may.e+丘『see you soon "session for us"』
may.eがサポートメンバー3人=「丘」との4人編成で制作したセッションアルバムなのだが、これが本当に素晴らしかった。アルバムの性質、及びカセットテープオンリーのリリース形態から単純な比較をするのもどうかと思うのだが、個人的には『私生活』『REMINDER』より好きかもしれない。
そもそもmay.eというシンガーソングライターが優れていたのは、楽曲の個性もさることながらそのエコーがかった音がアシッド・フォークの文脈で捉えられたことが大きい。しかし今作はセッションアルバムであり、以前のような特別エコーが効いている場所でレコーディングしたものではない。おそらくスタジオかライブハウスで直で録音したものだと思うが、逆にmay.eの音楽そのものが優秀さが剥き出しになってしまった。
may.eの他には長沼洋子(chorus, glockenspiel)、室田真利奈(chorus, bongo, glockenspiel)に、吉田ヨウヘイgroupを脱退したばかりの内藤彩(chorus, fagotto)の3人のサポートメンバー=「丘」として参加した。この編成も演奏もとても良かった。
今回はカセットテープということもありいつも以上に歌が遠くから聴こえる。物理的な距離ではなく、遠い時代、それこそ自分が生まれる以前に録音された作品のようなアナログ感を意図的に演出している。彼女が歌うことは、それが直近の出来事であろうとも、すべてが懐かしいものになってしまうのだ。
優雅 眠れば 消えてしまいそう(スリープ)
昼には啄む このまま無力でありたい(おちた生活)
聴いていると眠くなってくる。心からリラックスできるのだろう。だから作業用のBGMには全然適していない(笑)
『see you soon』のタイトル通りに、彼女の音楽に再びすぐ会えるのかは定かではない。ただ「またすぐに会えるよ」くらいの気楽さで音楽が奏でられ、それを聴く僕らという関係性が心地よい。"session for us"という副題からわかる通り、彼女たちも楽しそうに音を奏でている。
以前フィジカルでリリースされた『私生活』同様、今回もボーナストラックとして「海へ」が収録されている。以前とアレンジも声も印象がガラリと変わっているのだが、今回も良かった。
なおテープで購入した場合ダウンロードコードがついてくるのだが、実際推奨されているテープの方が音がいい気がする。機器の細かなノイズや再生音すら一つの作品なのだろう。この繊細な仕掛けが僕を白昼夢に誘う。
ぴっち(@pitti2210)