチャーという音楽の特性上あまりマッチしないかと思いきや、むしろフラッドの持つハイテンションさやパワーと相まって、楽曲の持つ推進力をさらに高めているようだった。

はちくん(@Hat_chyu

 

104. パスピエ『synonym』

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11年目の6thアルバム。ご時世に即してリモート制作中心となり、ドラムパートは全曲打ち込み。その結果、かつてなく自由なリズムパターンが炸裂し、音のカットアップや加工によって綿密に構築されたサウンドが出来上がった。これまでの10年間を丸ごとリファレンスとして用い、従来のパスピエらしさを新たな形状にデザインした斬新さと懐かしさが同居する作品だ。

斬新さの最たるものは、楽器の演奏譜面を回文化し、"逆再生すると同じトラック"が流れる仕掛け(TENET!)を施した「oto」だろう。驚くべきアイデアを確実に具象化するその技量に感服するばかり。懐かしさは「プラットホーム」に薫る。あの名曲「最終電車」から7年、同じかあるいはそれ以上にピュアな想いを紡ぐ一曲だ。どんなスタイルも過去に置き去りにすることなく、それでも常に先を見据える。類義語を意味するタイトルは、ちょっと違う、でも確かにパスピエ、なこのアルバムを見事に言い当てている。

月の人(@ShapeMoon

 

103. AutechreSign

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102. ずっと真夜中でいいのに。『朗らかな皮膚とて不服』

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多様なジャンルが混ざり合ったミクスチャーサウンドを主にギターロックベースで展開する最新系ポップスの筆頭。フルアルバムサイズでは無くとも濃厚で、ボカロ以降な雰囲気や若い世代のサブカル観云々だけでは語りきれない情報量の中に、しっかりエモーショナルな熱も、純粋な音楽の幅広さも楽しく緻密に詰め込まれていて、歴史が鳴らしている音と言える。それくらい説得力がある。目新しさが先行して、色眼鏡で見られてるのではと勝手に懸念してしまう。その一方で自分にも言い聞かせる。大丈夫、ちゃんと意欲的に練られたグッドミュージック。過度に身構えずに、この新たな息吹に身を任せていよう。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

101. Kaede『秋の惑星、ハートはナイトブルー』

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いわゆるシティポップと呼ばれる音楽性ではあるが、この質感、このテイストの音楽って実はNegicco本隊ではありそうで無かった。過去のNegiccoで言えば、本来の「王道アイドル」な場面を経て『ティー・フォー・スリー』(16)あたりからはAORなどの音楽性を参照して一気に大人っぽさが溢れ出した。

とはいえ本作を聴くに、サウンドプロデュースを行ったLampの染谷太陽とウワノソラの角谷博栄、そしてバンドメンバーとの関係性が、主従関係とか提供する/される、という関係を超えてもう誰がどう見ても「元々そういうバンドでずっとやってきました」くらいの風格を感じてひれ伏しそう。 

はちくん(@Hat_chyu

 

ネットの音楽オタクが選んだ2020年のベストアルバム 150→101

101. Kaede『秋の惑星、ハートはナイトブルー』
102. ずっと真夜中でいいのに。『朗らかな皮膚とて不服』
103. AutechreSign
104. パスピエ『synonym』
105. a flood of circle『2020』
106. Jeff Parker『Suite for Max Brown』
107. kZm『DISTORTION
108. ストレイテナー『Applause』
109. Jhene Aiko『Chilombo』
110. Bombay Bicycle Club『Everything Else Has Gone Wrong』
111. Machine Gun Kelly『Tickets To My Downfall』
112. NNAMDI『BRAT』
113. WONK『EYES』
114. 宮本浩次『宮本、独歩。』
115. Idles『Ultra Mono』
116. BTS『BE』
117. Awesome City Club『Grow apart』
118. 秋山黄色『From DROPOUT』
119. Gotch『Lives By The Sea』
120. AC/DC『POWER UP』
121. Kllo『Maybe We Could』
122. Tigran Hamasyan『The Call Within』
123. Ariana Grande『Positions』
124. くるり『thaw』
125. Jacob Collier『Djesse Vol.3』
126. Nothing『The Great Dismal』
127. yonige『健全な社会』
128. Halsey『Manic』
129. downy『第七作品集無題』
130. Shohei Takagi Parallela Botanica『Triptych
131. ゲスの極み乙女。『ストリーミング、CD、レコード』
132. Hayley Williams『Petals For Armor』
133. Grimes『Miss Anthropocene』
134. あいみょん『おいしいパスタがあると聞いて』
135. Rodrigo Carazo『Octgono』
136. THE KEBABS『THE KEBABS』
137. Doves『The Universal Want』
138. envy『The Fallen Crimson』
139. Beach Bunny『Honeymoon』
140. GoGo Penguin『GoGo Penguin』
141. Four Tet『Sixteen Oceans』
142. 岡田拓郎『Morning Sun』
143. Bruno Major『To Let A Good Thing Die』
144. Choir Boy『Gathering Swans』
145. Terrace Martin, Robert Glasper, 9th Wonder, Kamasi Washington『Dinner Party』
146. 角銅真実『oar
147. HONNE『no song without you』
148. Arca『KiCk i』
149. 香取慎吾『20200101』
150. Yaeji『What We Drew 우리가 그려왔던』

 

プレイリスト