ネットの音楽オタクが選んだ2020年のベストアルバム 100→51

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2020年は忘れることのできない年になりました。新型コロナウイルスの流行で様々な行動が制限され、僕らは自粛を余儀なくされました。生活からライブが遠のき、多くのフェスが中止になり、音楽に携わるあらゆる方々が苦境に追いやられました。

そのような状況のせいなのか、今年は集計に参加してくれる方々が例年より多かったです。音楽が人々の苦境の支えになったのかはわかりません。でも僕らが常に音楽に支えられている事実は変わらず、昨年も例年同様お世話になったことをつくづく実感します。

その恩返しとは微塵も思わないですし、むしろ序列化は作り手に対する裏切りような気がしないでもないのですが、それでもこの多くの人の協力で得られたデータが回り回って新しい出会いとなり、より多くの人に作品が聴かれることを願い、性懲りもなくこんな記事を作っています。

過去最高となる675人のデータを用いて作られた2020年のベストアルバム150枚です。ストリーミングへのリンク、プレイリスト、そして有志によるレビューもついています。「去年のアルバムは去年のうちに聴いておきたい」なんて言わず、すばらしいものはいつ聴いてもすばらしいので、ぜひ興味を持った作品を聴いてみてください。

2日目です。楽しんでいただければ!(ぴっち)

 

このランキングについて
  • ネットの音楽オタクが選んだベストアルバムは音楽だいすきクラブ、及びそのメンバー等の特定の誰かが選んで作ったものではありません。
  • Twitterハッシュタグ、募集記事のコメント欄に寄せられたものを集計しています。
  • 675人分のデータを集計しました。
  • 募集期間は2020年12月1日から31日の間です。
  • 順位は「点数、投票者数、乱数」の順で構成されています。
  • 「点数が同じかつ投票者数も同じ」場合、乱数を発生させて順位づけしています。
  • そのため細かい順位に深い意味はありません。気にしすぎないでください。
  • 150位以内はすべて7人以上に挙げられたものです。
  • レビューは有志によるものです。100字以上500字以内ディス無しでやっています。
  • レビューは随時追加しています。興味がある方は@pitti2210にリプかDMをください

 

150→101はこちら

ongakudaisukiclub.hateblo.jp

 

100. Peter CottonTale『CATCH』

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99. 踊ってばかりの国『私は月には行かないだろう』

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98. 環ROY『Anyway』

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これまでいろんなビートメーカーと共作してきたが、初の全編セルフプロデュースということでどんな作品になるか想像がつかなかった。蓋を開けてみれば、アグレッシブでバリエーションに富んでいて、ラップとの調和も抜群の、正に自給自足なマッチ具合で見事な名作だった。ずいぶん久しぶりに感じてしまうキレキレなフロウも堪能できる。最近までの所謂ヒップホップや日本語ラップを超越した響きがある。ジャンルレスなバランスの作品たちがもつポップさは引き継ぎながら、近年のラップブームの流れでラップ好きになった者や日本語ラップから離れかけている古参リスナー、そして雑食なミュージックラバーまで、幅広くおススメできるラップアルバム名作です。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

97. TENDRE『LIFE LESS LONELY』

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少しナードで祝祭感のある音像の良さをあらためて確認できた作品。2010年代半ばあたりからのトレンドっぽいネオソウルみのあるR&Bのフィーリングが終始漂いつつ、以前より堂々とポップス然としてきたように思う。かつてデビューEPでThundercatのカバー曲を収録した時からもう完璧なまでに舗装された道があり、計画通りにしっかり整備された職人性がここにある。余韻を残しすぎないうちに何度でも堪能できるような、ホットスナックの快楽を持つ曲たちの集合体で、しかしそれは使い捨てでは無い味わい深さが誰かのいつかの生活の断片と密にリンクしたりして、他愛のない細やかな共感を生む。日常を照らすBGMとして、なかなかにちょうどいい明度ではないか。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

96. さとうもか 『GLINTS』

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敢えてのローファイなエレポップや、トラップビートなどヒップホップ的音像もリンクした、最近っぽさを感じる、華やかで洒落っ気のある渋谷系、シティポップ(というと想像しやすいサウンド)の順当なアップデート……と一括りにもできず、「愛ゆえに」などでは堂々たるガレージロック、オルタナ的なサウンドが展開されるなど、手数の多い様々なバリエーションで新鮮な音を構築して歌謡曲な聴き心地へと落とし込んでいる。そのどれもが強力な存在感のボーカルに、過度に着飾らないナチュラルな歌詞とメロディ。性別問わず、秘めたる乙女心のようなものにガツンと刺さる、パワフルでマジカルな10種類の甘さのアイスクリームを堪能できるアルバム。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

95. Ty Dolla $ign『Featuring Ty Dolla $ign』

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スーパーユーティリティプレイヤー、あるいは単なる出会い厨。自身のスタイルを表現したと思しきタイトルは、ボースティングとも自虐とも取れてなんとなくお茶目だ。

しかしそれ以上に本作からは「繋がりを切らさない」という意思表示が強く感じ取れる。R. KellyプロデュースのBillie Piper「G.H.E.T.T.O.U.T」をサンプリングした「By Yourself」からは(作り手にどれほど看過できない性質があったとしても)隠せないルーツが。Anderson .PaakにThundercatにJhené Aiko、FutureやYoung Thug、Kanye Westなど、ジャズ〜R&B〜ヒップホップを横断して顔役を揃えたその布陣には、現行音楽シーンの豊穣さが。黒人への暴力を告発する「Real Life」からは、未来を脅かす者への憤りがそれぞれ息づいている。なかば腰砕けなタイトルは、その実しっかり体を表していた。このアルバムこそ文化のバトンそのもの。

そんなシリアスな読み解きもできる本作だが、一貫したメロウなムードのおかげでダラ聴きもできる。タイ・ダラー・サインだけに。

まっつ(@HugAllMyF0128

 

94. Caribou『Suddenly』

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93. 田中ヤコブ『おさきにどうぞ』

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バンド家主のメンバーやnever young beachのサポートギターとしても活動するシンガーソングライターの1stアルバム。ネバヤンの配信ライブで初めてプレイを観たときは髭面でソンブレロを被っていたのでどえらく奇抜な人なんだろうなぁ、と勝手に思っていたのだけどアルバムを聞いてびっくり。フォーキーで素朴なウェルメイドソングばかりだ。時折、豪快なギターワークやバイオリンの旋律で起伏をつけつつも、歌声ののどかさは一貫している。快晴の真っ昼間にドライブしながら聴くのにうってつけ。

よく見かけるはずの言葉たちが連なりが立ち上げる見知らぬ風景。彼の書く詩にはそんな見知らぬノスタルジーの中でどこか身に覚えのある感情が静かに渦巻く。ぼーっとしてるうちに不意に涙がこぼれてきちゃうような、焦ってウワーってなってるうちにいつの間にか解けていく緊張感のような。諦めてるわけじゃないけど、険しい顔もしない。フラットな暮らしをちょっと劇的に見せてくれるのだ。

月の人(@ShapeMoon

 

92. 冥丁(Meitei)『古風』

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和・雅・風情・情緒といったような趣のデザインで徹底的に構築されたサンプリング主体のビートミュージック。アンビエントエレクトロニカ、そして最近定着したようなLo-Fi Hip Hopと共鳴するようなものだが、アンビエントと言うにはビートミュージックとしてしっかりと機能しすぎている部分もあり、インストではあるがサンプリングされた声や音色からは歌心を溢れさせている。自分の趣味と繋げると、TempleATS周辺のビートメーカーを彷彿とさせる。

近年は、このようなインストアルバム作品が名盤として挙げられることは現状まだあまり無い傾向があるように思う。特にこういったランキング企画では挙がりにくそうで、そんな中で語られるべくして世に広まった、2020年代のインストアルバムの象徴的な作品として認知されそうな名作。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

91. Wool & The Pants『Wool In The Pool』

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2019年にリリースされ、2020年にCD化された作品。アンダーグラウンドと呼ばれていたような尖った空気を吐き出している。ミニマルなサウンドでファンクやダブ、ヒップホップ、ポストパンクなどのような要素を抽出し、じゃがたらの曲のカバーを含んで25分くらい。その中に、意識的に音楽を掘っていないと辿り着けないようなアイデアのおもしろさがこれでもかと閉じ込められている。

モコモコとした音質でやるせなく寂しげなリリックを口ずさむことが、やけに美しい。簡素でチープな音にセンシティブな意欲が詰まっており、退廃的かつロマンチックな音像が浮かんでくる。このムードが、昨今の大半の音楽に足りないものとして大事にされるべき、必要な味わいであるといえる。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

90. Slow Pulp『Moveys』

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89. 浦上想起『音楽と密談』

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88. KOHH『worst』

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解散するKOHHというバンドの、(最初の解散前の)最終作という捉え方でいいだろうか。幕引きは爽やかで呆気ない。軽々とヒップホップやトラップミュージックの枠組みを飛び越えて、表現の限りを尽くしてきた先の境地。鼻歌のように、あくまでも至ってシンプルなやり口で。この自伝の続きを聴ける日は、案外近そうだ。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

キャンディーズの普通の女の子宣言をアルバム一枚かけてやっているような作品だ。2010年代のラップシーンにおいてひとつの象徴になってしまったKOHHから人間・千葉雄喜に還っていく、その軌跡がここにある。このアルバムを「普通の人間」たらしめている点は数多く存在するが、何より目立つのは恋人や祖母など、身近な個人への愛情を歌う曲の多さ。聴き手に広くメッセージを発していた前作『Untitled』とは対照的だ。また本作は喜びと悲しみ、本能と理性、幸せと不幸せといった両極端なモチーフが並ぶのも特徴。パートナーがいるにも関わらず惹かれ合う姿を描いた「John and Yoko」や《幸せすぎ》を懺悔する「シアワセ(worst)」は本作を端的に表している。

製作時期の異なる曲をまとめたという構成やアコギの弾き語り曲が唐突に挟まれるディティール含め、無軌道ですらある本作。そこから見出せるのは多面体としての一個人でしかない。あまりにパーソナルかつカラッとした手触りのため、本作はコロナ禍など全く意に介さない。ラップアルバムとしての到達点ではないが、ある男のドキュメントとしては最高傑作。これが終わりで、きっと始まり。

まっつ(@HugAllMyF0128

 

87. Blake Mills『Mutable Set』

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86. Nothing But Thieves『Moral Panic』

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冒頭「Unperson」の随所に立ち現れる、痙攣するようなギターの鳴り。その音はしきりに「赦しが足りねぇ」と囁く。2020年において、どこにも属さず融和を求めることは非常に難しかった。政治思想による分断はいよいよ修復不可能になり、オンライン・オフライン問わず毎日どこかで火の手が上がっている。どれだけ異なる価値観に耐えられるかを「多様性」の基準とするならば、誰もそんなもの求めちゃいない。

ロックミュージシャンをはじめ、かつて多くのアーティストが掲げた理想が木っ端のごとく弾け飛んだ世界で、Nothing But Thievesは全方位に毒を吐く。どこにも属さず、属せず、日常になってしまった戦場から。《祭壇や憲法の後ろに隠れているのがわかるぞ お前はMAGAハットを被った歩く矛盾だ》《だけどリベラルもリベラルなんかじゃなくて、あいつらと同じ毒舌なだけ 仲間だと示しでもしなければ、意見なんて言わせちゃもらえない》。

まっつ(@HugAllMyF0128

 

85. PUNPEE『The Sofakingdom』

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新しい時代の日本のポップスの在り方を先導するラップヒーローが、不動のラップスターKREVAと相まみえた記念すべきEP。華やかなヒップホップ性を振りまいて絶大な人気を示す者の名は、あくまでも一般人である事を念頭に置いたような、身近で親しみやすい視点を欠かさない証明である。その容姿もキャラも、以前にコラボした星野源や、動画サイトで人気の者たちのように、まるで知人のように共感できる存在と通じるものがある。このタイミングでキャリアを重ねてここまで辿り着いた庶民的なスターと、天才肌に見られるカリスマ的存在KREVAとコラボする話題性の演出が完璧。エンターテイナー2人の魅せ方の巧さ。もちろん、ちゃんと曲の強度が凄まじい。ポップとしてもヒップホップとしても中途半端じゃなくて、両方に振り切っている。名実共に日本を代表するMCの地位を固め、まだ先の未来を感じるEP。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

84. Jonsi『Shiver』

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ソロとしては10年ぶり、Sigur Rós『Kveikur』から数えても約7年ぶりのリリース。PC MusicのA.G. Cookがプロデュースを務めた本作には、静謐さよりも緊張が、浮遊感よりも地を這う感覚が息づいている。ピアノの使用がほとんど見られず、代わりにデジタルクワイアや細かなビートやノイズが全編を覆ったことで楽曲内の深みと奥行き、そしてポップさが増した。Robynを迎えた「Salt Licorice」は彼のディスコグラフィ上でも類を見ないくらいに、言ってしまえばわかりやすい高揚感を得られる一曲。

製作陣の影響が大きいことは百も承知だが、本作はポストロックというよりハイパーポップの手触りがある。ここまでモダナイズされた音像を、まさか彼の音楽から受け取るとは。その驚きたるや、誇張抜きで2020年トップクラス。

まっつ(@HugAllMyF0128

 

83. The Flaming Lips『American Head』

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82. The Microphones『Microphones in 2020』

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81. 竹内アンナ『MATOUSIC』

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ソウルやディスコファンクなど、節々にあるルーツを掘り下げても楽しいし、完全に雰囲気だけ捉えてオシャレな音楽として聴き流しても楽しい。先に音源を聴いてそんな印象を抱き、すごく気に入って、それにしても妙なタイトルだと思っていたら本人曰く「身に纏う音楽="MATOUSIC"という造語」とのことで、なるほど!

と。なぜならトータルで聴いてみた時にとてもカテゴライズ困難だとわかり、そして曲それぞれが色彩豊かでバリエーションに富んだ作品だとわかるからだ。強いて言えばポップミュージックであるくらいか。さわやかでもあり、バッキバキに踊れる曲もあり、エモーショナルでもある。だからその日の気分によって浸りたい感情を変えることができるくらい魅力が溢れている。それは衣装ケースにスーツもTシャツもジャージスウェットも入っていて、TPOで使い分けるようなもの、と考えるとすごく合点がいった。

ちなみに、竹内さんのライブ映像もぜひ観てほしい。僕の感想は「MIYAVIくらいすごい」です。

はちくん(@Hat_chyu

 

80. Laura Marling『Song For Our Daughter』

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「私たちの娘に向けた歌」というタイトルではあるが、Lauraには子どもはおらず、これはあくまで架空の設定だ。表題曲も子守唄のような穏やかな曲調でありながら「親から子への愛」を歌うのではなく、「この世の残酷さ」を説いた上で「どうにかそれを乗り越えよ」と彼女らしい激励(なのか?)になっている。まさに我が子を千尋の谷に落とす獅子そのものだが、このような激しさがまるで遠く離れた世界の出来事かのように、彼女の歌と音楽は美しさと穏やかさに包まれている。

コロナのパンデミック下において聴く人の気晴らしになればと4ヶ月リリースが早められた稀有なアルバムだが、この世の無情さや残酷さと隣合わせにあるやさしさ、穏やかさは確かに、いや間違いなく僕の救いになった。

ぴっち(@pitti2210

 

79. Deftones『Ohms』

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78. Base Ball Bear『C3』

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8枚目のフルアルバム。2018年から本格的に追求し始めた3ピースのバンドサウンドで組み上げた基礎固めの一枚。ギター、ドラム、ベース、それぞれのパーツの骨太さを実感できる強靭なアンサンブルで、これまで以上に多面的な音楽のおもしろさを提示している。"盛らずに削る"という洗練の果てで獲得した、骨格の美しさで魅せるロックミュージックたち。

所謂"青春"的なイメージはもはやベボベの背景として溶け込み、小出裕介(Vo/Gt)が新たに目を向けたのがBase Ball Bearそのもの、またはそれを取り巻くこの世界、というのだから驚きである。常に様々な興味関心を検証・編集し、楽曲へと落とし込む小出がベボベ自身を研究対象として一枚のアルバムに仕上げてしまうなんて。だからバンドの歴史をラップにするし、ライブの喜びをあの四つ打ちに乗せる。そして辿り着くのが、物事を伝える本質を歌った「Cross Words」と人生の旅情を高らかに鳴らす「風来」なのがとても頼もしいと思う。彼らは瑞々しいままで、僕らと生涯を共にしてくれるロックバンドになったのだ。

月の人(@ShapeMoon

 

恐れていた事態がついに起きた。4人組ギターロックバンドとしての活動をChapter1、『C2』からメンバー脱退以降のサポートを入れた活動がChapter2とすると、スリーピースバンドとしてのChapter3がついに始まってしまった。

『C3』収録の12曲中8曲既発、残り4曲も後にEPとしてリリースした。表題曲数曲を残し、未発表曲を準備する時間はあったのに、である。これは実験である。つまり、4曲×3枚のEPという単位で曲を聞く場合と、曲順を再編成した12曲入りのアルバム場合で印象は変わるのか、という実験である。さらに、ラップやチャップマンスティック、3人のボーカルの掛け合いなどバンド史になかった要素をどのように楽曲に組み込むか、という実験である。当の本人たちからすれば、良い状態にあるバンドの姿をより早く世に披露したかったのかもしれない。

かつて宇多丸は自身のラジオで、青春とは「可能性が開かれている状態」と定義した。青春時代の当事者として作られた象徴が『C』なら、まさに今こそ新人スリーピースバンドにとっての青春であり、その象徴こそ『C3』である。

はちくん(@Hat_chyu

 

77. Bob Dylan『Rough and Rowedy Ways』

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76. Sorry『925』

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キレキレに尖ったバンドが切磋琢磨するようなサウスロンドンで、一際得体の知れない不気味なポップさのあるロックミュージックは、陳腐な型に囚われていない言葉通りのオルタナティブ。ポストパンクやベッドルームポップな音も巻き込んで、所謂闇鍋状態。穏やかじゃないぜ!!!

ラニワにて、わど。 @wadledy

 

75. ヨルシカ『盗作』

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私が小学生の頃に夢中になったアニメの主題歌に《いつでも心を満たすのは 空の青さと風の声》という一節があった。大人になってからも折に触れてこの一節を思い出して、深読みする。何かを成し遂げた達成感や他者から承認される感慨を得たとしても、いずれ虚しさがやってきて、心が満たされなくなる時が来るかもしれない。それでも、ただなんとなく美しいと思える情景は、私達を裏切らずにじんわりとした感情で抱擁してくれるのだと思う。

オリジナリティとは何かをテーマにした本作においてコンポーザーのn-bunaは、どれだけ作品を生み出しても心の穴が満たされないことに苦悩する架空のアーティストを描く。一方で、そもそも人間自体が同じような設計情報をコピーして生まれた模造品かもしれないと示唆する。そして空の青さや風のように、ただなんとなく美しい情景に対峙して生まれる感情が、私たちの心の大切な部分を形成していることを提示する。

そんな物語として命を宿された楽曲を自然に歌いこなすsuisのボーカルは迫力と表現力と透明度を増し、ヨルシカには希代のユニットとしての凄みが宿りはじめた。

カラカル@Apteryx_lwk

 

74. Taylor Swift『evermore』

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『folklore』のレアトラック集ともいえる『evermore』を愛する理由は、まさにそのB面らしさにある。『folklore』は音楽性を変えても、これまでのテイラーらしさ、つまりあらゆる人の言語を飛び越えて共有できる、王道ポップスの枠に収まることを望むアルバムだ。対して『evermore』では、彼女はひとりの人間としてぽつんと地上に存在する。穏やかなようでありながら、心に渦巻く孤独感、もうあの頃には引き返せない喪失感、いまは耐え忍ぼうという諦念。そのような低温な態度が、素晴らしい共演者を得て、こちらもまた言語や国境を飛び越え、最高の音楽に昇華されている。

『evermore』を聴いて、テイラーも同じ現実、同じ世界を生きている、このパンデミックが世界中で同時に起きている現実の出来事なのだと、テレビやSNSの情報を超え、やっと五感で実感した。同時に、この現実を音楽作品に真空パッケージできることが、稀代のポップ・ミュージックの女王の真の力なのだと思い知らされた。今後2020年を思い出そうとする時、私は『evermore』を再生するのだろう。

やや(@mewmewl7

 

73. 君島大空『縫層』

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ロックリバイバル的なサウンドと最新鋭のポップセンスが混ぜ合わさったような、轟音と静寂を操る能力者の2作目。人間味を損なわないままに才気走った曲ばかりで、手を替え品を替え心を抉り圧倒される。

アンビエントに幕を開ける「旅」の入り口から、無邪気にワクワク。「傘の中の手」の煌びやかな音色に救済を感じ、「笑止」で激しめのロックとヒップホップ的ともいえるリズムのフォークトロニカが目まぐるしく移り変わり興奮しっぱなし。アヴァンポップ、チェンバーポップすら感じる音が巧みにばら撒かれて、あっという間に疾走するポップチューン「散瞳」。SoundCloudのデモから打ち震えた「火傷に雨」は丁寧にブラッシュアップされ、シューゲイザーなテイストに歌心が強調され、メロの心地良さが際立つ。「縫層」はドラマティックな展開が4分半の中に綺麗に描かれ、「花曇」で淑やかなアコースティック…からの弾けるような盛り上がりがあって、嵐の後の静けさを残して終わってゆく。一曲毎にアルバム一枚分のカロリーがある、というと大袈裟か。誇張とも思わないが。すべて、永遠に新鮮なまま色褪せる気配無し。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

72. マカロニえんぴつ『hope』

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ヤングアダルト」における《夜を越えるための唄が死なないように》という祈りが、切に響き渡ることになった2020年。数多くのオンラインイベントでこの曲を奏でた彼らは、世界中の部屋に浮かんだ寄る辺のない思いと呼応し、更に特別なバンドとなった。2ndアルバム『hope』は決して分かりやすい希望を歌った作品ではない。どうにもならないこと、どうにかしたいこと、できることできないことの狭間で暴れる自意識の中に僅かに瞬いた光を大事に抱きしめるような歌ばかり。彼らがこの時代に求められたのは必然とも言える。

結成8年のキャリアで培った技を駆使し、終始一筋縄ではいかないアレンジが飛び出す演奏面も聴きごたえたっぷりだが、はっとり(Vo/Gt)の歌声の威力にも圧倒される。張り上げた時の歌声が湛えるやるせなさや諦念、そっと囁く時に滲む優しさと感傷。芯がないことを意味するバンド名ゆえ、多彩な楽曲に手を伸ばし血肉としてきたわけだが、このバンドにはずっとはっとりの歌声という極太の芯があるのだと強く実感する。混沌を打ち抜く、強烈なシャウトだ。

月の人(@ShapeMoon

 

僕と君、朝と夜、人とヒト、水曜日と金曜日、絶望と愛情、神様と僕ら、無理と無茶、現代と未来、すばらしい日々とさよならばかりの日々。韻を踏みながら、対比の言葉たちとクリアな音たちが歯切れ良く通っていく。《僕らはまだまだ それぞれだけれどね》の通り、愛おしい人とわかり合えないことも、理想と現実が食い違っていることも、人生はすれ違うことばかりだ。だけどこのアルバムのジャケットにある赤と青、ほんの少し重なったところだけが人肌みたいにあたたかく、こういう瞬間を「希望」というんだと思う。

はやしこ(@rinco_hys

 

71. Crack Cloud『Pain Olympics』

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70. Waxahatchee『Saint Cloud』

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69. Joji『Nector』

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68. Gorillaz『Song Machine, Season One:Strange Timez』

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67. Sports Team『Deep Down Happy』

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66. Lianne La Havas『Lianne La Havas』

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65. SuiseiNoboAz『3020』

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「滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ」

今から約千年前、大納言公任によって詠まれ百人一首にも収録されているこの歌。かつてあった滝が今は無い事実と、それでも滝の名(評判)は今なお確かに存在して聞こえてくる、という情景を詠んだ素晴らしい一首だ。

現代に生きる僕が千年前の滝に想いを馳せられるのは、千年前の人が詠んだ歌が現代に受け継がれていて、千年以上前に存在した滝の名(評判)が現代まで届いているから。きっと百人一首は歌そのものだけではなく、歌を素晴らしいと感じたたくさんの人の想いも乗せて受け継がれてきたのだと思う。ここに無い、ここにいない、そんなものや場所や人を、とても愛おしいと思う。そんな胸の空洞から音楽が生まれるのだと、SuiseiNoboAzは歌った。千年前に紡がれた言葉が現代に届き、新しい想いを乗せて未来へと託されていく。

「永遠というのは人の想いだ。人の想いこそが永遠であり、不滅なんだよ」

大納言公任歌が詠まれてから約900年後。大正時代からは、そんな声が聞こえてくる。3020年に向けて、僕らはどんな想いを繋いでいけるのだろうか。約束の場所まで、あと999年だ。

ハタショー(@hatasyo5

 

64. Sault『Untitled(Black Is)』

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63. 藤原さくら『SUPERMARKET』

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3年ぶりの3rdアルバムはタイトル通り多彩なラインナップの楽曲が並ぶ。あらゆる界隈のミュージシャンと共鳴し合いながら、様々なジャンルと溶け合っている。VaVaとトラックを練り上げた「生活」ではしっかりと押韻しながら、ラップと歌の中間のような滑らかなボーカルで2020年春の気怠げな暮らしに根差したリリックを展開。冨田恵一とのタッグで制作された「コンクール」ではミステリアスな緊張感の中でエッジーな言葉を引き出してある。

"アコースティックギターの弾き語り"というパブリックイメージは2018年のEP『green』『red』の時点で取り払ってはいたが、そこから更なる変化を軽やかに成し遂げた1作である。馴染みのアレンジャーとでさえサウンドの刷新を図っているのも、自分を定位置に留めない彼女の強い意志を感じる。従来のシンガーソングライター像すら鮮やかに更新してしまいそうな意義深い一作だ。

月の人(@ShapeMoon

 

62. Charli XCX『how i’m feeling now』

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「今、私が感じてるいる事」というこのタイトル。コロナ禍の感情を露わにしたcharliの新作は2020年にいちばん時代感を感じた作品だった。自粛生活中に全て宅録で作り上げたこの作品。恋人がベッドルームで撮影したというアートワーク。荒々しさが伝わる雑なノイズから始まる1曲目の「pink diamond」、恋人との感情を赤裸々に歌う「forever」、近い人ほど敵になってしまうかもしれないという心境の「enemy」、全ての曲がコロナ禍の時代の歪みによる苦しみと愛の表現を曲として主張している。

コレがニューノーマル時代のポップスかと頭をガツンと撃ち抜かれた。

Y(@y_3588

 

61. 岡村靖幸『操』

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9曲という収録数はいつもと同じなのに、既発曲が5曲もあるのは結構多い印象だった。とくに「ステップアップLOVE」は3年半前の曲でこちとら死ぬほど聴いているというのに、曲間の繋ぎ方やアレンジが激しく手を加えられており、これまたかっこよく響いているのがこのアルバムの流れの良さだ。

あとこれは余談ですけど、公式サイトによるとタイトル『操』の意味は「自分の意志、主義を貫いて、誘惑や困難に負けないこと」とある。これを岡村ちゃんが言うの、だいぶ心がそわそわする。

はちくん(@Hat_chyu

 

60. Vaundy『Strobo』

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「東京」というタイトルがつく曲は、なんでこんなにも繊細でさみしい曲が多いんだろうと常々思っていた。華やかさの裏にある「何か」を感じ取ることが共通見解であるようで。

Vaundyが歌う《僕たちは》《僕ら》という言葉に、その感覚と似たような裏側を感じていた。言葉にするなら冷静さ、孤独。みんな、をひとまとめに表現しても、どんなに歌い上げても、平均体感温度が低くて、ひとりの個体であるさまがいっそう浮かび上がってくるような。その裏腹さがフックになっている気がした。

シンガーソングライター、というひとたちに対しては、歌い手そのものが真ん中にいるんだと知らずのうちに思い込んでいた。初めて聞いた時は「僕は今日も」が人物のど真ん中にいるんだと思って、何度も聴くにつれ「life hack」のほうかもなと思い直したりして、今でも聴くたびにこのアルバムのど真ん中は誰だ、って混乱する。おそらくこの疑問は不要で、第三者のような冷静さが、いろんな個々を自由奔放にすり抜けていくんだと思う。体温が低ければどこにでも行ける、なんだか2020年、今、だなあ。

はやしこ(@rinco_hys

 

59. Childish Gambino『3.15.20』

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58. Tom Misch & Yussef Dayes『What Kinda Music』

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57. Run The Jewels『RTJ4』

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56. iri『Sparkle』

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「Sparkle」聴きました?今回は表題曲だけでいいです。聴いてない?なら聴いてください。待ってるから。なんなら歌詞を表示して聴いてみてください。トラックメイカーはKan Sanoです。かっこいいので損はさせません。アルバムも大体かっこいいので聴きましょう。毎年進化しています。

聴きました?どんな情景が思い浮かびましたか?それじゃ僕が思い浮かんだ情景をここに記します。

この曲の主人公はいつもより少し早く目を覚ましました。といっても8時ぐらいでしょう。夜更し人間なのです。夢を見ていたし、昨日は少し悲しいこともありました。でも寝たらきれいサッパリ、完全に忘れました。そして周囲が主人公をおだてて、また忙しない日常生活に戻ります。大体は機嫌がいいのです。いろいろあったけどそんなのは車に乗って窓を開けて風を浴びると大体どうでもよくなります。昔を少し思い出しつつ、ドライブで上機嫌。歌だって歌っちゃいます。これ、すごくうちのばあちゃんっぽいなあと思いながら聴きました。最強なんですよ、彼女。

ぴっち(@pitti2210

 

55. Moses Sumney『grae』

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54. Kelly Lee Owens『Inner Song』

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ドリームポップ×エレクトロニカという最高な組み合わせのKellyの新作は漂う浮遊感がとても心地良い。インストと歌モノが交互に入る事でアルバムを通して気持ちが良く、流して聴いていられる。サブスクの影響の中、アルバムを通して聴くことが減った今でも『Inner Song』は通して聴きたい名盤だ。

一曲だけ選ぶなら代表曲の「On」の心地良さは間違いなく2020ベストソング。しかしながら「Melt!」の奥深くまで沈む感じの心地よさも捨てがたい。極限までシンプルでミニマルな造りのこのアルバムは2020年、一番センスを感じた。

Y(@y_3588

 

53. chelmico『maze』

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2020年のchelmicoは「映像研に手を出すな!」の「Easy Breezy」で華やかに幕が上がり、最高傑作『maze』と辿り着いた。どう考えてもブレイク期で露出も増やしていたのだが、 続けざまに出したシングルはわかりにくかったし(アルバムを聴いてようやくわかった)、リリース後はコロナでツアーは行われず、配信ライブも体調不良で中止になった。打つ手は多いのにどこか散漫な印象がついてまわる運のない一年だった。このアルバムも支持、理解されたとは言い難い。それは彼女らの濃い部分も出ていたからだ。まるで過去のトラウマを爆発させたような「ごはんだよ」のリリックは、長谷川白紙のトラックと合わさり過去最高に強度をchelmicoにもたらした。

だからここからだよ。あと2年でコロナは終わる。そうなった時に、僕らは最高のロケーションでchelmicoの最高のお祭りに参加できるはず。その未来を僕は確信している。(そしてそこではきっとdance doesn't matter…)。 

ぴっち(@pitti2210

 

52. 銀杏BOYZ『ねえみんな大好きだよ』

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全編ノイズにまみれ僕らを戸惑わせた前作から6年。再生ボタンを押すとまたノイズが聴こえてきて身構えたのも束の間、ハードコアが畳み込まれる。既発のシングルはアレンジも変わり、何と言ってもこれぞ銀杏BOYZ的な号泣シンガロングパンクナンバー「GOD SAVE THE わーるど」の変わりよう。ただ流れ的にすべてが上手くハマっていてYUKIの登場なんかは当時からのファンからしたら胸が熱くなってしまう。

そして全編において言える事、今の峯田の歌について確実に言える事はオナマシイノマーさんの病気そして死がめちゃくちゃ影響している。今作はイノマーさんに聴かせたかったろうし、イノマーさんへ向けて歌ってる曲もある。そこまでパーソナルな感情はただ聴いてるだけではわからないくらいすばらしいアルバムなんだけど、峯田とイノマーさんの関係を昔から見てきた人からするとめちゃくちゃ伝わってくる。

《ぼくが生きるまで、きみは死なないで》(アーメン・ザーメン・メリーチェイン)

ブックレットからはみ出した歌詞が物語っている。

文人@FesNatsu
 

定時制高校を舞台に、青春と恋を描いたキングオブコント2020決勝での空気階段のネタ。あのネタは本当にすばらしかった。恋。それは他人から見れば、ノイズとして切り捨てられてしまうものかもしれない。でも、そのノイズは誰かと誰かの間では愛の囁きに。そして誰かと誰かの間では、生きていることを肯定する言葉になる。空気階段キングオブコント決勝という場で、「恋は素晴らしい」と高らかに宣言したのである。その姿勢には、自身のラジオ「空気階段の踊り場」で社会から弾かれた人達を愛し続け、汚くも眩しい恋の姿を見せてくれた2人だからこその説得力に満ちていた。

6年振りに発表された銀杏BOYZの新作を最初に聴いた時、最初に頭に浮かんだのが空気階段とこのコントだった。鈴木もぐら演じるハルトの「お前だよ」が聞き取れたように、ノイズの中でも確かに聞こえる音と想いがこのアルバムには詰まっている。

銀杏BOYZを聴くと、いつだって銀杏BOYZは僕であり、あなたである、なんて言いたくなってしまう。それを象徴するかのように、キングオブコント終わりの「空気階段の踊り場」で、鈴木もぐらはこう叫んだ。「お前ら、ひとりじゃないぜぇ!」

ハタショー(@hatasyo5

 

51. Mom『21st Century Cultboi Ride a Sk8board』

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海外でいえばサウスロンドン周辺とその影響下の若きミュージシャンのような、型に嵌らない自由な音楽性は日本にも点在する。このMomはわりと近いスタイルな気がする。今までのローファイでハンドメイドな肌触りが、今作はよりくっきり明瞭に刺激してくる。いつにも増してラッパー然とした曲もあり、ハードで厚みを感じるアルバム。またしても変化と挑戦を恐れぬ姿勢でポップソングを量産しているが、引き出しが多すぎて脱帽です。現実的なトピックを、生々しさを残しながらもロマンチックに彩るネット世代以降のSSWのお手本となるようなサウンドトラック。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

 

ネットの音楽オタクが選んだ2020年のベストアルバム 100→51

51. Mom『21st Century Cultboi Ride a Sk8board』
52. 銀杏BOYZ『ねえみんな大好きだよ』
53. chelmico『maze』
54. Kelly Lee Owens『Inner Song』
55. Moses Sumney『grae』
56. iri『Sparkle』
57. Run The Jewels『RTJ4』
58. Tom Misch & Yussef Dayes『What Kinda Music』
59. Childish Gambino『3.15.20』
60. Vaundy『Strobo』
61. 岡村靖幸『操』
62. Charli XCX『how i’m feeling now』
63. 藤原さくら『SUPERMARKET』
64. Sault『Untitled(Black Is)』
65. SuiseiNoboAz『3020』
66. Lianne La Havas『Lianne La Havas』
67. Sports Team『Deep Down Happy』
68. Gorillaz『Song Machine, Season One:Strange Timez』
69. Joji『Nector』
70. Waxahatchee『Saint Cloud』
71. Crack Cloud『Pain Olympics』
72. マカロニえんぴつ『hope』
73. 君島大空『縫層』
74. Taylor Swift『evermore』
75. ヨルシカ『盗作』
76. Sorry『925』
77. Bob Dylan『Rough and Rowedy Ways』
78. Base Ball Bear『C3』
79. Deftones『Ohms』
80. Laura Marling『Song For Our Daughter』
81. 竹内アンナ『MATOUSIC』
82. The Microphones『Microphones in 2020』
83. The Flaming Lips『American Head』
84. Jonsi『Shiver』
85. PUNPEE『The Sofakingdom』
86. Nothing But Thieves『Moral Panic』
87. Blake Mills『Mutable Set』
88. KOHH『worst』
89. 浦上想起『音楽と密談』
90. Slow Pulp『Moveys』
91. Wool & The Pants『Wool In The Pool』
92. 冥丁(Meitei)『古風』
93. 田中ヤコブ『おさきにどうぞ』
94. Caribou『Suddenly』
95. Ty Dolla $ign『Featuring Ty Dolla $ign』
96. さとうもか 『GLINTS』
97. TENDRE『LIFE LESS LONELY』
98. 環ROY『Anyway』
99. 踊ってばかりの国『私は月には行かないだろう』
100. Peter CottonTale『CATCH』

 

プレイリスト