はじめてのおんがく(ハードコア編)第3回 ハードコアを聴いてみよう(US編)
日にちが空いちゃいましたが、これからもゆっくり書き進めていこうと思います。
前回はUKハードコアを取り上げて掘り下げてみました。今回はUKハードコアとほぼ同時期に登場したハードコアの流れの一つであるUSハードコアについて、その中でもBad BrainsとBlack Flagという2つのバンドについて掘り下げてみました。
Bad Brains
77年にワシントンDCで結成されたBad Brainsは、フュージョンバンドを結成していた黒人4人がラモーンズやセックスピストルズを聴き衝撃を受けパンクロックを始めたという漫画みたいな経歴のあるバンドです。USハードコアの元祖と言われています。
UKハードコアよりはメタリックな感じは少ないですが、速さや激しさではまったく負けていません。むしろステージの激しさはこちらのほうが上かも。もともとフュージョンバンドであったからか演奏技術もあり、レゲエに接近したり、と音楽性に幅があります。
ファッションはラフでカジュアルな格好です。革ジャンなどを着ているUKハードコアとは一線を画しています。
他のハードコアと同様、人種差別や権力への反抗という側面もありますが、Bad Brainsはラリファタリズムと言われるジャマイカが発祥の黒人特有の自然回帰的な思想運動にも影響を受けています。第1回で紹介したCrassがヒッピー的な自然回帰思想に影響を受けているところと通じるものがあり、個人的には面白い一致だと思いました。
初期のライブは後で紹介するBlack Flagのボーカリストのヘンリー・ロリンズやFugaziなどで知られるUSハードコア重鎮イアン・マッケイなどが観ていて、彼らにも大きな影響を与えました。またミクスチャーロックの先駆けとなったのもBad Brainsであり、パンク、ハードコアに限らずさまざまな音楽に影響を与えています。
個人的おすすめはこちら。
ホワイトハウスに雷が落ちるジャケットで有名なこの作品は、勢いと確かな演奏技術が両立しています。Bad Brainsの特徴である、幅広い音楽性と初期衝動が両方感じられる一枚です。
Black Flag
Black Flagは76年に南カリフォルニアで結成されたバンドです。Bad Brainsと同じく、USハードコアの元祖として知られています。メンバーの入れ替わりが激しく、最後まで残っていたメンバーはギターのグレッグ・ギンだけで、先にも紹介したヘンリー・ロリンズは4代目のボーカリストです。
速い曲もあれば、重さも感じるヘビィな曲もあります。速さで突っ走るバンドとは一線を画している感じがします。ヘビィメタルなどからの影響も感じますが、当時のハードコア、パンクシーンにおいてヘビィメタルからの影響を隠さずに音楽に活かすことは一種のタブーでもあり、そういう意味でも革新的なバンドでした。
Bad Brains同様、服装はカジュアルです。ここがUSとUKハードコアの大きな1つの違いかも知れません。
ボーカルのヘンリー・ロリンズは禁酒・禁煙・筋トレなどを自らに課すストイックな一面もあり、同時期のイアン・マッケイの「ストレートエッジ」(禁酒・禁煙・禁ドラッグなど)と重なる部分もあります。今までの享楽的なロックへの反抗とも解釈できます。
Black Flagのハードコアサウンドは間接的・直接的に現在のオルタナロックにも大きな影響を与えており、グランジやドゥーム・メタルなどへの影響も大きいです。
個人的おすすめはこちら。
前半の疾走ハードコアサウンドと、後半のヘビィメタルから影響を受けた重い曲、両方を楽しめるアルバムです。速さだけではないハードコアサウンドを体験できます。
今回一番びっくりしたのは、USハードコアとUKハードコアがほぼ同時期に登場した、ということです。両方ともオリジナルパンクを自分なりに解釈した音楽だったんですね。
次回は同時期に日本でも発生したUKハードコアに影響を受けたハードコアバンドを掘り下げてみたいと思います。
参考
地獄の犬猫日記 池上彰のハードコア史解説・第二夜 [メタルは悪女?]