実家が近くだからか、海のにおいが好きだ。一人遠くへ旅に出ても、目の前にぱっと海がひらけるとどこか懐かしい気持ちになれる。
水平線に慣れているから、島の点在する瀬戸内の景色は新鮮に見える。石巻の友人はふっと漂う潮の香りに「雨が近いね」と呟いた。
それらと同じくらい私に色んな「海」を教えてくれたのはレミオロメン。曲数は少ないけれど、どれもこれも眩いばかりのきらめく海だ。いくつか紹介したいと思う。
レミオロメン「昭和」
2003年、1stシングル「雨上がり」のカップリング曲。
旅に行きたくなる、旅に連れていきたい一曲。
旅に出ると、ずっしり腰を下ろして生きている人々の中で、自分一人だけが動いているような感覚におそわれる。一人の寂しさとか、「誰か」にこの景色を見せたいとか、知らない人とまるで握手をするようにすれ違うということ。走馬灯みたいな温もりが、短調と長調が波のようにまざりあう音色にとろけて、いつまでも消えずに残る。
レミオロメン「海のバラッド」
2005年、メジャー2ndオリジナルアルバム『ether』収録曲。
恋をしたくなる、こんな恋に憧れてしまう一曲。
こんなにどこにでもあるのに、そこを歩くだけで何か特別なことをしている気分になれるのは、きっと波打ち際だけだ。時を分かち合い、空を海を分かち合い、そして心まで分かち合うことのできるそんな幸せが、風の匂いとともにゆっくりと染み込んでくる。
レミオロメン「海」
未発表曲。
自分と向き合い、「自分という世界」と対峙する一曲。
唐突なベースの入りにびくりとする。この海は、きっと深いのか。最初から最後まで、敵になるも味方になるも、そこから逃げ出すもそこへ還って行くも、全ては自分次第。景色にとどまらない海を歌った、ポップサウンドの欠片もない、初期のずぶずぶとしたレミオロメン。
レミオロメン「花火」
2008年、メジャー4thオリジナルアルバム『風のクロマ』収録曲。
夏に帰りたくなる、夏が待ち遠しい一曲。
いつもなら切なくなってしまいそうな海辺の、星のたなびく夜空、風の匂いが溶ける闇、それにオレンジ色をぽたり落として消えてしまう花火さえも、全てがこの感情の彩りにすぎないんだって、それほどまでに明るい「今」に溢れてる。
《未来でも過去でもなく今を見つめてごらん》
そうすればきっと、過去も未来も新たな色を手に入れる。
かがり(@14banchi)